「リフレクション学!?」の2日間ワークショップを開催します!:フレッド・コルトハーヘン名誉教授をお招きして!

 ずっとずっと先のことになりますが、きっと、僕のことなので、直前になって、あたふた慌てふためき、関係者にご迷惑をおかけすることになると思いますので、半年以上前からアナウンスをさせていただきます。

 今回アナウンスさせていただくのは、ズバリ!

 リフレクションのすべて!?を2日間で学べるワークショップ

 を開催します!
 というお知らせです。

 来たる、11月1日(土曜日)・2日(日曜日)、2日間にわたって、「ザ・リフレクション学」!?のワークショップを開催します。
 リアリスティックアプローチで著名なオランダのフレッド・コルトハーヘン名誉教授(ユトレヒト大学)をお招きして、2日間にわたるワークショップを都内にて、朝から晩まで(11月1日は午前9時ー6時、2日は午前10時ー午後3時)実施したいと思います(通訳入りますのでご安心を!)。

 わかるようで、いまいち、ピンとこないリフレクション!?(笑)。
 わかっているつもりで、するすると手からこぼれおちるリフレクション!?(笑)

 これに関する理論(ALACTモデルと呼ばれています)を下敷きにしつつ、自ら学習者として「リフレクションをやってみること」で、その内実を理解しよう、という内容です。
 この企画は、教師教育学研究会の坂田哲人さん、山辺恵理子さん、そして、経営学習研究所(吉村さん、町支さん、脇本さんにもご支援をいただきます)の共催企画にて実施させて頂きます。先だって、研究室で、坂田哲人さん・山辺恵理子さんとお打ち合わせをさせていただきました!(感謝)。ちなみに、コルトハーヘン先生らの日本における受容に大きな役割を果たしておられるのは、武田信子先生らが率いる同研究会であり、武田先生のもと、訳書(専門書)も出版されています。

教師教育学研究会(Research Group on Teacher Education)
http://www.teachereducation-jp.org/

 今回のワークショップの参加者として想定しているのは「リフレクションに興味をもつ様々な領域の方々」です。
 大学研究者、指導主事などの方々はおろか、看護教育、医療教育、企業人材育成、トレーナー育成にたずさわっている方々にもお楽しみいただける内容だと思います。一般にコルトハーヘンのアプローチは、「教師教育」の範疇で語られることが多いのですが、僕が関わるので!?、今回はむしろ、それを、他の職種にも拓いていきます。

(ちょいと専門的な内容になりますが、僕は個人的にリフレクションという概念の日本への普及は、いろんな意味で、すこし「ねじれたかたち」で進行したと思っています。「いろんなねじれ」を微に入り細に入り論じてもいいのですが、そのような暇と興味は、僕には、あまりないので、あえて1つだけ最も深刻なねじれを述べるのだとすると、それは「職種」の問題となります。リフレクションの概念は、もともとデューイなどの反省的思考の概念を下敷きに、ドナルド・ショーンを媒介しつつ、世に広がることになりますが、ショーンにおいては、それは高度専門職を基礎づける概念でした。しかし、この高度専門職には、教師、医師などの専門職はもちろんのこと、建築家やビジネスパーソン、マネジャーなども含まれていました。分厚い原書を読んだことのある方なら、誰もがわかることです。つまり、それはショーンにおいては、教師や医師などの、いわゆる近代に確立された専門職の専門性を限局する概念ではなく、より広範囲な職種を基礎づける概念であったということです。しかし、それが日本では、主に「教師の専門性」を基礎づける概念として普及します。建築家やビジネスパーソンなどの伝統的な職種ではない「専門職」すら、リフレクションを行う主体であることは、忘れ去られる傾向がありました。)

 閑話休題

 ワークショップでは、

・リフレクションとは何か?
・自分のリフレクションの癖とは何か?
・リフレクションをどのように行えばいいのか?

 など、ペアやグループで「自らリフレクションを実践しながら、リフレクションを学ぶことができる」予定です。費用や場所などは、まだまだ検討中ですが、講師謝礼金、ランチ2回、通訳費用を含むので、相応の負担にはなると思います(3万程度でしょうか。経営学習研究所は非営利団体で、このワークショップには投資を行って実現させまますが、それでもやむなしとう状況です。あしからずご了承ください)。募集人数は50名です(ワークショップという形式上、これが限界です! すみません)。おそらく募集は、7月頃から、メルマガ・ブログなどから行うことになると思います。

 もしまだメルマガにご登録をいただいていない方は、ぜひ、この機会にお願いします。いつも言っておりますが、大丈夫です、メルマガといっても、年に数回「愉しく役に立つイベントの情報」が流れてくるだけです。間違っても「壺、買いませんか?」とか、そういう怪しい情報が流れることはありません(笑)

中原研究室メルマガ
http://www.nakahara-lab.net/mailmagazine.htm

 どうぞ、「ザ・リフレクション学」についてご興味をお持ちの方は、11月1日・2日のスケジュールをあけておいていただけますと幸いです。どうぞよろしく御願いいたします。

 ーーー

追伸.
 5月9日、拙著「駆け出しマネジャーの成長論」が中公新書ラクレにて刊行されます。AMAZONではすでに先行予約がはじまっておりますが、先だって、「瞬間最大風速」的に、カテゴリー「マネジメント・人材管理」1位を記録しました(笑)。ありがとうございます!
 この本は、「実務担当者がいかにしてマネジャーになっていくのか」を扱った一般向けの新書です。人材育成研究の知見と、先達マネジャーの語りから、新任マネジャーが直面する7つの挑戦課題について、それをいかに乗り越えるかを考えています。玄人のみなさまにもお楽しみ頂けるように、脚注などを充実させました。どうぞご笑覧ください。

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投稿者 jun : 2014年4月30日 09:56


【更新・申し込み開始!】東京大学大学院・中原淳研究室で研究してみませんか!?

 大学院修士コースの入試のお知らせです。
 来たる5月31日、13:00 - 17:00より、東京大学本郷キャンパスで、東京大学大学院学際情報学府 入試説明会が開催されます。

東京大学大学院学際情報学府入試説明会
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/news/2772

 中原研では、現在、8名の大学院生が、中原の研究指導のもと、研究に励んでおられますが、私たちの研究コミュニティに参加いただき、血湧き肉躍る?研究をやってみたい方は、ぜひご参加頂ければと思います。2014年4月段階で、学際情報学府・中原研究室の卒業生からは、9名の修士号取得者、2名の博士号取得者が輩出されています。

中原研究室メンバーリスト
http://www.nakahara-lab.net/nakaharaken.html

 ■博士3年(D3)
  島田徳子さん(しまだ・のりこ)
  元留学生社員の組織社会化

  木村充さん(きむらみつる)
  大学におけるサービスラーニングの効果

 ■博士2年(D2)
  吉村春美さん(よしむら・はるみ)
  校長のリーダーシップと学校の社会関係資本

  伊勢坊綾さん(いせぼうあや)
  秘書の熟達化に関する研究

■博士1年(D1)
  保田江美さん(やすだえみ)
  看護師の熟達化:社会的ネットワークに着目して

  高崎美佐さん(たかさきみさ)
  大学生のキャリア探索行動と初期キャリア形成

 ■修士1年(M1)
  浜屋祐子さん(はまやゆうこ)
  育児経験とマネジメント能力の関係

 田中聡さん(たなかさとし)
 中堅ミドルのイノベーション行動

 16:00~17:00は、各研究室のブース展示と研究紹介が行われますが、そちらでは、中原、中原研の各メンバーが研究室の様子についてご説明させていただきます。

 なお、大学院公式の入試説明会とは「別」に、同日10時30分-12時00分で、中原研独自の入試説明会を行います。スペースの都合があり、限定15名とさせてください。

 こちらでは、中原研のカルチャー、めざすもの、研究者養成システム、ゼミの運営システム、卒業生の進路などをお伝えできるかと思います。
 中原がどういう人間?かも、院生がいろいろエピソードを教えてくれると思います(僕は同席しません、笑)。

 隠すものは何一つありません(笑)。
 どうぞご参加ください。

 ご参加をご希望の方は、下記をお読みいただいた上で、研究室説明会の募集にご応募いただければと思います。
 中原研独自の研究室説明会への参加希望の方は、本日(4月30日)より、下記フォームにより、説明会申し込みを開始させて頂きます。恐れ入りますが、そちらをご確認の程、どうぞよろしく御願い致します。

東京大学大学院 学際情報学府にて:中原の研究指導をご希望の方へ
http://www.nakahara-lab.net/playlink.html

■中原研究室・個別説明会・申し込みページ■
http://ow.ly/wh0Vd

 みなさまにお逢いできますこと愉しみにしております。
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年4月30日 07:48


【スライド公開・御礼】ラーニングイベント「Yahoo!流爆速組織開発」が終わった!?

 4月24日昨晩は、経営学習研究所のイベントでした。
 
 【Yahoo!流「爆速」組織開発!?:
 人事は現場のどんな問題に向き合い、どんな支援をしたのか?】

 というテーマで、ヤフー株式会社 吉田毅さまをお招きして、130名を超える方々とディスカッションをする会を持ちました。
 吉田毅さんからは、同社の人材マネジメント施策について全般的なお話をいただいたあとで、数十名~数百名規模の組織に対する社内コンサルティングの実例をご発表いただきました。
 吉田さんのお話は、非常に示唆にとむ内容で、僕自身も、「地に足がついた組織開発の実態」について非常に考えさせられました。組織開発のことは、また折りにふれてお話しようと思いますが、下記に僕の用いたスライドを公開いたしますので、どうぞご笑覧下さい。

Yahoo bakusoku from nakaharajun

 最後になりますが、素晴らしい発表をしてくださった吉田さん、ロジスティクスをご担当いただいた松浦さん、場作りを手伝って頂いた学生のみなさま、理事のみなさま、そしてご参加頂いたみなさまに心より感謝いたします。本当にありがとうございました。

投稿者 jun : 2014年4月25日 14:15


ただ何となく「就活」、ただ何となく「離転職」!?

 年度が替わり、新たな学生やスタッフが研究室に加わり、泡立たしい毎日を過ごしています。研究プロジェクトも今年度から大きく刷新され、小生、また新たな研究室メンバーと新たなプロジェクトに向かっているところです。体力・気力が続くまで(笑)、目標は生涯フロントラインです。

 ところで、今年からはじまった研究プロジェクトのひとつに「大学生の就活・採用・配属・育成」までの諸データを扱った縦断調査の研究があります。

 要するに、

「大学時代、どのような生活・就活をしていた人」は「組織に入ったあとでどうなるか?」

 ということをフレームにしながら、

「どのような採用・育成施策を行えばよいのか」

 を探究する研究です。具体的には2010年に大学3年生だった学生が、2013年には組織に入って2年目なのですが、その2地点間の関係を考察する研究です。先に公刊した「活躍する組織人の探究」(東京大学出版会)の続編プロジェクトですね。


  ▼

 今日は、大学院ゼミ修了後、このデータ分析初回の研究会が開催されるのですが、データを見ていると、ついつい余計な「妄想」?をしてしまい、時間がかかります。

 結果をテーブルにしつつ、1つ1つ、読み込んでいると、

「嗚呼、就活の時、母親・父親から応援されていない人もいるんだなぁ・・・」

 とか

「嗚呼、このグループの人達は、最初に出会った上司が、ゴリゴリ系だったんだろうな」

 とか、ついつい「数字」に「人生を見てしまい」、妄想が広がってしまいます。

 データ分析はまだまだこれからなので、明瞭な結果が得られるまでには、しばらく時間がかかりますが、一個だけ興味深かった点があります。

 それは「就活」の際、どれだけ「第一志望群」という企業を、自分でイメージできているか、否かによって、その後の組織適応の結果が、かなり変わるのではないか、という仮説です(まだ仮説レベル)。「組織にエントリーして、2年以内の転職経験」と関連させて考えてみますと、明らかにここには差があります。

 つまり「転職した」と答えている人は、就活のときの「自分の入りたい企業イメージ」が希薄なのです。つまり、「目標がなく、ただ何となく就活」をしている傾向があるように思います。個人的には「ただ何となく就活(をしている人)」のあまりの多さにびっくりしてしまいました。「転職あり」の実に半数は「ただ何となく就活」に類型化されるような就活をなさっていることがわかります。あれだけ「キャリア教育」と騒がれているのにもかかわらずです。

 詳細なデータ分析はまだこれからなので、何ともいえないのですが、これは「就活で学んだことは何だったのか?」というデータと関連を見せそうです。
 また、2010年、つまり3年前に取得された、そういう方々の大学時代の行動データもおってみたいと考えています。
 
 ひとつの研究が終われば、次がはじまる。
 また振り出し、ゼロからのスタートです。
 そして人生は続く 

追伸.
 5月9日、拙著「駆け出しマネジャーの成長論」が中公新書ラクレにて刊行されます。この本は、「実務担当者がいかにしてマネジャーになっていくのか」を扱った本です。人材育成研究の知見と、先達マネジャーの語りから、新任マネジャーが直面する7つの挑戦課題について、それをいかに乗り越えるかを考えています。記述は、新書スタイルで、一般向けになるべく平易に書いたつもりです。また玄人の方にもお読み頂けるよう、脚注も充実させています。どうぞご笑覧ください! 


投稿者 jun : 2014年4月23日 06:24


インターンシップの6つのパターン!?:「安価な労働力」から「ファストパス」まで

 インターンシップとは、一般に「学生が、まだ教育機関に在籍しているあいだに、自らの興味関心に近い会社・組織において、短期間ー中期間の就業体験を行うこと」を意味します。

 こうした就業体験は、学生の「働くこと」に関する「適切な初期期待」や「明瞭なイメージ」を醸成することが期待できますし、自らのキャリアを考えるきっかけにもなりますので、個人的には「よいこと」のように思います。

 しかし、一方で、それを受け入れる企業にとっては、ただでさえ「ク●忙しい時期」に「学生の体験学習」を組織化しなければならないので、負荷・コストはそれ相応にかかります。

 先だってヒアリングさせていただいた、ある企業の採用関係者の方は(この企業では採用にインターンを紐付けて捉えています)、こんなことをおっしゃっていました。

「昔は採用担当は、"季節労働者"と言われていたんです(採用活動のないときがあったから)。

それが今は(インターンを1年中やっているため)1年間、常に"繁忙期"です。」

 この企業では年に100回を超える短期間のインターンを組織なさっているようです。

  ▼

 ところで、企業にとって、インターンをどのように経営活動に位置づけるのか、意味づけていくのかというのは、なかなか悩ましい問題です。
 それには、下記のように、いくつかの類型が存在しているように思えるのですが、いかがでしょうか。

1.安価な労働力としてのインターン
2.社会貢献としてのインターン
3.新規プロジェクトとしてのインターン
4.職場活性化としてのインターン
5.育成経験としてのインターン
6.採用活動としてのインターン

 まず第一は「安価な労働力なインターン」です。
 つまり、学生を受け入れても、あまり学習になることはさせず、「オペレーショナルな仕事」の一部を任せて、労働力の一部として使うということです。
 これは、インターンの趣旨とはかなりズレているようですが、ケアのないインターンは、これになってしまいがちです。

 第二に「社会貢献としてのインターン」は、インターンを企業のCSRに位置づけることです。企業にとっては、直接のメリットはないけれども、社会貢献としては実施しましょう、というスタンスです。
 また、インターンは、もはや国が推進しているものでもありますので、「義務化」といったら言い過ぎですが、企業としては「立場上、断れない」ところもあるようです。こうした動きもここに含めることにしましょう。

 第三に「新規プロジェクトとしてのインターン」です。これは、フレッシュな感覚をもつ学生のグループに、やる気のある従業員を加えてグループをつくり、これをきっかけとして、通常業務では行わない「新規プロジェクト」を立ち上げ、実施していくというものです。
 「イノベーション」というと大げさですが、そうした「新しいもの」を生み出すきっかけとして「インターン」を利用しようと考えます。

 第四には「職場活性化としてのインターン」です。これは、職場などに学生を配属させ、職場を「活性化」させるための触媒にインターンを利用することです。

 第五には「育成経験としてのインターン」です。これは、学生をケアする役割として社員をひとりアサインし、育成経験を担ってもらう、ということです。これは、育成経験をあまりもたない社員がいる会社で、時折行われるものです。

 そして最後、第六には「採用活動としてのインターン」です。これは、もうおわかりですね。インターンの最中に見所のある若者を選別してしまい、そのまま採用するか、あるいは就職活動にとってプラスになるような「ファストパス」を渡してしまうことです。
 さすがに「インターン終わったら、即採用」というのはケースとしてはまだ少ないようですが、明示的、ないしは非明示的に「ファストパス」が生まれることは、あり得ます(ただ就職協定に縛られている企業は、その存在を明示はできないと思いますが・・・)。

 ▼

 今日は、企業は「インターン」をどのように意味づけるか、ということで6つの類型を出してみました。
 実際には、これらは明確に別れているわけではなく、たとえば「3.新規プロジェクトとしてのインターン」と「5.育成経験としてのインターン」などが結びついていることがほとんどですが、この記事では、わかりやすいように敢えて別々に記述しました。

 最後に、学生さんにとって、このことからわかることは何か?

 それは、会社によってインターンの位置づけは相当異なり、また、そこで提供される体験も様々である、ということです。インターンといっても「十把一絡げ」で考えることはできません。

「学生の望むインターンのあり方」と「企業が望むインターンのあり方」がマッチすればよいですが、それはなかなか難しいことでもあります。
 中には「ペンペン草もはえないようなインターン」もありますし、「担当者が"やる気なし男君"なインターン」も存在します(ブラックなインターンが)。しかし、それも「社会」です。会社は「均質な価値を均等に提供してくれる教育機関」ではありません。

 インターンなら何でもいいや、と軽く考えるのではなく、やはりここでも「賢さ」が必要なようです。

 そして人生は続く

 ーー

追伸.
 5月9日、拙著「駆け出しマネジャーの成長論」が中公新書ラクレにて刊行されます。この本は、「実務担当者がいかにしてマネジャーになっていくのか」を扱った本です。人材育成研究の知見と、先達マネジャーの語りから、新任マネジャーが直面する7つの挑戦課題について、それをいかに乗り越えるかを考えています。記述は、新書スタイルで、一般向けになるべく平易に書きました。また玄人の方にもお読み頂けるよう、脚注も充実させています。どうぞご笑覧ください! 

投稿者 jun : 2014年4月22日 08:25


新刊「駆け出しマネジャーの成長論」が5月9日刊行されます!:実務担当者から新任マネジャーへの役割転換をいかに乗り切るか!?

 ついに2014年上半期三部作のトリを飾る本(新書)が、5月9日、中公新書ラクレから刊行されます。名づけて「駆け出し本」(笑)。2月の「研修本(けんしゅうぼん:研修開発入門)」発売、3月の「芝生本(しばふぼん:活躍する組織人の探究)」刊行に続く、第三作目です。こちらは一般書となります。

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「駆け出し本」の正式名称は、

「駆け出しマネジャーの成長論:7つの挑戦課題を科学する」(中公新書ラクレ)

 です。300ページ程度、950円の新書として、もう既に予約販売がはじまっているようです。AMAZONでは書名が「駆け出しマネジャーの成長戦略」になっていますが、正式書名は「成長論」になりました。訂正がじきに反映されることになると思われます。

 この書籍でフィーチャーしているのは「新任マネジャー」あるいは「駆け出しのマネジャー」です。ぜひ、現場のマネジャー、現場の経営者の方々にお読み頂きければと思っています。

 本書で僕が探究しているのは、

「実務担当者から、いかに生まれ変わり、マネジャーとして働き始め、成果をあげられるようになっていくのか」

 ということであり、

「マネジャーになるプロセスにおいて直面する7つの挑戦課題をいかに乗り切るか」

 についてです。

 より、具体的には、

 マネジャーとは何か?
 マネジャーになった日、どういうことが起こるのか?

 マネジャーとして
  いかに部下育成を行うか?
  いかに政治交渉を進めるか?
  目標をいかに咀嚼させ、納得解を得るか?
  年上の部下など多様な人材をいかに活用するか?
  いかに迅速で間違いない意思決定を行うか?
  いかに心折れないようにマインドを維持するか?
  プレーヤーとマネジメントのバランスをいかにとるか?
 
 そして、会社・人事・経営者には
 マネジメント支援として何が可能か?

 を探究しています。
 巻末には、現場のマネジャーの方の「覆面座談会」も収録されており(お忙しいところ御協力いただきました!感謝!)、こちらでは、「マネジャーとして働くことの勇気」をもらえると思います。

 なお、これらの文章をしたためるにあたり本書のデータとしているのは、3年前から構想していた日本生産性本部さんとの共同研究「マネジメントディスカバリー開発プロジェクト」で得たマネジャーさんたちへの質問紙調査、そして、ここ数年、様々な企業の方々に御協力いただき、お話を伺ってきたマネジャーたちへのヒアリングデータです(御協力いただきました方々、心より感謝です!)。
 本書はこれらの定量・定性データをもとに、それらを縦横無尽に積み重ね、マネジャーへのトランジション(移行)のプロセスを扱っている本です。

マネジメントディスカバリー(マネジャー向けフォローアップ研修:中原のテキスト・ワークショップレシピで実施されています)
https://jpc-management.jp/md/

  ▼

 考えてみれば、世の中には、すでに「マネジャー論」とよばれる本が、数多く出版されています。それにもかかわらず、僕が敢えて、今「マネジャー」について語るべき理由とは何か?
 
 これまでの書籍と本書の違いを敢えて述べるとすると、下記のようになるかと思います。

1.本書で取り扱う「マネジャー」のレベルを「駆け出し時期(エントリーレベル)」にキュウキュウに絞ることで、「駆け出し時期のリアルな体験」を描き出そうとすること

2.これまでの「マネジャーの学習・キャリア研究」の知見を活かし、テクストにネリネリと編み込んでいること

3.多くの先輩マネジャーの「アクチュアルな語り」を徹底的に採集し、マネジャーになることによって生じる挑戦課題を描き出していること

 マネジャー論というと、とかく「〜しなさい!」とか「〜すべし」という「規範論」が多いのですが、本書はその立場をとりません。
 むしろ「マネジャーになることのリアル」に徹底的に寄り添い、

「マネジャーになるときに生じる困難は、程度の差こそあれば、みんな経験することなんだよ」
「大丈夫だよ、今、変化が起こっているのは、あなたの会社や職場だけじゃないんだよ」
「ひとつひとつ挑戦課題に向き合い、振り返り、アクションしていけば、大丈夫だよ」

 というメッセージをお伝えしたいと思っています。
 その上で、本書のキーになるのは、マネジャーの成長モデル「マネジメントのラーニングスパイラルモデル」です。
 本書では、この「うにょうにょモデル!?」を「なんちゃってフレームワーク」として、

 これからマネジャーになる方々が、これからどのようなことが起こるを前もって知ること(リアリティプレビュー・アクセプト)

 そして

 マネジャーの方々が、自分の職場や部下や上司の状況を振り返り、次のアクションをとること(リフレクション・アクション)

 を支援し、そのための素材を提供することを目的にしています。本書を書くにあたり、僕は、マネジャーに「共感」をもってもらえる本を書きたく思いました。できるかぎり、図版等も多くしているつもりです。また専門の方にもお読み頂けるよう、脚注も充実させたつもりです。どうぞご笑覧ください。

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  ▼
 本書は「泥臭い本」だと思いますが、ぜひお楽しみにいただければ幸いです。
 最後に、以下、「目次」と「後書き」を掲載します。

<目次>
・プロローグ 駆け出しマネジャーの皆さんへ
・第1章 マネジャーとは何か?
・第2章 プレイヤーからの移行期を襲う5つの環境変化
・第3章 マネジャーになった日
     揺れる感情とつきあう、7つの挑戦課題
・第4章 成果を上げるために、何を為すべきか?
     振り返りとアクションをめざして
・第5章 マネジャーの躍進のため
     会社・人事・経営者には何ができるか?
・第6章 生の声で語られる「マネジャーの現実」
・エピローグ 希望のあるマネジャー

<後書き>
 新任マネジャー、駆け出しマネジャーが、マネジャーになったときに、どのような挑戦課題に直面し、どのように対処しうるのか。
 本書では、この問いに答えるために、様々な定量・定性データを駆使しながら、お話をしてきました。本書を書き上げた今、あらためて振り返ってみますと、わかっている人や、マネジメントを既に経験したことのある人からみれば、「凡庸にしか感じられぬこと」を書いてしまったな、と思います。しかし、一方で、現在、奮闘している新任マネジャーや駆け出しマネジャーが「凡庸にしか感じられぬこと」を本当に伝えられているのか、理解している時間があるか、というと、それもまた、いささか心許ない気もします。
 マネジャーの辞令をもらって、組織の狭間の中で、さまざまなものに揉まれ、日々奮闘している彼 / 彼女らの時間と精神的余裕には限りがあります。このたびインタビューに答えてくれたマネジャーの一人が思わず口にしたひと言が、今なお、僕の心に残っています。

(一般に)マネジャーになることは、あとは飛び込んで泳げと言われているような感じ。

 本書で、僕は「実務担当者からマネジャーになるプロセス」にまつわる様々な知見やデータを整理し「マネジャーの方々」に「お届けすること」に徹しました。もし、彼 / 彼女らが「泳ぐこと」を一寸だけ暇を見出し、ほんのつかの間に、本書を手に取り、自分の職場・部下・立場などを振り返り、次のアクションを決めるときに役立ててもらえたのだとしたら、筆者として、望外の幸せです。
 マネジャーになって直面する挑戦課題は、決して「ひとりの課題」ではなく、「みんなの課題」です。時に悩んだり、つまづくこともあるのは、決して、あなただけではありません。そのような課題に直面したとしても、うろたえず、現状を振り返り、原理・原則に配慮しつつ、次のアクションを決めていく。そのことから逃げないでいれば、きっと事態はポジティブな方向に向かうのではないかと信じています。

 また、5章で論じたように、人事部・経営者の方々が本書を手にとり、自社のマネジャー育成のあり方、自社の人材開発施策の改善に役立てていただけたとしたら、これもまた嬉しいことです。2章で再三にわたって指摘しましたように、現在、マネジャーの育成をめぐる環境は、だんだん激化しています。彼 / 彼女らを昇進させ、経営のフロントラインに立たせるのであれば、それに適切な支援が提供されるべきだと僕は思います。人事の観点ならば、マネジャー育成をきっかけに人材開発のあり方そのものを見直すこと、また経営者の観点ならば、「自らが学ぶ存在になること」こそが、もっとも重要なことではないか、と思います。

 最後になりますが、本書は長期にわたる構想・執筆期間をへてゴールすることができました。編集・構成等で伴走いただいた中公新書ラクレの黒田剛史さん、秋山基さんに、まずは心より感謝いたします。本当にありがとうございました。また、マネジメントに関する調査・研究開発でご一緒した公益財団法人・日本生産性本部のみなさま、野沢清さん、木下耕二さん、矢吹恒夫さん、大西孝治さん、塚田涼子さん、中村美紀さん、古田憲充さん、桶川啓二さんにも心より感謝いたします。
 また、こちらでお名前を掲載させていただくことはできないものの、インタビューをご快諾いただいた各社の現場マネジャーの方々にも、貴重な時間をたまわり、心より感謝いたします。そして、最後に妻・美和にも感謝いたします。この本の執筆のあいだ、美和は、僕にたくさんの時間と励ましをくれました。みなさま、本当にありがとうございました。

 思い起こせば、2013年元旦。今から1年以上前、新年の計を決めるにあたり、僕は、今年は「アクチュアリティのある研究」がしたい、とブログで表明しました。
「アクチュアル」の名詞「アクチュアリティ」はラテン語の「Actio(アクチオー)」に起源をもつ言葉で、「現在進行している現実」を意味します。よって、先に自身が目標に掲げた「アクチュアリティのある研究」とは「今まさに、多くの方々が格闘している問題」と取り組む研究ということであり、また、「みんなが今悩んでいること」を、アカデミックな切り口で、なるべくわかりやすく、平易に、分析し、語ることに他なりません。「人生の正午」と形容される40歳を目前に、最近、僕は「地に足のついたアクチュアルな研究」がしたくなってきました。本書が、この一年の計の達成に寄与できたかどうかは読者の判断にお任せしますが、今は、走りきった気分で一杯です。

 この国に、希望をもったマネジャーが
 これまで以上に生まれることを願います。
 我らが時代!

 夜明け前、本郷の研究室にて
 中原 淳

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 そして人生は続く

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追伸.
 こんなに集中的に本をだす計画はなかったのですが、いつのまにか、あちらが遅れ、またこちらも遅れ、それにつられて、モジモジ?している間に、集中的な発売になってしまいました(泣)。
 執筆のプロセスでは、本当に極限まで体力、心理的状態含め、追いこまれました。でも、書き終えた今は、ホッとしています。ご迷惑をおかけした出版者の方々には、心よりお詫びいたします。
(2014年の今後は、書籍から少し離れ、学術論文執筆に邁進したいと思います。夏頃に1本、秋に1本書く予定です!)

投稿者 jun : 2014年4月21日 07:00


【Translation】What do graduate students need to conduct "good research" ?

Here's one question for today's article. The simple question that I pose is

What do graduate students need to conduct "good research" ?

Many professors have various kinds of answers to this simple question. Some professors say, "It depends on the quality of supervisors and the facility of research" or "Good research comes from individual wisdom and insight" and so on.

Of course, I think all these answers are valid. Although I acknowledge there are various possible answers to this question, what is the most true for me is another answer. Can you guess what my answer is. My answer:


「"Time", That's all」

 Of course, individual factors such as student's talent, insight and wisdom are needed. Also, environmental factors such as supervisor's encouragement and the quality of the laboratory are important. But, - at least in my research area - the key success factor of doing good research for graduate students is "time".

How much do graduate student make "sufficient time" to think about only their research?
How much do they make "sufficient time" to concentrate on only their reseach?

I think the most important points are too simple.

Certainly, it's better for graduate students to have logical and methodological skills. Of course, it's better for them to have brilliant supervisors. However such things are more necessary at higher research levels. I think it is because of "lack of time" that many graduate students, at novice level, fail to conduct good research.

Many of them have assigned "short, allotted time periods" in which to do research. They cannot spare "sufficient and continuous time periods" to concentrate on their research. If you don't care about the quality of time, your time will be divided into "short, allotted time periods". So you cannot accomplish your research. I have seen many students who are annoyed by lack of progress. Sometimes they concluded, "I am not smart enough to do research!"

At that time, I want to advise graduate students, "I don't think you are not smart enough. At your level, what you need is not more intelligence. It is sufficient and continuous time. If you want to progress in your research, you should allow not small pieces but sufficient continuous time.

 Time is one of the most valuable resources that God provides to all people equally. In order to make good research, you should think about how to use "time" strategically. This is a very simple problem. But sometime it is apt to be ignored.

Life goes on...

投稿者 jun : 2014年4月18日 16:00


大学院生が「よい研究」を成し遂げるために必要なもの!? : 誰にとっても平等に割り当てられている「貴重な資源」!?

「大学院生が、よい研究をいかに生み出すためには何が必要か?」

 この「問い」に対しては、多くの研究者がいろいろな答えをもっているものと思います。
「そりゃ、師の出来によるよ」という答えももっとも(あっ痛!>オレ)、「そりゃ、機材の充実度によるよ」という答えも、ごもっとも。「そりゃ、本人の頭の良さだろう」とか「そりゃ、ひらめくか、ひらめかないかだろう」いう回答も、もちろん、もっとも。おっしゃるとおりです。

 こうした様々な要因を「それはもっとも、おっしゃるとおりです」と認めたうえで、敢えて、僕が、強調したいのは何かと申しますと、異常なほど「シンプルな答え」です。それは何か、わかりますか?

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「よい研究に必要なのは、"時間"です、以上」

 才能とか、ひらめきとか、頭の良さとかの個人要因、あるいは、研究室の雰囲気、最先端の設備などの環境要因、いろいろあるんだと思います。
 でも、少なくとも僕の領域で、僕みたいな若造教員が指導をする大学院生の研究レベルで、この問いに答えをだすのだとすると、「答えはシンプル」。

 それは「時間」です。

 敢えて申し上げますが、「世界級の研究」の話をしているのではありません。また領域によって違うかもしれません。あしからず。

 くどいようですが、「大学院生が、よい研究をいかに生み出すため」には、

「まとまった時間を、どれだけ研究のために確保できているかどうか」
 あるいは
「集中できる時間を、どの程度、研究に確保できているか」
 このひと言に尽きます。

 そりゃ、研究者ですから、論理能力や実証能力など、知的なものが必要なことはいうまでもありません。方法論や分析のスキルだって、マスターできていないよりは、できているにこしたことはない。師匠だってブリリアントな方がいいに決まってる。でも、そういうことは「その上のレベル」です。
 多くの場合は、「それ以前のところ」でつまづいているケースの方がほとんどであるように感じます。

 それは、

「細切れ時間の中で、研究をしようとしている」
「集中できるまとまった時間を確保していない」
「研究時間が生活リズムに組み込まれていない」

 とうことですね。

 それで「研究が進まない、僕は、頭が悪いんじゃないか?」と悩んでいるケースがあります(笑)。

「いや、そんなことないよ。でも、進まないのはあたりまえじゃん、研究に時間かけてないんだから(笑)」
「大丈夫だよ、時間をかけて考え抜けば、いい案うかぶよ」
「まとまった時間を、毎日毎日確保して、じっくり考えてみれば、研究、進むよ」
「毎日コツコツやれば、大丈夫だよ、少しずつ進むよ」

 やっぱり、研究には、それ相応の「まとまりのある時間」を、定期的なリズムで、きちんと確保することが必要なのです。そういう「まとまりのある時間」をきっちり確保できる生活リズムをつくれるかどうか。あるいは、そのためには、自分の負荷や研究の進捗状況を鑑みて、「やらないことを、決めきること」ができるかどうか。「捨て去るものを、思い切って捨てることができるかどうか」。

 研究にとって大切なことは、もっともっと「初歩的なレベル」であるように思います。だから、多くの場合は、これさえクリアすれば「第一条件」はクリアできたも同然です。

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 今日は「研究」と「時間」のお話をしました。もう20分なので、そろそろやめます。
 時間とは、誰にとっても「平等」に割り当てられた数少ない「資源」のひとつです。自戒をこめて申しますが、そうした「貴重な資源」を有効に使い、知的なことを成し遂げてみたいものです。

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年4月18日 12:37


辞書編纂という大事業の裏側:映画「舟を編む」を見た!

 辞書編纂という途方もない事業のプロセスを描いた話題の映画「舟を編む」を見ました。

 この映画は、ある大手出版社の辞書編集部につとめる、ちょっと風雅替わりな編集部員・馬締光也が、13年という長い年月をかけて、新刊辞書『大渡海』を編纂していくプロセスを描いたものです。

 既存の辞書にはない言葉をどのように採集するか?
 それにどのような語釈(解説)をつけるか?
 寸分のミスもない校正を、いかに徹底的に行うか?

 これらの作業は「途方もなく」、また「終わりがなく思えるもの」です。
 たとえば、校正などは5校!もあるのですが(多い!)、1語1語ミスをチェックしても、4校に至っても、ミスが発見される。
 しかし、「辞書にミスはあってはならない」ということで、また1語1語チェックしていきます。かくして13年という年月があっという間にたってしまうのです。

 映画は、新刊辞書『大渡海』の完成パーティで終わります。しかし、辞書編纂の仕事は、それで終わりません。なぜなら、辞書は完成したとしても、まだ新しい言葉は、世の中に生まれてくるからです。
 再版した辞書においては、これらの言葉をまた採集・収録しなくてはなりません。辞書編纂の仕事は終わらないのです。

 創造作業に取り組む方々にとっては、なかなか示唆に富む映画です。おすすめです。

投稿者 jun : 2014年4月17日 06:01


「イノベーション人材!?」をめぐる「モノローグ委員会」!? : 「キンキンに尖った一匹狼」か「カリスマ漂うオラオラピーポー」か!?

 かなり前のことになりますが、

「日本には、イノベーション人材が足りてないんだ。だから、大学ではそういう人材を育てなくてはならない。企業も、そういう人材こそ採用するべきだ」

 みたいな話題について、口角泡を飛ばしあい、ケンケンガクガクと意見をいう委員会に、やんごとない事情があり参加せざるを得なかったときがあります。もうかなり前のことです。会の冒頭では、「ぜひ皆さんにケンケンガクガク議論してください」と委員会の代表者の方から、ご指示がありました。

 僕は、この手の「口角泡談義の支配する委員会」に「めっぽう弱い」ので、そこは「見識のある方」にお任せして、早々に、お暇することばかり、当初、考えておりました。
 しかし、どこにでも「学びの種」はあるものでございます。議論の進展を伺っているうちに、「ある一点」について心の底から興味がわいてきて、別の観点から面白くなってしまい、結果としては興味深く話をきかせていただき、素晴らしい時間を過ごすことができました。

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 僕がもっとも興味をもったのは何かと申しますと、下記のようなリサーチクエスチョンです。

「イノベーション人材が何たるかについて、そもそものイメージを共有せずして、どうして数時間の議論を継続していくことが可能なのか?」

 会話を伺っておりますと、ある方は、「イノベーション人材」を「人間的にも、キンキンに尖った一匹狼みたいな人」を思い浮かべて話を進めます。また、ある方は「イノベーション人材」を、「スティーブ・ジョブズのようなカリスマオーラーがバシバシでていて、人を魅了する人材」に求めます。また、ある人は、いわゆる「プロジェクトX的な、名も無いチームを率いる人」をイノベーション人材と呼んでいるようです。

 あくまで会話の端々から類推したことですが、僕には、それぞれの方々が、そのような背後仮説のもとで話を継続なさっているように聞き取れました。
 要するにひと言で申しますと、「イノベーション人材」に全く「にぎり」がないまま、話題が「継続」できているのです。話はつながっているようで、実際は前後の話は全くつながっていないのだけれども、なぜか「続く」。

 逆にいうと、この会議は、会の冒頭で代表者の方から「ぜひ皆さんにケンケンガクガクと議論してください」という指示はなされているものの、実際に実際に展開されているのは「議論」ではないのです。誤解を恐れずに申し上げるのであれば「みんなで集まって、議論する」のではなく、「みんなで集まって、各自がモノローグをしている」のです。

 なぜかはわかりませんが、人材系の会議には、この手の「モノローグ会」が多いような実感があります。おそらく、「ほにゃらら人材」の「ほにゃらら」の部分を「イノベーション人材」ではなく「グローバル人材」にしても、同型の会話構造が、会を支配してことの方が多いでしょう。
 そして、皮肉なことに、そうした会の「モノローグ」からは、「イノベーション人材?」も、「グローバル人材?」も生まれ得ないだろうな、というのが、僕の実感です。むしろ「イノベーション人材」なんてものが語られないような空間で、それも、地に足のついた仕事に取り組んでいる人々の中にこそ、それはある、のかもしれません。
 
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 今日は人材系の会議に、なぜか多い、モノローグ会!?についてお話をしました。だから?といわれても、特にオチはありません(笑)。また、イノベーション人材はどこいったのか、さっぱりわかりませんが、まぁ、お許しください。たかが20分で書いているブログです。

 ちなみに、僕個人としては、いわゆる「イノベーション人材」とは、「キンキンに尖った一匹狼」でも、「カリスマオーラ、オラオラな人」でもないイメージをもっています。僕があるイメージをもつことに最も影響を与えてくださったのは、東京学芸大学の高尾隆さん(東大時代の同期で、友人です)からうかがった話です。
 高尾さんは、かつて僕の授業で、キース・ソーヤーさん(この人はクリエィティビティと即興の研究者ですね)の議論を援用しながら、イノベーション人材について下記のように語ったことがあります。

これから求められる人は「イノベーティブな人材」ではありません。「この人が加わるとイノベーティブなグループになる」という人が欲しいのです。(多くの組織では)集団で、ものをつくっているわけですから、ひとりだけイノベーティブになっても活かしようがないのです。

必ずしも、集団がイノベーティブになるために、その人がイノベーティブなアイデアをばんばん出す必要はないのです。その時、必要な人は「この人が加わるとイノベーティブなグループになる人」であって、「孤独なイノベーティブ人材」ではないのです。

 高尾君、やっぱり、そうだよね。
 僕としては、個人的には、高尾君のこの考え方が、しっくりきます(ちなみに、この授業の内容は、本になります)。
 そして人生は続く

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追伸.

慶應丸の内シティキャンパスで僕が講師をつとめる授業「ラーニングイノベーション論」の残席が「わずか」となったようです。

こちらの講座では、「企業に革新をもたらす人材開発」をテーマに、第一線の研究者の方々・実践者の方々にご講義をいただき、ディスカッションやエクササイズを実施していきます。この講座の運営自体が、研修開発のモデルになるように設計しているつもりです。また今年で6期になりますが、100名を超えるアラムナイも魅力的です。

もし参加にご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どうぞお早めにお申し込み下さい。5月23日から開講します!

ラーニングイノベーション論
http://www.keiomcc.com/program/lin/
 

投稿者 jun : 2014年4月16日 06:11


大学生の「食事」を救え!:「仕送り額減少」と「今は昔のバブル時代」!?

 先日、NHKの朝イチで「大学生の食を救え」という特集が組まれていました。番組では様々な大学生の事例が紹介されていましたが、その要点は、

「下宿大学生の可処分所得(仕送り額)が減少するなか、大学生の食事が惨い状態になっている。これを救うべく大学が支援に乗り出している」

 というプロットであったのかと思います。大学生の経済状況は、専門外ではありますが、非常に興味深い特集でした。

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 過去を振り返ってみますと(およそ20年前!)、僕は全く「イケイケゴーゴー?」な大学生時代を「全く」おくっておらず、どちらかというと、というか、間違いなく「貧乏暇なし、ひーこら、ひーこら、ひひーん、ひひーん?的な学生時代」を過ごしましたので、「あー、おれも、ひどい食事だったな」と過去を思い出しつつ、見ておりました。

 当時僕が、一番食べていたのは「午後8時を超えて安くなったコロッケ3つに、ごはんを3合」とか「某ファーストフードショップの一番安いハンガーバー5個」とか「エコノミーカレー大大(具がないカレーで大盛りのさらに大盛り)」でした。いやー、今から考えると卒倒しそうです。
 しかし、今の学生は、さらに過酷なのかもしれません。

 全国大学生活共同組合連合会が行っている学生生活実態調査の一連の結果によると、「大学生の仕送り額」は1996年度あたりをピークに10万2240円から減少していき、2010年度は71310円、平成13年は経済効果?のせいか、72280円に持ち直しましたが、以前厳しい状態が続いています。
 こうした懐具合の中から、もっとも最初に削られるのが、「食費」である、ということになるのでしょうか。

第49回学生生活実態調査の概要報告(全国大学生活共同組合連合会)
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

 これに関連すると、僕は大学教員になってから、おそらくほとんど「授業の「教科書指定」をしたことがありません。つまり、僕の授業を希望する大学生に、教科書の購入を必須としたことはありません。

 本当ならば、これを指定するので読んで欲しいな、と思うところもあるし、授業者にとってもそれが楽なのですが、僕の分野の場合(分野によって異なる)、少し授業を工夫すれば「教科書を指定せずとも授業は出来ます」ので、それをなるべくしないようにしています。

 それは端的に申し上げますと、どうしても「大学生の懐具合が気になるから」です。特に自分と同じように「田舎から出てきた、下宿生」が。

 具体的にどうやるか、というと学部であるならば、何とか板書を増やすことで対応します。教科書に書いてあることの要点を板書にします。大学院ならば英語文献を指定して読み、それをもとに板書をします。これは分野や学習者の状況によると思います。少なくとも僕の場合は、こうした状況で対応をしています。

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 今日は「大学生の可処分所得」のお話をしました。

 僕がまだ小中学校だったころ、その頃の大学生の話題やイメージといえば「やれ、○ジャーランド」だ、「やれ、車乗り回すのなら、B○Wだわ」だの「やれ、今日はギロッポンだわ」という話題ばかりが、メディアでもてはやされていました。
 メディアによって構築された、これらのイメージが、それだけ本当だったのかは、僕は知らないし、興味もないですが、それから30年たって、状況はかなり変わっています。

 大学生が意欲をもって学べる状況が生まれることを願います。
 そして人生は続く
 

投稿者 jun : 2014年4月15日 06:03


アタタタタタタタタ、アターッ! おまえは、もう「形骸化」している!? : 「手法のオワコン化」に潜む6つのパターン!?

 人材開発・人材育成の世界には、様々な「手法」があります。部下育成の手法、会議運営の手法、ファシリテーションの手法、評価の手法・・・「手法」の数をあげつらっていけば、枚挙に暇がありません。

「手法」の中には、世の中に広く広まるものもありますし、そうでないものもあります。「一時期のブーム」をつくるものもありますし、中には「定着するもの」もあります。場合によっては、手法だけが「独り歩き」したりするケースもありますし、「内部崩壊」する場合、オワコン化する場合もあります。

 僕は、この領域を長く見続けておりますので、「手法」が衰退したり、普及に失敗したり、オワコン化したりすることには、一定のパターンがあるような気がしています。それは下記の6つのパターンに分類されるのではないでしょうか。きっと、これ以外にも多々あるのでしょうけど、目につくものは、この6つ。もし不足があると思われた方は、ぜひ足してみて下さい。

①ムーブメント形成の失敗
 ある特定の「手法」がブームになる手前の失敗です。
 ある特定の「手法」に興味をもち実践する人々の間に生じる「大同小異の差(認識の差)」が乗り越えられず、関係者内部のゆるやかなつながりや協力関係が生まれず(場合によっては仲間割れする)、ムーブメント自体をつくれないことから生じます。

②資格付与における失敗
 ある特定の「手法」に関し「資格」などを設けた場合に起こります。本来、資格を与えてはいけない人に、何の質保証を行うことなく、大量資格証明を行ってしまい(選抜と資格付与の仕組みが機能しない)、資格の価値がインフレーションをおこし、その領域自体の経済的価値が地盤沈下することによって起こります。

③人材育成における失敗
 ある特定の「手法」の普及のスピードに、「手法」を実践・指導する側の「人材育成」が追いつかず、結果として、「品質劣化をおこした手法」が普及してしまうこと、ひいては、手法自体にレピュテーションリスクが発生し(悪い評判がついちゃうってことですね)、地盤沈下していくことによって起こります。

④概念定義の失敗
 ある特定の「手法」の概念定義・手続きがゆるく定められ、かつ、普及スピードがはやい場合、おおよそ元々存在していた「手法」とは思想的背景が異なる「亜種」が複数生まれます。複数ある「亜種」のひとつに問題がある場合、もともとの「手法」そのものの価値が疑問視され、普及しないことがあります。

⑤外部環境への変化拒絶による失敗
 ある特定の「手法」自体の教条化・固定化が進み、それを金科玉条のように守ることが「自己目的化」する。しかし、外部環境は変化し、手法自体がそれへの「適応」をはたせないことによって、徐々に衰退していくことがあります。

⑥カリスマ化による失敗
 ある特定の「手法」の創設者・古参者が「カリスマ化」ないしは「サロン化」すると新参者の参入が減るか、ないしは多様性が失われます。新規参入と多様性劣化は、徐々に創設者・古参者の現実認識を曇らせていきます。次第に外部環境への環境適応ができなくなり、徐々に衰退していきます。

 こう考えてみますと、手法の「普及」や「伝承」には、様々な「リスク」が存在していることがわかります。そして、そのリスクは、誰かひとりが注意していれば防げる、といった類のというよりも、むしろ「普及」というものに関係する利害関係者(ステークホルダー)すべてに分散して存在しています。ということは、こうもいえるのでしょう。

 何もケアしなければ
 手法は「形骸化」し「オワコン化」する運命にある。

 まぁ、むしろ、それはそれで少し悲しいことですが、反面、それでいいのかな、という思いもあります。
 以前にも申し上げたことですが、手法それ自体は(手法が印刷物等に固定化された場合は別)、そもそも著作物ではありませんし、著作権法によって保護はされません。
 弁護士の福井健策先生によると、アイデア・着想・技法といったものが、原則として「著作物」として認定される可能性が少ないのは、わたしたちの社会・文化の功利のためでもあるといいます。つまり、手法・技法・アイデアといったものによって私たちの文化がよりよくなるために、「手法を思いついた個人に不利益を生じさせること」があったとしても、しかし、それでも「社会全体の功利」を優先したいという思いが、著作権法には存在するのだそうです。

 むしろ、手法は、固定化・教条化され、ある特定の個人の団体を利するというよりも、むしろ、様々な人々の目にふれ、それぞれの状況にあわせ、オープンソースのように改変・流通、ゆるやかに継承されていく方が、僕としてはしっくりくるような気がします。たかが手法なのです、もちろん、されど手法でもありますが。

たかが手法、されど手法:方法知を伝える
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaharajun/20140414-00034468/

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年4月14日 07:50


How to come up with a remarkable idea!? : What is the relationship between prior paper and new insight?

※I translated 2014/01/20 article(only in Japanese) into the following article in English.

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 Some days ago, a graduate student asked me how to make a unique research hypothesis.
He said

"Nakahara-sensei, I have read a vast amount of previous research and understood what has been done so far. But no novel and unique view point has come to my mind. What should I do?"

He has read some articles which I wrote on my blog for my graduate students. So he asked me this question.
In my opinion, only god knows when remarkable ideas come to our minds. I'm not sure when and how they come. After reading such research, they should be able to come up with some kind of new viewpoints. I said to them "Have you analyzed the previous data and thought about your hypothesis long and hard enough to come up with your own unique idea?"

Anybody can start just reading. However not so many people think it through to the end by themselves. Thinking until you catch a remarkable idea brings a breakthrough in your research. No vast amount of prior research but you come up with a great idea.

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In fact, there is a pitfall when you read a lot of previous research papers.
It is the first routine task for researchers. but it is apt to become its own goal, and then you forget to think by yourself. The harder your have tried to read, the more you are satisfied and engaged with this routine task.

"Oh I studied so much"

You tend to be preoccupied with reading many prior research papers, So you forget to organize your thoughts and create hypothesis by yourself.

I think it is a misunderstanding that reading vast amounts of previous papers is equal to hitting upon your hypothesis. Rather, it is the basic foundation for coming up with your own good idea.

In terms of the relationship between previous research and new insight, a famous and visionary professor, Tadao Umesao, conducted very unique research in anthropology. He said

"Some people criticized me. They said "Tadao Umesao always only creates ideas". However, I think, coming up with new ideas is one of the most important tasks. Without an actual breakthrough idea, it is just quotation and imitation. Too many people think research is reading and quoting other people's ideas.

Today I've talked about the pitfalls of reading many research papers. Reading many prior papers is necessary for establishing brand new ideas. If you are having difficulty in coming up with your unique hypothesis, ask yourself, "Have you analyzed the previous data and thought about your hypothesis long and hard enough to come up with your own unique idea?"

life goes on...

投稿者 jun : 2014年4月13日 12:00


「研修の学習効果」と「ペンペン草もはえないような職場」の関係をさぐる!?

 1990年代ー2000年代の人材開発研究の最大の変化のひとつは、僕は「職場の再発見」であったと思っています。

 多くの人々にとって「職場」は最も長い時間を過ごし、人材開発、人材育成の中核になるにもかかわらず、「職場では、どのようなインタラクションがあるのか」、そして、それが「職場要因が、人材開発にとってどのような影響をもたらすのか」について分析や考察が、あまり進んでいませんでした。
 
 実務家からすれば、

「おい、職場を見落とすんじゃねーよ、そんなもん、アタリマエダのクラッカーじゃねーか」

 という感じだと思いますが、誠に残念ですが、それはそうなのです(笑)。それまでは、むしろ「制度や異動が、人材を育てる(=どんな制度を育てれば、経営指標にどんなメリットが生まれるんのよ)」というかたちの研究パラダイムが支配的でしたが(この場合、職場はブラックボックスになります)、それに、見直しがかかりつつあり、職場要因を考慮にいれた研究が増えたり、職場内部に分析のメスがはいっているのが、昨今だと思います。このことは、著書「経営学習論」に詳細を書きましたので、詳細は、そちらをご覧下さい。

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 ところで、職場の人材開発研究というと、昨今では「上司による育成研究」「同僚による育成研究(Co-worker研究と呼ばれてますね)」も盛んになりつつありますが(大学院の授業では、こちらも読んでいきます)、こうしたいわゆる「OJT系・人系の育成」のみならず、「研修」に関する研究もありますね。「研修効果と、研修参加者の所属する職場要因(Work-environment factor)の関係」をさぐる研究です。

 その要旨を、ワンセンテンスで述べるならば

「研修で学んだことが実践され成果をだせるかどうかは、研修そのもののクオリティもあるけど、職場で、どんな上司や同僚に囲まれてるか、大きいもんねー」

 ということです。これを、プチ難しく言うと、「研修転移の予測要因のひとつに職場内の上司・同僚からの支援がある」ということになります。あんま、変わんないか(笑)。

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 たとえば、わかりやすい研究事例をあげてみましょう。
 下記はクロムウェルさんとコルブさん(2004)の行った研究結果の一部、僕がグラフにしたものです(Cromwell and Kolb 2004 p462 Table2 in Human Resource Development Quaterly)。
 このグラフの縦軸は「研修で学んだ知識やスキルがどの程度現場に反映されているか」という程度です(主観的評定値)。そして横軸は「職場において、上司や同僚からのサポートがどの程度存在するか」というものですね。一目瞭然で、「上司や同僚からのサポートが低い方が、研修で学んだことが実践されにくいこと」がわかりますね。中程度以上あればあんまし問題はないけど、「上司や同僚からのサポートが低すぎる職場」では、研修をやっても実践されない。この研究には、さらに解釈が必要な部分、目配りが必要な部分があるとは思いますが(コントロールどうしてんだ?とか、スキルの質とか)、そこまでは大学院の授業ではないので、つっこみません、ブログなんで(笑)。

cromwell_san.png

ANOVA, Supervisor : F=.979 p<.01, Peer : F=8.16 p<.01 : significant difference between low and moderate, No significant difference between Moderate and high.

 分析結果には、まぁ、首肯できる部分も多いのではないでしょうか。まぁ、そうだよね、感覚的にも。せっかくどんなに研修でいいこと学んだでも、上司も同僚もヤバくって「ペンペン草もはえないような職場」だったら、やる気も失せるわな、泣。実際、やる気があっても、機会も支援も与えられないでしょうし。

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 今日は、ちょっくら、まじめに「職場のお話」をしました。
 ワンセンテンスで述べるならば、「ペンペン草もはえないような職場は、やっぱし、マズイってこと」です。
 おい、それで終わりかよ。

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年4月11日 06:31


魔法のように研究を「面白くなく!?」する言葉とは何か? : 大きな地図を描き、キュウキュウと音がするくらい絞る!?

 今年も新学期がはじまりました。

 昨日は、大学院・中原ゼミと、授業「経営学習論」の初回でした。前者は、中原研のメンバー+共同研究者の方々が集まり初回から早速活発な議論を、後者はオリエンテーションを行いました。昨日は、新大学1年生とたくさん出会う場でした。   
 春うららかなキャンパスで「ねぇねぇ、授業、何とる?」みたいな会話をなさっている新入生の様子は、非常に清々しいものです。まずはご入学(入院?)おめでとうございます。

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 毎年、大学院には新入生がやってきます。
 毎年、大学院生を指導していて、いつも思うことなのですが、僕には指導中、「極力言いたくない言葉で、しかし、いつかは言わざるをえないもの」があります。

 その言葉は、「魔法のように研究をステレオタイプ化し、面白くなくする言葉」なのですが、皆さん、それが何かおわかりになりますか? 
 分野・領域によっても違うのだとは思いますが、少なくとも僕の研究領域においては、この言葉です。

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「研究をもっと絞りなさい」

 この言葉の意味するところは、膨大に広がっている研究の射程を、もっと実現可能・測定可能なものにフォーカスを絞って、実際に研究として「成立」するようにしてください、ということですね。

 この言葉は、大学院の指導においては頻出することばの一つだと思います。指導教員が、この言葉を繰り返しているうちに、大学院生の研究計画は、整ったものになっていきますし、また、実現可能性が格段に高まります。

 しかし、一方で、荒々しく、まだ海の物とも、山の物ともいえないような「研究の新鮮さ」は、徐々に失われていくことが多いものです。

「おいおい、そのやり方は無茶だろ。でるかどうか賭けみたいなものになるぞ。でも、これ、意外に掛け合わせたら、面白いじゃん」

「おいおい、そっから分析するか。まず2年じゃ終わらないな。でも、なかなか、いいとこついてくるじゃん」

 というポイントが、だんだん洗練され、きちんとした研究計画になっていきます。

「研究をもっと絞りなさい」は、僕の場合は、ケースバイケースですが、半年間くらいは極力言わないようにします。

 最初は、問題をできるだけ発散させ、自分の取り組みたい問題に関する「大きな地図」をもってもらうこと。そして問題を切り取ることのできる「自分だけの軸」をもってもらうことに取り組みます。
 だから、この段階の大学院生の研究計画は、ジャジャ漏れ?に広がっていきます。極力、「研究を絞りなさい」は言いません。

 しかし、半年くらいすると、そうもいってられません。今度は、「研究を絞りなさい」「フォーカスしなさい」が頻発していきます。「大きな地図」の中から、自分が取り組みたい問題群、主体、アプローチを、今度はフォーカスして、キュウキュウと音がするくらい?、これでもか、これでもか、絞り込んでもらいます。大学院生にとっては、もっともキツイ時間です。
 
 でも、指導教員の方も、密かにモンモンとしています。
 心の中で僕は、

「本当はもう少し粘って、何とか分析できる方法があったんじゃないかな。この学生の研究は、もっともっと面白い研究になったんじゃないだろうか。ここで、この落としどころに安易に収斂させてもいいんだろうか。研究としては成立するし、やればできると思うけど、それで本当によかったのかな? 他にできることはなかっただろうか? 」と思っています。

「研究をもっと絞りなさい」は、僕にとってディレンマです。できれば言いたくないけど、繰り返し言わざるを得ない言葉のひとつなのです。

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 今日は新大学院生にまつわり、研究指導のことを書きました。キャンパスは、今、暖かな風に包まれ、そこを初々しい新入生が歩いています。新入生の研究計画は、まだまだ広く、荒々しいものですが、しかし、そこからこそ「面白い研究」が生まれてくるのだと思います。

 そして人生は続く

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追伸.

3月27日発売、中原淳・溝上慎一(共編著)、河井亨・木村充・舘野泰一・保田江美(著)「活躍する組織人の探究」(東京大学出版会)ですが、AMAZON、カテゴリー1位を獲得しました。この本は、企業組織に定着・革新をもたらす可能性のある個人が、どのような大学時代を過ごしたのかを実証的に考察した研究専門書です。
 どちらかというと、大学・企業のキャリアセンター、就職・採用関係の方におすすめの書籍です。それらに類する理論が網羅されています。まだまだ残された研究課題は多いと思いますが、どうかご笑覧ください。

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投稿者 jun : 2014年4月10日 06:23


マネジャーに「なる前」にできていて欲しいこと、「なった後」にわかること

日本の会社の様子を見ていて、不思議で、しょうがないことがあります。コーチングやファシリテーションとか、そういうものを、多くの日本企業では、なぜ、マネジャーになった「あと」に学ばせるのでしょうか。そもそも、コーチングやファシリテーションの「できる人」を、マネジャーに「昇進」させるんじゃないのですか? だって、それらは、マネジャーの業務で用いる頻度が高くないですか?

 いつのことだったか、どうしても思い出せないのですが、ある外資系企業でお勤めになった方から、こんなひと言を伺ったことがあります。

 ICレコーダは持っていませんし、長い時間もたっておりますので、ご発言内容は一字一句上記と同じではないと思いますが、その方のご発言のご主旨は、逸れていないはずです。

 この方が不思議に思われていたのは、(おそらく、その方の勤めていた外資系企業では)コーチングやファシリテーションのスキルの「ある」人が、マネジャーに昇進・登用されるのが当然なのに、一方、日本では(本来、安易に一般化はできません、企業によってバラバラでしょう)、そうした基礎スキルが「マネジャーになった後」で学ばれていることです。少なくとも、その方が関わった企業では、そのように見えたのでしょう。

 もちろん、マネジャーになった「あと」でも、そうした部下育成スキルや業務スキルを「学ぶチャンス」があるのだとしたら、それはまだ恵まれていることなのかもしれません。むしろ、コーチングやファシリテーションの重要性や意味は、「なった後」に、様々な部下育成や業務遂行の困難を通じて、少しずつわかってくることなのかもしれません。

 しかし、この方のご発言からは、マネジャーが本来持っているべき「基礎スキル」とは何なのか、について考えるきっかけをもつことができます。

 そもそも、どういうスキルや資質をもった人をマネジャーとして昇進させ、不足があるのならば、何を新規に獲得させなければならないのでしょうか。
 
 そんな根源的なことは、ふだん、あまり考えないと思われますが、「外からの視点」というものは、それをビビットに浮かび上がらせてくれます。まことに興味深いことですね。

 そして人生は続く

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追伸.
 最近、多肉植物が可愛く思えて仕方がありません。多肉植物は、世話もあまりかからず、水も飲まず、健気に綺麗に育ちます。
 しかし、こういう姿をみると、かえって、こちらは、世話したくて仕方がなくなります。ついつい水をあげたくなる。あんまりやると、逆効果だそうなので、泣く泣くお世話を我慢しますが、このじれったさがいい。
 休みになったら、新しい鉢を買いに行きたいです。どなたか、いいお店ありましたら、教えてください。お願いします。

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投稿者 jun : 2014年4月 9日 07:05


あなたの組織を物語るワンワードは何ですか? : 「脳がちぎれる」ほど考え抜いたのか?

 今日の話題は、ユーモアーをもって読んでいただくことが必要なので、どうかそうして欲しいのですが、先だって、ある企業の方とお話していた際(Gさん、Sさん、Oさん、先だってはありがとうございました!)、その企業でしか通用しない言葉で、その組織文化を巧妙にあらわす隠語(ジャーゴン)に出会いました。
 
 その言葉とは、ズバリ

「脳ちぎれ」

 です。勘のするどい方なら、「あー、あの会社ね」「あー、あの経営者ね、だったら使うよね」とピンとくるかもしれません。

 その組織では、企画提案の際などに「考えに考え抜くこと」が求められており、

「脳がちぎれるほど、考えぬいたのか?」

 とか

 もし、企画がもひとつの場合は、

「まだまだいけるよ、脳がちぎれてないから(笑)」

 と表現されるそうです。

 もちろんですが、人がどんなに考え抜いたって、「脳がちぎれること」はありません。ですので、「脳ちぎれ」は「指し示すもの」が存在しないという意味において、明らかにメタファです。

「脳がちぎれることはないけど、ちぎれるくらい?に考えてね」という長いセンテンスを1語で表現し、社員にイメージ喚起させるためのメディアであるとも表現できるかもしれません。

 その企業グループは数万人の従業員の方々が働く企業ですので、そのグループの方々が「脳ちぎれ」という言葉を用いているのだとすると、興味深いな、と思って伺っていました。

 ▼

 今日のお話は、組織文化にまつわるお話しでした。
 仕事柄、ビジネスパーソンの方々からお話を伺うことが大変多いのですが、いつも興味深く聞いているのは、彼 / 彼女が何気なく用いる「ひと言」「ワンセンテンス」「ワンワード」に、組織文化が如実に物語る表現があるということです。

 おそらく、多くの組織には、「自組織でしか通用しないワードで、しかし、自組織の組織文化を物語るワンワード」が存在するのだと思います。

 現場の方々のお話はいつもいつも面白いものです。そうした表現に出会う一瞬が好きで、この仕事を辞められません。

 あなたの組織を物語るワンワードは何ですか?

 そして人生は続く

 ーーー

追伸.
 3月7日刊行された「研修開発入門」がおかげさまで、さらに重版決定しました(三刷:1万部を達成しました!)。お読み頂いたみなさま、ありがとうございました。心より感謝いたします。
 同時期3月に東京大学出版会より刊行された「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」は、大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。
 

投稿者 jun : 2014年4月 8日 06:41


「はたらく」の反対語と同義語を3つあげてみるミニエクササイズ!?:塩瀬隆之先生にお逢いしました!

 先だって、あるところで、インクルーシブデザインなどの領域で、著名な活動をなさっている塩瀬隆之先生とお話しする機会を得ました。
 塩瀬先生は、京都大学総合博物館の准教授をつとめられておりますが、現在は一時的に、経済産業省に出向し、産業に資する人材施策の立案などをなさっている、異色のキャリアの持ち主です。
(先生は、多種多様な研究領域の方々と、様々なワークショップや教材を開発なさっています。下に先生の活動の一貫のURLをあげておきます)

 塩瀬先生とは、経済産業省のある会合で、ご一緒させていただき、いつかゆっくりと時間をとってお話をしましょう、ということで、今回の機会が実現しました。このたびは、ありがとうございました(感謝!)。

  ▼

 塩瀬先生の精力的な活動、それにまつわるお話は、どれも非常に興味深いものでしたが、個人的に、特に興味をもったのは、「はたらく」ということに関する先生のワークショップでした。

View21の塩瀬先生の記事(こちらに紹介されています)
http://berd.benesse.jp/up_images/magazine/02toku_025.pdf

 それは「はたらく」という言葉の「反対語」を3つと「似たイメージ」を3つ、書き出してみる、というものです。
 ぜひ、皆さんも塩瀬先生の「問い」に答えてみて下さい。

 ちなみに、僕は「はたらく」の反対語は

 「寝ている」
 「閉じ込められる」
 「沈黙している」

 でした。

 逆に僕にとっての「はたらく」に似たイメージは

 「考える」
 「つなげる」
 「生みだす」

 でした。皆さんはいかがでしょうか?

 塩瀬先生によりますと、人によっては、「はたらく」の「反対語」と「似たイメージ」が、場合によって両方ネガティブワードになってしまう方もいらっしゃるんだとか。
 つまり例をあげるならば「働くの反対語」に「何もしない」といれて、似たイメージに「つまらない」といれるということですね。
 ちなみに、もっとも多いのは「反対語」が「さぼる」「遊ぶ」「休む」。似たイメージは「稼ぐ」「動く」「頑張る」だとか。興味深いことですね。

 このワークの面白いところは、非常にシンプルな問いにもかかわらず、その人のもっている「はたらく」のイメージ、すなわち、「労働観」や「社会観」が透けて見えるところなのかな、と思います。もし時間が許されるのならば、例えば

・なぜそのワードを選んだのか?
・その選択にはどんな要因・過去の出来事が影響しているのか?

 という風に「深掘っていけば」、なかなかディープな語りにつながるのかな、という印象を持ちます。
 皆さんは、どんなワードを「はたらく」の「反対語」「似たイメージ」にあげましたか?

 ▼

 塩瀬先生とは、夏くらいをめどに「何か面白いこと」でご一緒できるといいですね、とお話していました。きっと、実現すると僕は思っています。そんな「近い将来」が今から楽しみです。

 そして人生は続く

 --

参考.
宇宙箱舟ワークショップ
http://www.usss.kyoto-u.ac.jp/hakobune/

 --

追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。


投稿者 jun : 2014年4月 7日 08:13


「オンガク」ではなく「オンガク活動」をするのである!? : 「次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック」を読んだ!

 次世代ミュージシャンが、どのように未来をつくりあげていくか・・・
 この問いに対する探究を行った書籍「次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック」を、たまたまひょんなことから、リアル書店で見つけ、大変面白く読みました。

 著者によると、次世代ミュージシャンは、「音楽」ではなく「オンガク活動」を生きているといいます。
 著者によると、「オンガク活動」とは「音楽をつくる」だけではなく、どう伝えていくか、どう届けていくかを、ミュージシャン自身が自らコントロールし、決めていくことであるといいます。

 曰く、
 
「音楽がこれだけ広いコミュニケーションの中心になっている今、奏でるだけじゃなくて、できることはたくさんある。語ること、考えること、場をつくること、学ぶこと・・すべてがオンガク活動だ」

 著者が、このメッセージをして、「音楽」だけを想定して本書を書いていないことは明白です。
 実際に、冒頭部には、「この本は、ミュージシャンのための本とも言えるけど、そうじゃないとも言える」と書いてあるのですから。

 音楽以外の、何を想定して、著者は書いているかって?
 それは、おそらく、あなたが、今、どのような仕事をしていて、それが「創造」に関係しているか、していないかで、解釈は異なってくるように思います。

 大手レーベルによるメディア需給システムが崩壊し、アンバンドリングがいち早く進んだ音楽業界。妄想力を働かせれば、そこから学ぶべき事は、僕自身は非常に多かったです。
 そして人生は続く・・・。

ーーー

追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。

投稿者 jun : 2014年4月 4日 07:00


東大大学院授業「経営学習論」2014で扱う文献が決まった!? : 採用から研修、OJT、そしてリーダーシップ開発まで

 ようやく4月からの大学院授業の文献が決まりました。文献選定には、中原研・大学院生の保田さんの、OBの関根さんの御協力も得ました。お二人ともありがとうございます。今年は、「採用・選抜ー入社時の社会化(研修・OJT)ーリーダーシップ開発」に至る内容を扱います。

 ・いかに人を採用・選抜するか?
 ・いかに人を組織に適応させるのか?
 ・いかに研修をデザインするのか?
 ・いかにOJTをデザインするのか?
 ・いかにリーダーシップを開発するのか?

 に関するレビュー論文等を読んでいくことになりそうです。文献購読は英語ですので、そこそこ大変ですが、学生の方で、人材マネジメント、人材開発、人材コンサルティングにご興味をお持ちの方は、ご参加をご検討下さい。

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東京大学大学院 学際情報学府 2014年度
「経営学習論(Management Learning)」夏学期授業シラバス
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中原 淳
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
 
■講義の概要
 経営学習論とは「経営・組織における学習」に対する学際的
研究領域です。一般的な用語を用いれば、組織における「人材開発」
「人材育成」の基礎理論に関する研究領域です。人が組織にエントリーし
どのような発達をとげ、どのように熟達していくかを、探究します。

 本講義では、経営学習論の基礎的文献を読み、本領域に関する
理解を深めます。採用ー社会化ーリーダーシップの発揮にいたるまでの
基礎理論を理解できます。想定される受講者像としては、下記を想定
しています。

・組織における知識共有、学習に関心のある方
・組織のおける人材育成、人間の成長に関心のある方
・組織変革や文化の構築等に関心のある方 
 
 本講義は、グループでの英語文献発表やディスカッション
を行います。このことの趣旨を理解し、活動を厭わない学生の受講を
期待する。

 なお、本講義は意欲ある学部生の聴講を認めますが、単位はでません。
また聴講に際しては、オブザーバとしての参加を認めません。
 文献購読に参加し、英語文献発表・ディスカッションを厭わない
学部生であれば、聴講可能です。

■評価
 下記の3点から成績をつける。
1.コメントカードによる出席点30%
2.プレゼンテーション(全員からの相互評価30%)
3.最終プレゼンテーション(全員からの相互評価40%)

 なお、相互評価のポイントは下記の5点。
  1.スライド・配付資料のわかりやすさ( / 5)
  2.プレゼンテーション手法(声・身振り)( / 5)
  3.質疑応答の適切さ( / 5)
  4.理論の解説がわかりやすいか( / 5)
  5.考察がなされているか( / 5)


■場所・時間
 水曜日 4限より(14:50)
 福武ホール B2 福武スタジオ1


■連絡先
 中原 淳(なかはらじゅん)
 〒113-0033 東京都文京区本郷7−3−1
 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
 東京大学大学院 学際情報学府 准教授(兼任)


■授業アーキテクチャ
 ・イントロダクション(中原:10分)
 ・文献発表(文献担当グループによる:30分)
 ・ディスカッション(グループで:15分)
 ・オープンディスカッション(クラス全体で:30分)
 ・ラップアップ(中原:5分)


■英語文献発表のやり方
・課題として設定された文献を購読し、内容を要約
する。

・発表はレジュメを用いて行う。
 レジュメ事例は、上記の文献パッケージに入っている
 ので、みておくこと

・レジュメの構成時には下記を検討する
 ・各文献の要約をまとめた内容
 ・今回の文献で興味深かったところ/面白かったところ
  現場で役立ちそうなところ
 ・今回の文献の課題、問題点
 ・グループとして考察したこと
 ・今回のプレゼンテーションの各人がどのような
  役割を担ったか?

・配付資料は人数分用意し、各自で印刷すること。

・配付資料は「レジュメ配付資料」を用意する。
印刷は各グループで行うこと。

・発表の時間は30分。その後質疑応答
があるので、質問にも答えられるようにしておくこと。
 
 
■参考文献
・中原淳(2012)経営学習論. 東京大学出版会
http://ow.ly/vjGJ0

・中原淳・溝上慎一(2014) 活躍する組織人の探究. 東京大学出版会
http://ow.ly/vjGKq

授業中解説に用いることはありますが、必須ではありません。
さらに探究を進めたい方は、ぜひご参考になさってください

■経営学習論の全貌:オリエンテーション
 ・講義概要
 ・授業の流れ
 ・グルーピング&自己紹介&連絡先交換
 ・名簿づくり
 ・スケジュールの確認と担当決め
 ・プレゼンテーションの準備と方法

■各自文献購読・発表準備

■採用と予期的社会化※
Breaugh, J. A., Macan, T. H., and Grambow, D. M.(2008) Employment recruitment: Current knowledge and directions for future research. Hodgkinson, G. P. and Ford, J. K.(eds.) International review of industrial and organizational psychology. John wiley and Sons. Vol.23 pp45-82
採用 募集 研究 モデル 

■採用と予期的社会化※
Chapman, D. S., Uggerslev, K.L., Carroll, S.A., Piasentin, K. A. and Jones, D.A. (2005) Applicant attraction to organizations and job choice: a meta-analytic review of the correlates of recruiting outcomes. Journal of Applied psychology. Sep;90(5):928-44.
採用 リクルーター メタ分析 職業選択

■採用と予期的社会化※
Meglino, B. M., Ravlin, E. C., and DeNisi, A. S.(2000) A meta-analytic examination of realistic job preview effectiveness. A test of three counterintuitive propositions. Human Management Resource Review. Vol.10 No.4 pp407-433
現実的職務予告 メタ分析

■組織参入時の学習
Kammeyer-Mueller, J., Runenstein, A. and Song, Z.(2013)Support, Undermining, and Newcomer Socialization: Fitting in During the First 90 Days. Academy of management journal. Vol.56 No.4 pp1104-1124
職場 Co-working 同僚・上司による新人支援 減衰 

■組織参入時の学習
Schaubroeck, J. M., Peng, A. C. Hannar, S. T.(2013) Developing Trust with Peers and Leaders: Impacts on Organizational Identification and Performance during Entry. Academy of management journal Vol.56 No.4 pp1148-1168
職場レベル 信頼 同僚・上司からの支援

■組織参入時の学習
Ibarra, H. and Barbulescu, R.(2010) Identity as Narrative:Prevalence, effectiveness, and consequences of narrative identity work in macro work role transitions. Academy of management review Vol.35 No.1 pp135-154
アイデンティティ ナラティブ 組織参入

※下記は5月14日ー5月28日までを総括する基礎文献ですが、授業では読みません。中原から解説します。余裕のある人は目をとおしておいてください。
Ashforth, B. E., Sluss, D. M. and Harrison, S. H.(2007) Socialization in organizational context. Hodkinson, G. P. and Ford, J. K.(eds.)International review of industrial and organizational psychology. Vol.22 pp1-70
組織社会化論 オーバービュー 新人適応のモデル・3つの変数

●研修効果、研修の転移
Collins and Holton(2004)The effectiveness of managerial leadership development programs: a meta analysis of studies from 1982-2001. Human resource development quarterly Vol.15 No.2 pp217-248
研修効果 マネジャー研究 メタ分析

■研修効果、研修の転移※
Tews, M. J. and Tracey, J. B.(2008) An empirical examinations of post training on the job supplement for enhancing the effectiveness of interpersonal skills training. Personnel Psychology
Volume 61, Issue 2, pages 375-401
研修後の働きかけ 効果の減衰 セルフコーチング

■研修効果、研修の転移※
Marx, R. D.(1982) Relapse prevention for managerial training : A model for maintenance of behavior change. Academy of management Review Vol.7 No.3 pp441-443
研修効果の転移 メインテナンス 逆戻り現象の予防

■リーダーを開発する
Day, D. V., Fleenor, J. W., Atwater, L. E. and Sturm, R. E. and Mckee, R. (2014).Advances in leader and leadership development: A review of 25 years of research and theory,The Leadership Quarterly, 25, pp.63-82
リーダーシップ、リーダー リーダーシップ開発 レビュー

■リーダーを開発する
Lawrence J. Van De Valk and Mark A.Constas. (2011). A Methodological Review of Research on Leadership Development and Social Capital: Is There a Cause and Effect Relationship? Adult Education Quarterly, 61(1), pp73-90
リーダーシップ ソーシャルキャピタル 方法論

■リーダーを開発する
Maybey. C.(2013) Leadership development in organization. International journal of management reviews Vol.15 pp359-380
リーダーシップ 組織 言説 実践

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投稿者 jun : 2014年4月 3日 07:00


スクリーンから目線をあげるムーブメント!? : よいアイデアはラップトップからは生まれない!?

 僕たちは、どこからアイデアが生まれてくるかなんて、わからない。でも「ラップトップから生まれないこと」くらいは、わかっている。
(We don't know where we get our ideas from. we do know that we do not get them from our laptops)

Cleese, J.

 激しく「自戒」をこめて申し上げますが、僕を含め「スクリーンの虜」になっている方の割合が増えているように思います。

 電車の中でも、下にうつむき、ラップトップを開け、スマホを用いる。ヘタをすれば、トイレの中でも、うつむき、用を足し。おそらく、デジタルツールを全く用いていないのは「寝たあと」くらいなのではないでしょうか。

 個人的印象ですが、電車の中でめっきりと本を読んでいる人を見かけることが少なくなりました。マンガなどを読んでいる人は、たまに見かけますが、特に雑誌、単行本などは、かなり少ない印象です。皆、下にうつむいて、スクリーンを見ている。

 しかし、こんな状況だからこそ、最近よく「目線をあげることの大切さ(Look up!)」を思います。
「スクリーンの虜」になるのではなく、こういう時代だからこそ、「目線をあげるムーブメント(Look up movement)」を起こさなければならないような気もします。先ほどの言葉「ラップトップから、よいアイデアは生まれない」は、敢えて議論を極にふった名言ですが、目線をあげることの重要性を述べているようにも思います。

 たとえば、デジタル絶食(数日間デジタルを断つこと)もいいでしょうし、野外にでることもいいでしょう。キャンプなどをして、ひとり読書にふけることも、そのひとつです。
 とりあえずは、スクリーンから離れて、モノを思ったり、考えたり、行動する時間が必要であるようにも思います。

 仕事柄、デジタルから距離をおくというのは、現代社会を生きる人々にとって、特に知的生産にかかわる人にとって、なかなか難しいことのように思います。しかし、限られた時間、数時間ー数日であれば、それも不可能ではないのかもしれません。

 というわけで、近いうちに僕は、言い出しっぺとして、「Look up movement」を挙行することにします(笑)。どんな変化が精神面、身体面に生まれてくるかが、楽しみです。また、その結果はご報告します!

 Look up from your screen!
 そして人生は続く

 ーーー

追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。

投稿者 jun : 2014年4月 2日 07:04


4月1日、新入社員は今どういう状況にあるのか?:霧の中の自分、本当の「かしこさ」の発揮!?

 4月1日、新年度です。
 研究室・研究部門を去る仲間、別の地域で新たな生活をはじめる仲間。そして、研究室・研究部門の正式なメンバーとして、同僚として働き始める仲間。3月末から4月にかけては、様々な「変化」が矢継ぎ早に生まれます。
 企業の人事・人材開発の方々は、おそらく今日から数週間、怒濤の新入社員研修でしょうか。まことにお疲れさまです。長期宿泊用のキャリーバックを引きずって、本社・地方・ホテルなどを回られる様子が、目に浮かびます。

 新入社員の方々は、今、どんな面持ちで、この瞬間を迎えていらっしゃるでしょうか。新たな生活に対する期待と、少しの不安。数時間後にはじるであろう、入社式に出席するため、少し早く目が覚めたくらいでしょうか。4月1日の朝、おはようございます。

  ▼

 新入社員の方々が、これから数週間ー数ヶ月にかけて体験するのは、「ぼんやりと霧のかかった世界」です。学問的には「不確実性」と形容されますが、要するに「霧のようなもの」です。

 新たな組織において、何を自分が期待されているのか、どのような役割を担うことがコレクトなのか、答えは「霧の中」。自分のいる職場はどういう人がいるのか、誰がキーマンなのか。そういう人間関係すらも「霧の中」。
 要するに、新たに組織に参入する人々にとっては、「行動・認知の準拠・拠り所」となるような情報が「見えません」。それは、まだ「ぼんやりと霧のかかった世界」にあります。今の段階では「見えないこと」を恐れる必要はありません。みんなそんなものだから(笑)。「ぼんやりとした霧」を疎む必要もありません。いずれ、いやでも、わかってくるから(笑)

 要するに、新規参入者にとって、この数ヶ月は

 「何がなんだか、よく、わかんない世界(笑)」

 を生きることなのです。

 さらにいうならば、

 「何がわかんないんだか、よく、わかんない世界(笑)」

 といってもいいかもしれません。
 ちなみに、悪のりすれば、いくらでも無限遡及できます。

 「何がわかんないんだか、よく、わかんないことすら、わかんない世界(笑)」
 
 もう、やめなはれ。

 ▼
 
 こうした「ぼんやりとした霧をはらす役割」は、まずは「組織」にあります。新規参入者が「行動・認知の準拠・拠り所」を見いだせるよう、オリエンテーションを実施したり、作業をともにしたりします。こうしたものを理論的には社会化戦術といったりします。しかし、当然のことですが、「ぼんやりとした霧をはらす役割」を組織だけに任せるわけにはいきません。

 新規参入者は、周囲の様子を見ながら、自らアクティブに組織・環境に働きかけ、この「ぼんやりと霧のかかった世界」の「濃霧」をといていかなければなりません。もちろん、すぐには難しいと思いますし、あまり性急すぎるとヘタを打ちます(笑)。濃霧で運転するとき、トップギアをいれてアクセル踏み込まないでしょう? あわてない、あわてない(笑)
 少しずつ少しずつ、霧をかきわけていく。組織・職場の重要なメンバーを見極め、既にある関係をうまく読み、少しずつ少しずつ、「行動・認知の準拠・拠り所」を探していくということになります。

 「ぼんやりと霧のかかった世界」にも、いつかは「晴れる日」がくるものです。
   そして、
 「何がわかんないんだか、よく、わかんない世界(笑)」にも、一定の論理があるものです。

 そんな霧をかきわけていく数ヶ月が、これから続きます。

 ▼

 霧の向こうに広がる世界は、自分が組織参入前に思い浮かべていたような「パラダイス」ではないかもしれません。そこには、組織が抱える「生々しいリアリティ」が存在しているはずです。でも、大丈夫です。みんなそんなものだから(笑)。

「君たちは社会に出て、良き職場や良き上司に恵まれて、社会生活を送るかもしれない。しかし、多くの場合はそうではない。有能だとは思えない上司。自分にあわない仕事内容。さて、どうする? 本当に"かしこい"というのは、そこから始まるのだ」(甲田和衛氏の言葉「生涯学習と自己実現」より引用)

 今こそ、「本当のかしこさ」を発揮する時なのかもしれません。それは学校にいたときに発揮していた「かしこさ」とは、少し違うのかもしれない。「本当のかしこさ」を発揮する、終わりなき旅を、ぜひ愉しんでください。

  社会人としての、新たな生活をおめでとうございます!
 そして人生は続く

 ーーー

追伸.
「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行され、そろそろ書店に並んでいる頃と思われます。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。

投稿者 jun : 2014年4月 1日 05:21