ただ何となく「就活」、ただ何となく「離転職」!?

 年度が替わり、新たな学生やスタッフが研究室に加わり、泡立たしい毎日を過ごしています。研究プロジェクトも今年度から大きく刷新され、小生、また新たな研究室メンバーと新たなプロジェクトに向かっているところです。体力・気力が続くまで(笑)、目標は生涯フロントラインです。

 ところで、今年からはじまった研究プロジェクトのひとつに「大学生の就活・採用・配属・育成」までの諸データを扱った縦断調査の研究があります。

 要するに、

「大学時代、どのような生活・就活をしていた人」は「組織に入ったあとでどうなるか?」

 ということをフレームにしながら、

「どのような採用・育成施策を行えばよいのか」

 を探究する研究です。具体的には2010年に大学3年生だった学生が、2013年には組織に入って2年目なのですが、その2地点間の関係を考察する研究です。先に公刊した「活躍する組織人の探究」(東京大学出版会)の続編プロジェクトですね。


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 今日は、大学院ゼミ修了後、このデータ分析初回の研究会が開催されるのですが、データを見ていると、ついつい余計な「妄想」?をしてしまい、時間がかかります。

 結果をテーブルにしつつ、1つ1つ、読み込んでいると、

「嗚呼、就活の時、母親・父親から応援されていない人もいるんだなぁ・・・」

 とか

「嗚呼、このグループの人達は、最初に出会った上司が、ゴリゴリ系だったんだろうな」

 とか、ついつい「数字」に「人生を見てしまい」、妄想が広がってしまいます。

 データ分析はまだまだこれからなので、明瞭な結果が得られるまでには、しばらく時間がかかりますが、一個だけ興味深かった点があります。

 それは「就活」の際、どれだけ「第一志望群」という企業を、自分でイメージできているか、否かによって、その後の組織適応の結果が、かなり変わるのではないか、という仮説です(まだ仮説レベル)。「組織にエントリーして、2年以内の転職経験」と関連させて考えてみますと、明らかにここには差があります。

 つまり「転職した」と答えている人は、就活のときの「自分の入りたい企業イメージ」が希薄なのです。つまり、「目標がなく、ただ何となく就活」をしている傾向があるように思います。個人的には「ただ何となく就活(をしている人)」のあまりの多さにびっくりしてしまいました。「転職あり」の実に半数は「ただ何となく就活」に類型化されるような就活をなさっていることがわかります。あれだけ「キャリア教育」と騒がれているのにもかかわらずです。

 詳細なデータ分析はまだこれからなので、何ともいえないのですが、これは「就活で学んだことは何だったのか?」というデータと関連を見せそうです。
 また、2010年、つまり3年前に取得された、そういう方々の大学時代の行動データもおってみたいと考えています。
 
 ひとつの研究が終われば、次がはじまる。
 また振り出し、ゼロからのスタートです。
 そして人生は続く 

追伸.
 5月9日、拙著「駆け出しマネジャーの成長論」が中公新書ラクレにて刊行されます。この本は、「実務担当者がいかにしてマネジャーになっていくのか」を扱った本です。人材育成研究の知見と、先達マネジャーの語りから、新任マネジャーが直面する7つの挑戦課題について、それをいかに乗り越えるかを考えています。記述は、新書スタイルで、一般向けになるべく平易に書いたつもりです。また玄人の方にもお読み頂けるよう、脚注も充実させています。どうぞご笑覧ください!