【イベント参加者募集】 組織開発「的」キャリア研修のすすめ!? : 組織に「まとまり」をつくるキャリア研修!?を目指して

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NAKAHARA-LAB.NET(中原淳研究室メルマガ)

【組織開発「的」キャリア研修のすすめ!?
 組織に「まとまり」をつくるキャリア研修!?を目指して】

KEYWORD : キャリア開発 組織開発 縦割りの壁 研修開発

5月8日(木)午後6時00分-午後9時00分くらいまで
株式会社内田洋行 東京ユビキタス協創広場 CANVAS B1F
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 みなさん、ご無沙汰しております、中原 淳です。
 このたび、5月8日(木曜日)に、経営学習研究所のイベント
を、内田洋行さまとともに、開催させていただきことになりま
した。

 今回のイベントのテーマは

【組織開発「的」キャリア研修のすすめ!?
 組織に「まとまり」をつくるキャリア研修!?を目指して】

 です。組織と個人の勢いを高める「1粒で2度おいしい」研修
をご紹介します。

 日本航空株式会社の板谷和代さん(MALL理事でもあります)を
講師に迎え、同社で実施しているキャリア開発研修に関する話題
提供をいただき、皆さんで議論を深めることができたらと思っております。

 組織や職場のダイバーシティがあがっていくにしたがって、組織
の中に「見えない壁」が生まれたり、「まとまり」が失われていく
といったことをよく耳にします。
 一方、働く個人の側、なぜ働くのか、なぜここにいるのかが
見えなくなる事態も生まれてきているといいます。

 板谷さんは、この2つの問題を、ひとつの研修に落とし込み、実践を
続けていらっしゃいます。当日は、研修のワークの一部を体験しながら、
働く個人を元気にし、組織に勢いをもたらす研修のあり方について
皆さんと議論ができますと幸いです。

 中原 淳

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■共催
 一般社団法人 経営学習研究所
 Process Design Lab.& 働く女性ラボ
 http://www.mallweb.jp

 内田洋行教育総合研究所

■日時
 2014年5月8日(木)午後6時00分 - 午後9時00分まで
 開場は5時30分から

■ 会場
 株式会社内田洋行 東京ユビキタス協創広場 CANVAS B1F
 http://www.uchida.co.jp/company/showroom/canvas.html

 JR・東京メトロ八丁堀駅または東京メトロ茅場町駅下車 徒歩5分
 近隣に内田洋行様の別ビルもありますのでお間違いのないよう
 にお願いいたします。

■参加費
 お一人様4000円を申し受けます
 限定80名まで

■内容
・ウェルカムドリンク pm5:30-6:00

・オーバービュー pm6:00-6:20
「組織と個人を元気にする研修?」
(中原淳)

・セッション1 pm6:20-6:50
「【うきうき・わくわく・いきいき】気づく&築く場」
  日本航空(株)人財本部 意識改革・人づくり推進部
  教育・研修グループ長 板谷和代さま
まさかの経営破たん!・・不満、不信、不安。
そんなときこそ、一人ひとりがうきうき、わくわく、いきいき
と働かなくちゃ!JALグループ全体を巻き込んだ
「モチベーション&コミュニケーション研修」。
仲間との一体感に気づき、自らのキャリアを主体的に築く場を
ご紹介します。

・ブレイク pm6:50-7:00

・セッション2 エクササイズ pm7:00-7:30
【モチベーション&コミュニケーション研修】では、
講義→ワーク(エクササイズ)→ダイアログを繰り返します。
☆皆さんにもエクササイズを体験していただきます。

・ブレイク pm7:30-7:40

・セッション3 pm7:40-8:10
「働く意義を共に考えると、仲間への思いと成長意欲に繋がる!」
研修最後をいかに締め括るか。エンディングについてお話
いたします。

・リフレクティブ・ダイアログ pm8:10-8:30

・コメントシート de Q&A pm8:30-8:50

・ラップアップ pm8:50-9:00


■参加条件
下記の諸条件をよくお読みの上、参加申し込みください。
申し込みと同時に、諸条件についてはご承諾いただいて
いるとみなします。

1.本ワークショップの様子は、予告・許諾なく、写真・
ビデオ撮影・ストリーミング配信する可能性があります。
写真・動画は、経営学習研究所、ないしは、経営学習研究所
の企画担当理事が関与するWebサイト等の広報手段、講演資料
、書籍等に許諾なく用いられる場合があります。マスメディアによ
る取材に対しても、許諾なく提供することがあります。
参加に際しては、上記をご了承いただける方に限ります。

2.欠席の際には、お手数でもその旨、
info [あっとまーく]mallweb.jp まで(松浦李恵)
ご連絡下さい。人数多数の場合には、繰り上げで他の方に席
をお譲りいたします。

3.人数多数の場合は、抽選とさせていただきます。4月15日
までにお申し込みをいただき、4月20日には抽選結果を送信さ
せていただきます。

以上、ご了承いただいた方は、下記のフォームよりお申し込みください。
なお、応募が多い場合には、〆切まえであっても、予告なく応募を
停止する可能性がございます。あしからずご了承下さい。

■お申し込みWEBサイト
http://ow.ly/vbUqv

皆様とお会いできますこと愉しみにしております!

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追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育と企業の人材マネジメントをつなごうとする「無茶?・無謀」な試みです。どうぞご笑覧下さい。

 On 27th March, "How people learn to work : Transition from University to corporation" was published by The University of Tokyo Publishing Inc. This book was written for staff who work for career development divisions in universities and corporations, and those who are conducting research on human resource management and development.

 The research of this book was financially supported by Dentsu Ikuei Kai. Associate professor Shinichi Mizokami (Kyoto University) and Jun Nakahara (Myself : University of Tokyo) and our colleagues began this research about 3 years ago.
 We did a questionnaire with 3000 people who were working for corporations, asking them to look back on their university life and their recruitment process in the past. We investigated how people transit from universities to corporations and how they adapt themselves to corporations. We have combined higher education research and management learning research.

 Each of the authors has a particular findings and ideas they want to express in this book, what I want to clarify is the relationship between recruitment and development(organizational socialization) . I want to assert that the outcome of human resource development will be enhanced by effective recruitment.

 The resource of organizational socialization of new comers has been limited gradually because of the competitive market. The company cannot invest so much money and time to get the new comers on board. This phenomenon is called "swift socialization".
 Under limited resources, if you want to socialize new comers quickly and effectively, you have to care about the "anticipatory socialization process" (how the company finds the good person and how it provides the preparation program to the new comer before they enter the organization).

 To be specific, we have drawn attention to how we plan the human resource management process from recruitment to development strategically, consistently and effectively . That's why we analyzed how people live and learn in universities, and then, how they overcome the recruitment process and how they adapt themselves to the new corporation.

 By publishing this book, we are just standing at the starting point. We are continuing to investigate the whole process from recruitment to initial adaptation and career development.

投稿者 jun : 2014年3月31日 07:56


「インタラクティブ・ティーチング」に駆けた思い:東大、「大学教員養成講座」の一部をMOOCで無償公開!の裏側

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 ついに、この半年間、温め続けた企画をオープンに語れる日がきました(涙!嗚呼、号泣)。下記のプレスリリースをご覧下さい。

東大、「大学教員養成講座」の一部をMOOCで無償公開!
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260327_j.html

 私どもの研究部門が、これまでの経験の蓄積を踏まえて開発した「教える技法を教える講座」、その名も「インタラクティブティーチング(Interactive Teaching)」が、秋以降、MOOCで一般に無償公開されます。

 「ティーチング:教えること」というと、「できる人」から「できない人」へ何かを伝えるイメージもっていませんか? もし、そういうイメージをお持ちだとすると、「インタラクティブ」と聞いたら、変な気持ちになりませんか? おいおい「ティーチング」とは「インタラクティブ(双方向)じゃなくて、One way(一方向)だろう」と。

「インタラクティブティーチング」というネーミングを行ったのは、ズバリ、それが「狙い」です(笑)。この言葉をあえて「オキシモロン」化することで、問題提起を行いました。「ティーチングとは、インタラクティブ(双方向)じゃなくて、One way(一方向)だろう」とは、私たちは、考えたくないのです。

 たとえば、こういうことです。
 世に流布する言説ーたとえば「ティーチングなんて古いよ、これからはワークショップ!」とか「ティーチングなんてださいよ、これからはラーニング!」とか、そういう「紋切り型の手垢にまみれたセンテンス」を用いるのではなく、正々堂々、「ティーチング」ということばを問い直したいのです。

 巷間に流布する「ティーチングなんて、古いものを再生産するだけだよね、これからはクリエィション(創造)でしょ、コラボレーションでしょ」とかいう「いかにもな言説」を問い直したいいです。本当にそうなのか、とふと立ち止まって考えたいのです。
 
「よく考えられたティーチング」、それは、そもそも、「インタラクティブ」なものなんだし、だからこそ「クリエィティブ」なものだし、そもそも「コラボラティブ」なものなんじゃないの? 。「インタラクティブなティーチング」だからこそ、クリエィティブで、コラボラティブであり、だからこそ、成果や理解につながるんじゃないの?、と。

 ま、ここまで暑苦しい思いもないのですが、ちょっとこんな思いをこめて、「インタラクティブティーチング」という講座名を決めました。

 なお「インタラクティブティーチング」のうち、MOOCで展開されるコンテンツは、どなたでも、どこからでも受講することができます。
 大学院生は言うに及ばず、教員の方々、すなわち小中学校および高等学校、および大学教員の方々にもご利用いただけます。もちろん、企業の教育担当者等にもご利用いただけます。オールフリーです。ご興味をお持ちでしたら、どうぞご覧下さい。

 主任講師には、栗田佳代子特任准教授・そして、不肖わたくしめ中原。さらには本学の三宅なほみ教授、本田由紀教授、山内祐平准教授など、学習・教育に関する研究や魅力ある授業を実践してきた教員らによるセッションも準備させていただいております。夏以降には、第一線の研究者・実務家に、さらにさらに参画して頂けそうです。どうぞお楽しみに!

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「インタラクティブティーチング」は「MOOC(オンライン講座)」と「対面集中講座」の二本立てで構成されています。

 オンライン講座では、学生が主体的に学ぶための方法、たとえば授業を双方向にするための知識や技法を学びます。オンライン講座は8週間にわたって続き、1週間90分(10分×9本)の動画を視聴し、掲示板で他の受講者と議論を深め、クイズに答えるなどします。かなりガチです。それなりにハードです。

 一方、「対面集中講座(3日間:総学習時間18時間 東京開催)」では、オンライン講座で学んだ知識や技法をふまえたディスカッションおよび種々のグループワーク、シラバスや授業案の作成、模擬授業の実施などを通じ、オンライン講座での学びを補い深める実践的な内容が提供されます。対面集中講座については、オンライン講座受講者の中から選抜された半期20名(年間40名)の大学院生を対象として実施します。Face to Faceですので、もちろんガチです。それ以上にハードです。
 こうした二本立ての構成は、いわゆる反転授業(オンラインで予習、対面授業では実践や実習を行う)の形式であり、FD(ファカルティディベロップメント)としては日本初の試みです。
 
 オンライン講座を受講しMOOCによって展開される教育の基礎知識を獲得した方には「gacco」所定の修了証を、対面集中講座まで終えた大学院生のうち、すべてのカリキュラムを履修した方には、プログラム全体の履修証を発行する予定です。

 どうぞお楽しみに!
 そして人生は続く!

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UTokyo is launching a new free online course called "Interactive Teaching" on MOOC.
On Thursday, 27th March 2014

Center for Research and Development in Higher Education(CRDHE), The University of Tokyo(UTokyo) is launching a new free online course called "Interactive teaching" which aims at enhancing teaching ability of graduate students who want to teach in universities in the near future. This course will be available from autumn 2014 on MOOC(Massive Open Online Courseware) through gacco(http://gacco.org/) which is provided by NTT Docomo Inc. and NTT Knowledge Square Inc.

"Interactive teaching" is provided as a free contribution to society by The Division for Learning Environment and Educational Technology,CRDHE, UTokyo. This project is financially supported by Japan center for Educational Research and Innovation(JCERI).

Recently, developing universities's teaching capabilities by enhancing future professors's teaching skills has drawn the attention of major research universities. Young researchers who can not only research but can also teach effectively are needed in Japan. UTokyo, which sends out researchers to a lot of universities, has decided to provide "interactive teaching" to solve this academic problem.

The free online course "Interactive Teaching" consists of two parts : "Online course on MOOC" and "Face to face workshop".

On the online course on MOOC, people learn how to teach interactively by watching videos (9 × 10 minute videos) and discussing with other learners online and taking a short assessment quiz at the end of each week. It will take 8 weeks for learners to finish all online courses.
On the online course, in addition to the above program, learners watch a lot of academic talk sessions with Professor Naomi Miyake, Professor Yuki Honda and Associate professor Yuhei Yamauchi who have been not only doing remarkable research in each area but also teaching effectively.
These online courses on MOOC will be available for anyone including graduate school students, teachers of elementary schools to high schools and instructors who are working in corporations.

The latter "Face to face workshop" is a three day workshop conducted in Tokyo and is only available for 20 graduate school students who are eager to teach in universities in the near future. In this workshop, 20 graduate school students, who are selected from those who graduated from "Online course on MOOC, will be engaged in some group work and micro teaching(micro teaching is an organized teaching practice).

"Interactive Teaching" will provide the first "flipped classroom" style learning program related to "how to teach interactively"in Japan. The "flipped classroom" means a reversal of traditional teaching where students learn something by themselves at home, and then, in real classroom, teacher and students are engaged in intense discussion, debate and problem solving.

Those who finish all online courses on MOOC can acquire the certification from gacco. Those who finish the whole curriculum including the online course and the face to face workshop will be presented with certification.

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追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育と企業の人材マネジメントをつなごうとする「無茶?・無謀」な試みです。どうぞご笑覧下さい。

投稿者 jun : 2014年3月28日 06:12


ナントカ学に憧れて!? : 大学で学ぶこととは何か?

 今から20年近くも前の話です。まだ学部学生だった頃の僕は、「大学で学ぶこと」を少し誤解していました(今もかも!?)。
 当時の僕は、大学には「整理された知識の体系」らしきものがあって、その体系を記憶したり、駆使することが、「大学で学ぶこと」だと思っていました。

 だから、当時の僕は「ナントカ学」と名前のつくものに憧れていました。「ナントカ学」を修めること、すなわち「整理された知識の体系」を記憶し、操作することが、「大学で学ぶこと」なのかな、と漠然と思っていました。

 しかし、1年が過ぎ、2年が過ぎ、そして卒業を迎える頃には、だんだんとわかってきました。
 「ナントカ学」として「確固たる知識の体系として見えていたもの」の境界とは、常に揺れているものであり、研究者コミュニティ(あるいはナントカ学の教科書を書く研究者)の恣意的な判断によって、決まっているものだ、と。
 実際の研究は、もっともっと細分化されており、「ナントカ学」で括れるほど、一様ではないということ。そして、ナントカ学の「境界」を揺らすようなアウトプットを生み出すことが、「大学で学ぶこと」ということ意味なのかな、と。
 つまり、「ナントカ学」は決まっているようで、決まっていないものである、と。「ナントカ学」は確固たるものとして存在するようなものであり、存在しないようなものなのだ、と。

 学問領域によって相当の違いはあるでしょうから、過剰な一般化をすることは避けますが、少なくとも、僕がやってみたいと思った研究領域に関しては、そうでした。以上の話は、それをご了解のうえ、お読みください。

 しかし、そこまでわかっていても、「ナントカ学」--確固たる知識の体系らしきものに見えるものを、自分に納得のいくかたちで相対化し、かつ、一定の適当な距離をとることができるようになるまでには、それなりの時間がかかりました。僕の場合は、わりと長くて、大学院生を終えるくらいまでは、モンモンとしていた気がします。時に、アイデンティティクライシスに陥ることもあったありました。まぁ、今となっては、過去の笑い話ですが。

 大学は今、年度末を迎え、新年度、新たな学生を迎える準備で大忙しです。僕は、今、来年度の授業シラバスの文献選びをしています(助けてくれている皆さま、ありがとうございます)。
 大学で学ぶこととは、それ以前の学びと少し異なっているところがあります。4月、また新しい学生たちが、キャンパスに初々しい姿で現れるのでしょうね。そう、「ナントカ学」に憧れて・・・。

 そして人生は続く

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追伸.
3月27日、「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」が、東京大学出版会より刊行されました。大学のキャリア教育、就職・採用関係者におすすめの内容です。高等教育研究と企業の人材開発研究をつなごうとする「無茶?・無謀」な知的試みです(笑)。まだまだ残された課題は多いですが、どうぞご笑覧下さい。


投稿者 jun : 2014年3月27日 06:31


【拡散どうかお願いします!】東京大学 フューチャーファカルティプログラム、2014年夏学期募集がはじまりました!

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東大 × 学び × 革新
これから、大学の教壇にたつ、大学院生へ
東京大学 フューチャーファカルティプログラム、2014年夏学期募集がはじまりました!


  ▼

 東京大学フューチャーファカルティプログラムは、「これから大学教員を目指す、東京大学の大学院生を対象として、"大学で教えることを教える"ための全学教育プログラム」です。

 このプログラムでは、大学の教壇にたつために、最低限必要な教育技術を集中的に教え、実践することをめざします。プログラムを修了するために必要な時間数は、ミニワークショップ数時間と大学院共通科目「大学教育開発論」(栗田佳代子・中原淳)の受講です。すべてのプログラムを修了した方には、履歴書などに記載することのできる公式の履修証を交付します。

 東京大学フューチャーファカルティプログラムは、現在、東京大学全学各地で、ポスターを張っておりますので、ご覧になったかたも多いかもしれません。ばばーんと張っています。なんと、本郷三丁目の駅にも!(笑)

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 すでに授業の履修登録を開始していて、残席はかなり減ってきています。東京大学の大学院生の方で、将来、大学の教壇に立ちたい方は、ぜひお申し込み頂ければ幸いです。

 昨今の大学教員公募には、模擬授業やシラバスの提示などが要求されることもありますが、それに適応できる能力を、集中的に養うことを目的としています。カリキュラムのデザイン、授業のデザイン、ファシリテーション、シラバスライティング、教育評価の手法。コースの中では、模擬授業を相互に行う部分もあります。これらの基礎的なスキルや知識は、就職の際などに役立てることができます。

 本プログラムは、東京大学全学の大学院生を対象にしています。東京大学には、一学年で約2000人の大学院生が在籍しておりますが、本プログラムにご登録をいただければ、学問分野に依存しない「大学院生コミュニティ」に参加することもできます。授業自体がアクティブラーニングで実施されるので、異分野の大学院生同士がつながる機会にもできるでしょう。

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 将来、大学教員をめざす「大学院生のヨコのつながりができること」も、本プログラムの副次的な産物となるでしょう。講座の詳細は、下記のビデオ(暫定版)をご覧下さい。


■東京大学フューチャーファカルティプログラム説明:3分ビデオ

 また、詳細・お申し込みは下記のWebサイトをご覧下さい。
 先ほど申し上げましたとおり、東京大学フューチャーファカルティプログラムは、すでに募集を開始して、残席が少なくなっております。どうかお早めに!

東京大学フューチャーファカルティプログラムお申し込みページ
http://www.todaifd.com/event/

投稿者 jun : 2014年3月26日 09:33


親父の工具箱

 誠にどうでもいいことなのですが、子どもの頃、自分の親父の使っている「工具箱」というのが、何とも、憧れでした。
「赤くて、決して上等とはいえない普通の工具箱」だったのですが、そこに入っている道具を、親父が使って、いろんなものをつくったり、直したりしているのをみるのが好きでした。親父は口数少ない根っからの技術屋でした。何も言わず、作業をしていました。

 先だって、ちょっと前のことになりますが、自分も、そのような工具箱を準備したいと思い、東急ハンズに、工具と一緒に買いに行きました。真新しい工具箱をひとつ買いました。ドライバーや、ペンチも思い切って新調しました。

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 なぜ、突然、工具箱が欲しくなったのかはわかりません。
 我が家の棚には、真新しい工具箱と、その中の道具たちが、
 今か、今かと、出番を待っています。

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年3月25日 07:04


音楽を「聞く」だけじゃなくて、「演奏体験」してみるオーケストラ?

 三連休は、ほぼ家族で過ごしました。

「家族で過ごす」といっても、数時間、半日すら、自宅にいることはありません。我が家(僕やカミサン)は「マグロ」ですので、動いていなければ、えらに空気(水流)が入らず、死んでしまいます。ですので、「家族で過ごす」というより、正確には「家族で移動する」といったほうが正しいかもしれません(笑)。

 悪く言えば、自分の行きたいところに、子どもを連れ回す(笑)。それが我が家の子育て?です。
 ちなみに、この手の子どもイベント系チケットを、どこからともなくゲットしてくるのは、カミサンです。彼女のアンテナ力・情報力は半端ではありません。C●Aとか、KG●の諜報員並です、子どもネタに関しては。まぁ、よくいえば「子ども番組のディレクター魂」、正しく言えば、半分、「職業病」ですね(笑)。

  ▼

 昨日は、「みる・きく・さわるオーケストラ」ということで、日本フィルさんが、杉並公会堂で実施している「ワークショップ&コンサート」に家族ででかけてきました。

 このイベントは、オーケストラ・コンサートを中心にした音楽のお祭りみたいなものです。杉並公会堂の至る所で、ワークショップが実施されたり、フラッシュモブ的にコンサートが行われたりします。会場は、1100名のお客さん(子ども連れ)で満員で、大盛況でした。

 TAKUZOもバイオリン、トロンボーン、トランペットなどに挑戦して、無事?音をだすことができました。また、TAKUZO、KENZOふくめて、はじめてのオーケストラでしたので、非常に興奮して聞いておりました。興奮して聞く、というのが、ちょっとおかしな気もしますが。ともかく、このイベントは面白かったです。おすすめです。

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 先だって、日本フィルさん、同団体の山岸さんとは、坂口さんを媒介して経営学習研究所でコラボ企画をさせていただきました。

世界初!?ワークショップ「オーケストラに"聴く"プロフェショナルの学び」参加者募集!
http://www.nakahara-lab.net/blog/2013/09/post_2085.html

 日本フィルさんが、新たな顧客をつくる、将来のオーケストラファンを育成なさっている様子は、非常に応援したくなります。「学びの場をつくるオーケストラ」、何ともいいではないですか!
 また来年も、機会を見つけて出かけようと思っています。

 ありがとうございました!
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年3月24日 06:39


企業で働くビジネスパーソンの「大学時代」をさぐる:新刊「活躍する組織人の探究」(俗称:芝生本 しばふぼん)が刊行されます!!

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活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション(AMAZON)
http://ow.ly/uJuEa

 3月27日、東京大学出版会より「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」という(ガチ!)学術専門書が出版されます。主に大学のキャリアセンターの研究・関係者、就職の関係者、人事関連の研究をなさっている方で、大学ー企業の移行過程に興味がある方には、おすすめの内容です。

 本研究は、電通育英会のご支援をうけ(心より感謝です!)、京都大学の溝上慎一研究室と東大中原研究室の有志が3年くらい前から進めていたものです。
 当時、企業で働いている1000人(章によっては3000人)の振り返り調査のデータを用いて、「大学から企業・組織への適応」が、いかにして起こっているかを分析しました。高等教育研究と企業人材マネジメント研究の「香ばしい融合」?をめざしたつもりです。ダバダー(笑)。

 本書に対して、著者それぞれにいろいろな思いはあるとは思いますが、僕が、本書にかけた思いは、「育成と採用の連動」でした。僕の研究の観点なので、その視点は「企業」によってしまいますが、僕は

「育成前のプロセスを見ることで、育成のアウトカムをいかにあげることができるか?」

 を強く意識して書いたつもりです。
 一方、溝上先生はおそらく「大学のアウトカムとして企業への適応」をみていらっしゃると思います。両者の視線が交差するところが、本書の面白さ?であり猥雑さかもしれません。

 書籍の中でも書きましたが、激化する競争環境のなか、社会化(組織が新人を育成すること)に関する資源は、非常に限られたものになってきます。
 素早い社会化(Swift socialization)をめざすのであれば、社会化以外(社会化以前)のプロセスに目配りを行う必要がでてきます。
 具体的には、採用ー育成ー配置という一連の人事プロセスをいかに設計していくかが、おそらく、今後、さらに問われることになると思います。その際に、大学時代にどのような経験をしていたか?というデータは、有望なデータのひとつだと思います。
 昨今、実務の世界でも、大学の成績の厳密化の結果、もう少し大学時代の成績を採用プロセスに用いよう、という動きがはじまっています。そのような内容に少し関連する研究かと思います。
 僕たちとしては、この研究を最初の契機として「大学ー採用ー内定ー育成ー配属」を一気通貫する研究を行っていきます。僕の興味はあくまで「企業の育成」の観点からみた上記プロセスの探究ということになります。おそらく溝上さんは「高等教育のアウトカム」からみた探究をなさっていくことでしょう。
 今日・明日・あさってで、これに続く、またひとつの新しいデータセットができあがる予定です。この研究は、地道におこなっていきたいと思っています。

 本書は研究書ですので、記述は大学院レベルです。実証的な分析に加えて、「大学ー企業の移行プロセス」に関する理論に関しても言及されていますので、ご興味のある方はどうかご笑覧ください。

 ちなみに、今回の装丁は、東京大学出版会・編集者の木村素明さんの一球入魂です。有機性あふれる緑の「芝生」が印象的ですね。「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」は長いので、これからは「芝生本(しばふぼん)」とよびましょう(笑)。
 この芝生の作品は、日常ありふれたものを、抽象的なイメージに用いる写真家 安村崇さんのものです。そんじょそこらの「芝生」ではありません(笑)。
 本書がテーマにしている「大学ー企業のトランジション」も、多くの人々が経験するものですね。本書は、それをより抽象的、かつ理論的に考察しています。その本書のモティーフが、安村さんの作品に似ているところがあります。木村さん曰く、そういう意味で、「芝生本」になっちゃいました、とのことでした。木村さんの伴走には、いつも感謝しております。ありがとうございました。

 最後に「目次」と「前書き」と「後書き」を下記に転載します

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■目次
第1章 活躍する組織人の探究:大学時代の経験からのアプローチ(中原 淳)
第2章 「経営学習研究」から見た「大学時代」の意味(中原 淳)
第3章 大学時代の経験から仕事につなげる:学校から仕事へのトランジション(溝上慎一)
第4章 大学生活と仕事生活の実態を探る(河井 亨)
第5章 就職時の探究:「大学生活の重点」と「就職活動・就職後の初期キャリアの成否」の関係を中心に(木村 充)
第6章 入社・初期キャリア形成期の探究:「大学時代の人間関係」と「企業への組織適応」を中心に(舘野泰一)
第7章 初期キャリア以降の探究:「大学時代のキャリア見通し」と「企業におけるキャリアとパフォーマンス」を中心に(保田江美・溝上慎一)
第8章 総括と研究課題(中原 淳・溝上慎一)

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■前書き

 大学の卒業、そして、企業への就職 - この接続・移行空間には、様々な言説が跳梁跋扈している。それらは、ある時は共振し、別の時分には共犯関係にすら発展し、そうかと思えば鋭く相対立することもある。多種多様な「声」が、今日も、様々なステークホルダーによって、発せられている。

「大学時代の勉強など、企業に入ってから役に立たない。だから企業には白紙で入社してくればいい」
「大学は一体何をしているのだ。企業に入る前から、企業で必要になる様々な知識や能力を身につけてこさせるのが大学の責務であろう」
 という企業内部の「複数の声」。

「企業に入ってからは役に立つことしか学べないのだから、大学時代は役に立たないことこそ、学べばいいのだ」
「企業に入ってから必要になる能力を早期に獲得させ、学生の就業力を高めるのが大学の仕事であろう」
 という大学内部の「複数の声」

 多種多様な「声」が響き合う言説空間に「仁義」はない。
 拮抗しあう声、結びつく声。
 それらは、大学と企業の狭間を漂い、学生を、ステークホルダーを、今日も「翻弄」している。

 本書で筆者らは、これらの多種多様な声の存在をいったんエポケーする。
 本書が目的とすることは、「大学時代の個人の経験(意識と行動)」と「企業に参入したあとの個人のキャリア・組織行動」の二項関係を、多角的な視点から実証的に探究することにある。我々自身が取得したデータから着実に、かつ、実証的に、大学と企業という2つの機関を移行しつつ生きている個人に接近することが、本書のめざすところである。

 本書で紹介される数々の知見は、「教育機関での学習・経験 - 採用・選抜 - 組織社会化 - キャリア発達」という、今後、さらに注目が集まることが予想される「縦断研究のモティーフ」を、いわば鉛筆画のデッサンのように、粗描するだろう。
 近い将来、このモティーフのもとに、筆者らを含めた数多くの、多種多様なディシプリンを有する研究者が、彩り豊かで鮮やかな各研究知見を持ち寄り、実証的で、建設的で、未来志向的な議論が生まれることを願う。

2013年11月吉日 真夏のような暑さ残る晩秋の本郷
著者を代表して 中原 淳

 ーーー

■後書き

「企業の人材開発を研究してきた研究者」と「大学生研究を行ってきた研究者」が、お互いの専門性を持ち寄り、新たなプロジェクトを遂行する。この数年、共編著者一同で集い続けてきたプロジェクトは、最も知的にエキサイティングな時間であった。
 このプロジェクトに関係して下さった関係者の方々、貴重な時間を質問紙の回答にあててくださったビジネスパーソンのみなさま、そしてプロジェクトをファイナンシャルな側面から支援して下さった、公益財団法人 電通育英会のみなさま、アシスタントを努めて下さった中原研究室の阿部樹子さん、そして本書の編集にあたってくださった東京大学出版会の木村素明さん、営業をご担当いただいた角田光隆さん、心より感謝申し上げる次第である。

 私たちの、決して未だ完成系とはいえない知的探究は、月並みな用語で述べるならば「学際研究」と呼べるものになるのかもしれない。しかし、当然のことではあるけれど、「学際研究を第三者的に語ること」と「学際研究を自ら実践してみること」は、全く違っている。

 このたび集まった共著者は、プロジェクト当初、お互いに、それぞれの研究のコンテキストを踏まえているわけではなかった。それぞれの研究領域の常識や専門用語をまずは学ぶ必要があったし、分析のやり方なども、微妙に異なっていた。このコラボレーションに取り組んだ数年間は、そうした違いをひとつひとつ確かめ、確認しつつ、また、相互の研究領域の知見を学びつつ過ごした日々であった。この共同研究は「研究すること」が、即、「研究者自身の学び」であるプロジェクトであったように思う。

 しかし、私たちの知的探究は、いまも途上である。追加の研究余地は莫大に残されていることは否めぬ事実である。また、分析上の不備・方法論的検討の必要性も枚挙に暇がない。この広大な研究領域は、単一のディシプリンでは解決不能であるし、高等教育と企業研究の両者からの歩み寄りやアプローチが必要である。将来の若い研究者とともに、私たち自らも、この広大な研究領域のディテールを、より詳細な方法論で、描き出していくことに邁進していきたい。

 この数十年、日本企業は様々な艱難を経験してきたし、これからも、きっとするだろう。
 一方、日本の大学も法人化以降、様々な変化にさらされてきたが、おそらく、これからもそうだろう。
 本書の知的探究が、両者の連携や協力につながること、さらには、我が国の将来を支える人材の育成につながることを願い、今は筆をおく。

投稿者 jun : 2014年3月21日 07:00


「職を得るには経験が必要だけど、経験を得るには職についてなきゃならないというディレンマ」を生きる!?:大学と企業の往還型学習

 職を得るためには「業務経験」がないとだめだ
 しかし「業務経験」を得るためには
 職につかなくてはならない

   ・
   ・
   ・

 ざっくり申し上げて、欧米などの外部労働市場系の国(ざっくりしすぎですね、、、ごめんね、今、大腸検査の下剤飲みながら、この記事書いてるの。ぽんぽん痛いんです。ゆるしてください)と申しますか、何ともうしますか、そういう国で、多くの若者が直面している課題が、この「職と業務経験」をめぐるディレンマです。

 要するに、求められているのは即戦力である。
 若者が定職につくためには何らかの業務経験を有しており、こいつ、すぐに使えるな、となっていなければならない。しかし、業務経験を得るためには、何らかの職について経験をつむ必要がある。
 おいこら、一見、矛盾しとるやんけ。どないせいっちゅうねん、われ、というディレンマです(笑)。

 結論としては、そういう国では、インターンシップやら、NGOやNPOやら、様々な「就職前・職業経験プログラム」が発達するわけですが、その中に「Co operative education(コーオプ教育)」というものがあります。

   ▼

 先だって開催された山形大学の時任先生らが主宰し(感謝!)、中原研の舘野さん、木村さんらも企画してくださった研究会で、個人的に印象的だったのは、このディレンマを扱った文献でした。それが「コーオプ教育」に関するものです。興味深い文献を紹介して下さったのは、北九州市立大学の見舘先生でした(ありがとうございます!)。
 これ以降は、文献内に紹介して下さったオタワ大学のコーオプ教育の事例(Jones 2007)と、その理解だけで、危険にもものを書きます。それをご承知のうえ、お読み下さい。

 曰く、いわゆる「コーオプ教育」とは、「学生が、仕事の期間と授業の期間の間を行き来して達成される体系化かつ教育的な戦略」だそうです。ざっくり申し上げますと「大学が学生に提供する職業教育で、しかも、大学と社会を往還してなされる中長期のもの」として理解できそうです。

 ここでポイントになるのは「往還」という部分です。コーオプ教育では、「職場で学んだことを教室へ」「教室で学んだことを職場へ」ということをしっかり実現しなければならないそうです。

 では実際はどうなっているのでしょうか。
 たとえば、あるコーオプ教育では、学生から授業料とは別に650ドルをうけ、希望する学生にコーオプ教育を提供しています。大学での学びは、15回程度のキャリア開発に関する授業やコンサルティング、職業訓練を受けます。時期は年3回程度だそうです。
 職業訓練を受けた学生は、大学が提携する企業で、現場の監督者のもとで、業務経験をつみます。それを何度か繰り返し12週ー18週のプログラムを終える、という立て付けの模様です。ちなみに、サラリーは所属する学科や配属される職種によって異なるので一概にはいえないみたいですが、学生は月で2000ドル程度のサラリーを得ることもできます。腹いてー。

 見舘先生もおっしゃっていましたが、これは日本で普及しているインターンシップとは、全く別物です。たぶんもっとも違うところは、「教室と職場を往還するところ」、そして「大学が長期にわたってキャリア支援」をしており、また職場にも「監督者」が割り付けられているところでしょうか。要するに、きっちりケアをしているのですね。
 どちらかというと、「行ってこいよー! あいあいさー」的に、大学から一方向的に職場におくられる(思慮と経験のある大学はきっちり支援なさっていると思いますが)インターンシップとは、ちょっと、そこらあたりが違うようです。まことに興味深いことですね。

 ▼

 今日は、たいした詳しくもないのにコーオプ教育について書きました(笑)。でも、僕は、コーオプ教育については詳しくはないですが、以前、僕は「直接経験をめぐる闘いが激化すること」を、下記のような雑文で書いたことがあります。ここで書いているのは、職業やキャリア形成において「直接経験」をめぐる闘いが激化するであろう、という予想です。
 
経験獲得競争社会を生きる!? : 資源化・資本化する直接経験!?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaharajun/20140202-00032244/

 大学の学費とは「別」に650ドルを払う。もちろん、このカリキュラムで18週とか学んだ場合には、650ドルではおそらく費用は済まないとは思いますが(大学側の持ち出しになる)、それにしても、 

 職を得るためには「業務経験」がないとだめだ
 しかし「業務経験」を得るためには
 職につかなくてはならない

 というディレンマを生き抜くとは、そういうことなんだ、と思いました。もちろん、650ドルを払える学生とそうでない学生はいるでしょう。そこには再生産の問題が微妙にまったりとかかわってきそうです。

 日本は、今後、どういう風に向かうかわかりませんが、少なくとも、現在のシステムが綻びをみせ、新たなモデルを模索しているさなかにいるようにも思われます。
 
 腹が痛い。
 そして人生は続く

 ーーー

追伸.
ビジネスパーソンの大学時代を探る!?
3月27日、東京大学出版会より「活躍する組織人の探究:大学から企業へのトランジション」が刊行されます。主に大学のキャリアセンターの研究・関係者、就職の関係者、人事関連の研究をなさっている方で、大学ー企業の移行過程に興味がある方には、おすすめの内容です。


投稿者 jun : 2014年3月20日 05:57


「獲得系の学び」と「意味づけ系の学び」:社会人が学ぶときに起こること!?

 社会でバリバリと業務経験を積んだ方が、ふたたび、大学院にきて学ぶという場合に、典型的に見受けられるニーズとしては、僕は2つあるように思います(分野にもよるので、僕の研究領域は、という話です)。

 ひとつは「獲得系(Acquire)」。
 もうひとつは「意味づけ系(Justify)」です。「Justify」は、日本語になおすと「正当化」なのですが、ここではちょっと意味が異なるので「意味づけ系」とさせていただきます。後者のキーワードは、つい先だって勉強会をやったときにTさんが発表なさった文献にあったので、ここでも引用させていただきます。

 前者「獲得系の学び」とは文字通り、「新たな知識・スキルを学びたい」というものです。

 僕の領域でしたら、人材マネジメントの基礎知識、統計をふくむ研究方法論のスキルなどを身につける、などのことがあります。
 実際は、これらの知識・スキルを何か「教材・授業などで体系的に学ぶ」というよりは、「自分の問題関心にあった研究を通して」学んでいくことになります。少なくとも僕の研究室では。

 後者の「意味づけ系」とは、「これまでの社会人として業務経験を積み重ねてきたことが、いったい何だったのか?を発見する学び」です。日々の忙しさに追われ、様々な業務経験やプロジェクトをつみ、ここまでやってきた。で、そうした数々の経験をいったん「棚卸し」して、それを意味づけて(Justify)みたい。そのうえで、自分の軸を発見してみたい。これが「意味づけ系」です。

 実際には、これら2つは複雑に絡み合っています。「獲得」を通して、自分の業務経験を意味づける何かが見えてくる。意味が見えてくるから、さらに学ぶことができる。

 今年も4月が近づいてきました。中原研は2名の新入生を迎え、ゼミが開始されます。ゼミ長の吉村さんは入念に準備をしてくださっています。心より感謝です。今年は、どんな研究の果てに、どんな「意味」が見えてくるでしょうか?

 春、あともう少しで2014年度のはじまりです。
 そして人生は続く
 --

追伸.
 先だって、中原研から2名の博士号取得者がでました。脇本さんと舘野さんです。お二人とも、最後まで粘って、よい論文を書き上げました。審査にあたってくださった先生方には、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

投稿者 jun : 2014年3月19日 06:31


「経営層が学ぶ」とはどういうことか?:自分「だけ」学ぶのは学びではない!?

 組織・経営・学習の研究分野でもっとも進んでいない研究領域とは何か?

 こんな問いを投げかけられたら、僕は、真っ先に「経営幹部の学習研究」だと申し上げるでしょう。
 新人に関する研究、マネジャーに関する研究はめちゃくちゃある。もちろん、経営幹部の研究も「ない」わけじゃないけれど、前者2つに比べて、量は圧倒的に少なくなる傾向があります。

 先だって、ある研究会でIさんが「経営幹部の学び」に関するある英語文献(Akrofi, Clarke and Vernon 2011)を紹介してくださいました(Iさん、ありがとうございます)。

 文献の要旨はずばりワンセンテンスでいうと、

 経営幹部の学びは、「経営幹部が自ら学ぶこと」だけでは不足であり、「自社の学習環境を整備していくこと」も含まれる

 ということです。

 つまり「経営幹部の学び」とは、「経営陣だけ」が学ぶことではありません。とかく経営陣の教育というと、ラグジュアリーな椅子にすわって思想や哲学などの高尚なものを学び、経営層だけで大所高所の議論をする!?という勝手なイメージがありますが、それは貴重な機会であるものの、それだけでは不足である、と論文は指摘します。

 経営層にとって「学ぶ」とは、「自らが学ぶこと」でもありますが、それは、自社の社員の学びの環境を、自らが整備していくことをさらに含むことが大切です。
 ここで「学びの環境」とは「教室」という意味ではなく、ルール、制度、戦略すべてを含みます。つまり、「自分の組織を、従業員が挑戦意欲をもって働きつつ、結果として学びが生まれる組織にしていく」といいうことですね。

 くどいようですが、「経営層が学ぶこと」とは自分自身が学ぶことであり、「自社の社員の学びの環境を整備していくこと」です。そのふたつができて、はじめて「学んだこと」になるのです。自らも学び、他も学ぶ。そういう組織をつくりえたとき、経営者は「学んだ」ということになるのだ、というのが興味深いところです。

 ▼

 今日は、経営陣の学びに関する研究の話をしました。「分相応」というものがありますので、僕自身が経営陣の研究をするのは、まだまだ先のことかと思いますが、そこは豊穣な可能性のあるブルーオーシャンのひとつであるような気がします。

 そして人生は続く

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AMAZON「経営学・キャリア・MBA」「マネジメント・人材管理」「企業革新」の3つのカテゴリーで1位になりました!(2013年3月12日)
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投稿者 jun : 2014年3月18日 06:25


「もうひとつの生き方」をありがとう!?

takuzo_henotegami1.png

 僕は、もともと、釣りが好きではありませんでした。
 魚はヌルヌルしているし
 エサはニョロニョロしているし。
 どうも嫌でした。
 
 僕は、もともと、植物などを育てることも苦手でした。
 面倒で、つい水やりなどを忘れてしまい。
 僕には向いてないと思っていました。

 ましてや、まさか、武道など・・・。
 僕は「ど文系」です。
 今、自分が通っているのは「奇跡」に近いと思っています。

 そういえば、「英語」もそうです。
 英語を話すことは、僕にとって、挫折の繰り返しでした。
 でも、今は、、、もう一度、もう一度だけ
 チャレンジしています。

   ・
   ・
   ・

 「かつての僕」を、
 「変えて」くれたのは息子、TAKUZOです。

 息子が興味をもつものを
 僕はやってみたいと思いました。
 息子が熱意をもって語ることに
 僕は挑戦してみたくなりました。
 息子が「一緒にやろう」と声をかけてくることには
 一緒に挑みたくなりました。
 
 僕はよく思うことがあります。
 僕は、自分ひとりでは見つけられなかった人生を
 生きているな、と。

 「もうひとつの生き方」をありがとう。

 君がいるおかげで、僕は、自分一人では
 見つけられなかった自分を
 見つけることができているような気がします。

 TAKUZO 7歳。
 KENZO 0歳。

 近い将来、僕は、KENZOから何を学ぶでしょうか?
 そして人生は続く

takuzo_henotegami2.png

投稿者 jun : 2014年3月16日 22:38


自主勉強会で学んだ軌跡を振り返る!?

 僕のコンピュータには「自主研究会」というフォルダがあります。研究者が自主的に開催する研究会で配付されたレジュメや、英語文献などを格納するフォルダです。

 土日は、最先端の英語論文をみなで購読する合宿研究会なのですが、そのレジュメをつくりながら、いままでいくつの研究会に、自分が参加したり、実施したりしてきたのかを考えていました。

 「自主研究会」というフォルダには、154の個別の研究会フォルダがありました。その中には、さらにさらにフォルダがわかれていました。おそらく同じ研究会名で、複数回開催されたものがあるからでしょう。
 サブフォルダ含めて、ちょっと全貌を把握するのは難しそうですが、僕が、これまで数百回の研究会を経験してきたことは間違いないようです。

 改めてふりかえってみますと、この20年弱、学部の時代から今に至るまで、考えてみれば、僕は「研究会を通して成長してきた」ような気がします(まだまだ発展途上ですが)。
 自ら「研究会を主催することが多かった」ようにも思いますが、ときには他の研究者が主宰する研究会に参加して、最新の研究をみなで読んできました。

 そして「研究会を通して成長してきた」ということは、自分がここまできたプロセスには、他の研究者との議論や対話が多々含まれていた、ということです。確かに研究は個別に行われるものですが、そのプロセスには、たくさんの「他者」とともにあったことがわかります。心より感謝いたします。

 気づけば「人生の正午」に近づいてきました。
 しかし、自主研究会前に感じる「ワクワク感」と、研究会を出たあとの「達成感」は、学生の頃と今で、全く変わることはない、というのが不思議なことです。ま、英語を読むのはしんどいけど。目がシバシバするわ(笑)。字をもっと大きくして(笑)

eigobunken_desu.png

 僕は、まだまだ学びたいと思います。
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年3月14日 07:29


室内で「大人の砂遊び」をしよう!:人生に必要な振り返りはすべて砂場で行った!?

 最近、小生がハマっている「大人のおもちゃ」ならぬ「大人の砂場」がこちらです。キネティックサンド! 皆さん、ご存じですか?

kinetic_sand.png

 キネティックサンドは、粘土みたいだけど粘土じゃない、砂みたいだけど砂でもない。でも要するに、どどのつまり「砂」です(笑)。
 98%が砂でできていて、残りの2%の「何か!」によって、その「砂粒」は微妙にくっついて離れることがありません。

 きっと、文章でこういってもわかんないと思うので、下記の動画をご覧下さい。

)

 おわかりになりますか?(笑)
 実際に触ってみると、何ともいえない食感?じゃなかった触感で、思わず、虜になってしまう、なかなかリスキーなブツです。

 中原研には、こちらが大量常備してあります。先だって、あるワークショップ実施のために購入しました。名づけて、そのまんまですが、「大人の砂場ワークショップ」です。室内で、みんなで「砂遊び」をする、というなかなかシュールなワークショップです。
 ほら、よくいう言うじゃないですか。「人生に必要な知恵はすべて砂場で学んだ 」と。これもなかなか、ほっこりする本ですが、これからは「人生に必要な振り返りは、すべて砂場で行った!?」という時代になると思います。

 ちなみに、研究室にはたくさんの大人が今日も明日もいらっしゃいますが、皆、遊んで帰ります。

「今日は会議の最初に、砂場遊びでもしましょうか? 砂好きですか?」

 というと、皆さん、最初はびっくりします。でも、すぐに理解し、遊んでいただけます。かなりの確率でシャメります。皆さん、愉しそうです。 

 いやーそれにしても、僕は「砂」なんかにイノベーションがありうると僕は思いませんでした。しかし「室内で、手を汚さず、砂を愉しむためにはどうするか?」と考えるだけで、また新たな発想が浮かぶのですね。素晴らしい!

 そして人生は続く!

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AMAZON「経営学・キャリア・MBA」「マネジメント・人材管理」「企業革新」の3つのカテゴリーで1位になりました!(2013年3月12日)。
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投稿者 jun : 2014年3月13日 06:52


Yahoo!流「爆速」組織開発!?: 人事は現場のどんな問題に向き合い、どんな支援をしたのか?


●3月13日 午前11時50分 応募者多数につき、〆切前ではありますが、応募を締め切らせて頂きます。本当にありがとうございました!最終的な参加通知は、数日以内にメールにてお知らせさせて頂きます。

●3月12日 午後12時15分 中原研究室ブログにて掲載しました。応募者多数の場合、〆切前ではありますが、応募を締め切らせて頂きます。最終的なくれぐれもお急ぎ下さい。最終的な参加通知は、数日以内にメールにてお知らせさせて頂きます。

●3月12日 午前7時00分 中原研究室メルマガにて応募を開始しました

==================================================
NAKAHARA-LAB.NET(中原淳研究室メルマガ)
【Yahoo!流「爆速」組織開発!?:
人事は現場のどんな問題に向き合い、どんな支援をしたのか?】

KEYWORD : 組織開発 サーベイフィードバック 事業部門
新しい人事部 アクション実施 評価・フェイドアウト

4月24日(木)午後6時00分-午後9時30分くらいまで
株式会社内田洋行 東京ユビキタス協創広場 CANVAS 2F
お申し込みWEBサイト : http://goo.gl/kk1A72
==================================================

 みなさん、ご無沙汰しております、中原淳です。
 このたび、4月24日(木曜日)に、経営学習研究所のイベント
を、内田洋行さまとともに、開催させていただきことになりま
した。

 今回のイベントのテーマは

【Yahoo!流「爆速」組織開発!?:
   何を為し、何を生み出したのか?】

 です。

 ヤフー株式会社
 社長室 ピープルデベロップメント本部
 組織開発室 室長
 吉田毅さま

 を講師にお招きし、同社の組織開発に関する事例を共有させて
いただいたうえで、皆さんで、組織開発の実践とインパクトに関
する議論ができることを愉しみにしております。

 組織開発といえば、どこかで聞いたことはあるけれど、
いまいち、どのようなものかが、イメージがつかないという
方が多いのではないでしょうか。
 Yahoo!さまでは、様々な問題と格闘する事業部の方々
をクライアントに、組織開発を人事が提供し、様々な問題解決
にあたってきました。このイベントでは、その実践の概要と
インパクトについて、同社の吉田さんからお話しをいただきます。

 どうぞみなさま、お誘いあわせのうえ、お越しいただけ
ますことを願っております。

 中原 淳

 ーーー

■共催
 一般社団法人 経営学習研究所 Process Design Lab.
 http://www.mallweb.jp

 内田洋行教育総合研究所

■日時
 2014年4月24日(木)午後6時00分 - 午後9時00分まで
 開場は5時30分から

■ 会場
 株式会社内田洋行 東京ユビキタス協創広場 CANVAS 2階
 http://www.uchida.co.jp/company/showroom/canvas.html

 JR・東京メトロ八丁堀駅または東京メトロ茅場町駅下車 徒歩5分
 近隣に内田洋行様の別ビルもありますのでお間違いのないよう
 にお願いいたします。

■参加費
 お一人様4000円を申し受けます
 限定150名まで

■内容

・ウェルカムドリンク pm5:30-6:00

・オーバービュー pm6:00-6:20
「組織開発が注目されている理由」
(中原淳)

・セッション1:pm6:20-6:50
【タイトル】
「才能と情熱を解き放つ(ヤフーが取り組む組織開発)」
 吉田毅さま
【概要】
社員自らが持つ才能と情熱を最大限に引き出すことで、事業の
再成長を狙うヤフージャパン。フォロワーシップで動く"小さな"
組織づくり。あらえる時間にあらえる場所で行われる上司部下
での1on1ミーティング。"ワイルド"であることを社員に求める
ヤフーバリュー。2012年4月の経営体制刷新から約2年、新生
ヤフーが取り組む組織開発の軌跡を紹介する。


・ブレイク pm6:50-7:10

・セッション2:pm7:10-7:40
【タイトル】
「組織開発の実例(社内コンサルティングの事例紹介)」
 吉田毅さま
【概要】
数十名~数百名規模の組織に対する社内コンサルティングの実例
を通じて、組織開発の4つのプロセス"合意形成、組織診断、アク
ション実施、評価/フェードアウト"を分かりやすく紹介する。


・ブレイク&コメントタイム pm7:40-8:00

・ダイアログ pm8:00-8:30

・コメントシート de Q&A pm8:30-8:50

・ラップアップ pm8:50-9:00


■参加条件
下記の諸条件をよくお読みの上、参加申し込みください。
申し込みと同時に、諸条件についてはご承諾いただいて
いるとみなします。

1.本ワークショップの様子は、予告・許諾なく、写真・
ビデオ撮影・ストリーミング配信する可能性があります。
写真・動画は、経営学習研究所、ないしは、経営学習研究所
の企画担当理事が関与するWebサイト等の広報手段、講演資料
、書籍等に許諾なく用いられる場合があります。マスメディアによ
る取材に対しても、許諾なく提供することがあります。
参加に際しては、上記をご了承いただける方に限ります。

2.欠席の際には、お手数でもその旨、
info [あっとまーく]mallweb.jp まで(松浦李恵)
ご連絡下さい。人数多数の場合には、繰り上げで他の方に席
をお譲りいたします。

3.人数多数の場合は、抽選とさせていただきます。3月31日
までにお申し込みをいただき、4月1日には抽選結果を送信さ
せていただきます。ただし、あまりに応募が多数になった場合は、
〆切前でも、応募を締め切ります。近年、〆切前に応募を締め切ら
ざるを得ない事態が生まれています。できるだけ早く応募を行って
いただけますよう、よろしく御願いいたします。

以上、ご了承いただいた方は、下記のフォームよりお申し込みください。
なお、応募が多い場合には、〆切まえであっても、予告なく応募を
停止する可能性がございます。あしからずご了承下さい。

■お申し込みWEBサイト
http://goo.gl/kk1A72

皆様とお会いできますこと愉しみにしております!

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投稿者 jun : 2014年3月12日 12:07


「一生涯続く交代型OJT」の現場で見たもの!? : グッと堪えてトレーニング!?

 先だっては、羽田空港をお邪魔し、航空管制官の方々の仕事の現場をお邪魔させて頂きました。

kanseikan_01.png

 航空管制官は、航空機を安全に、秩序よく、効率的に誘導するお仕事です。その育成の核心は、航空保安大学校での1年の勉強のあと、現場で行われる「一生涯続くOJT」にあります。
「一生涯続くOJT」とは、少し変な言い回しかもしれません。通常、OJTは「経験の浅い時期にだけ」行われる「経験者ー経験の浅い訓練生間の発達支援関係」だと思われていますので、それが「一生涯続く」のは変といえば変です。

 しかし、航空管制官の仕事は、異動によって空港を変わるたび、また空港管制・航空管制など職域をまたぐたびに、OJTが埋め込まれています。
 要するに、異動がおこるたびに、どんなに経験者であってもまたゼロに戻り、一定期間「訓練生」として「トレイナー(Watch)さん」のもとで「学びなおさなければならない」ということです。この実地の訓練期間は1年以上にわたることもあります。

 1年以上のあいだ、経験の浅い(異動してきたばかりの)航空管制官は、「トレイナー(Watch)さん」に斜め横に立たれて、2人チームになって、仕事をしなければなりません。OJTといっても、ほぼ100%仕事そのものなのです。しかも「真横」ですよ、近!
「トレイナー(Watch)さん」は、経験の浅い管制官の後で、モニターや一挙一動を注視し、もし介入の必要があれば、カットイン(飛行機との交信をとってしまうこと)してしまいます。

 興味深いのは、経験を積みトレイナーさんとの関係を解消し、レイティング(ひとりで働ける資格)をとったあとでも、また異動があれば、その新たな赴任地で学び直さなくてはならないことです。
 僕が冒頭で「一生涯続くOJT」と申し上げたのは、それが理由です。しかも交代型。ある空港では「トレイナー」であったひとは、新たな空港にいけば、「訓練生」になるということです。時には「トレイナー(Watch)さん」と訓練生も年齢逆転を起こします。年齢の若い「トレイナー(Watch)さん」と、超ベテランの「訓練生」というペアも、十分ありえるということです。興味深いことですね。

 これまで、多くの仕事現場・人材開発の現場を見させてきましたが、このような現場ははじめてでした。まことに印象に残る現場です。

 ▼

 空港管制室で、実際のトレーニングを拝見させて頂いて、特に印象深かったことは2つです。ひとつは、管制官の仕事自体が、「強烈なマルチタスク」であることです。

 管制官は、「パイロットとのやりとり」「目視による飛行機確認(飛行場の状況確認)」「管制チームとのチームの状況確認」「レーダーなど計器への目配り」「ストリップとよばれる人工物を用いた運行状況の確認」など、多くの作業に、認知的資源を配分しつつ、仕事を達成します。その仕事の「強烈なマルチタスク」っぷりにはびっくりしました。

 かつて、たしか20年前のくらいの論文で、著者はLucy Suchman だったと思うのですが、航空管制のエスノグラフィーを書いた論文を思い出しました(違ったかな)。この光景は、状況論を研究なさっている方は、きっと好きだろうな、と思いました。

 もうひとつ印象深かったことは「トレイナー」の大変さです。もちろん、訓練生が大変なのは大変なのですが、トレーニングの光景をみていて、僕はおもわず「トレイナー」の苦労を思っていました。

 斜め横で、訓練生の一挙手一投足を見て、「このままじゃ、本当に危険になる・・・」と判断する、本当に一歩手前まで、「育成のために」黙っているのは、本当に大変だろうなと思いました。トレイナーは「自分でやっていないこと」に責任を持たなくてはならないのです。時に「カットインしたくて、したくて、たまらなくなるだろうな」と想像するのです。「もう口に出そうなものを、ぐっと堪える」というのでしょうか。訓練生も大変ですが、トレイナーのストレスも、結構だろうな、と想像しました。だって「自分がやったほうが早いから」。しかし、、、それでは訓練生は育ちませんね。まことにご苦労様です。

  ▼

 今回の取材の様子は、7月号の「人材教育」の僕の連載「学びは現場にあり」でお伝えできると思います。井上さん、吉峰さんとの珍道中?取材です。
 今回の取材では、羽田の管制官の方々、また、国土交通省の稲葉久美子さんに本当にお世話になりました。まことにありがとうございました。

 今度から飛行機に乗る度に思い出すようにします。
 僕の知らないところで、航空機を安全に飛ばすため、日夜、努力なさっている方々がいることを。その仕事は、「何事もなくてあたりまえ」であるため、あまり「表」にでることはないものであることを。そして、その現場の仕事は「育成とまさに隣り合わせ」のものであることを!

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 そして人生は続く

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Life-long OJT of Air Traffic Controllers

 Some days ago, I visited Haneda airport to observe how air traffic controllers work so as to write an article in a professional human resource development magazine.
 As you know, the purpose of air traffic control is to direct aircraft safely, provide advisory services and information to pilots in order to avoid collisions of aircrafts and maintain the flow of aircraft in the air. Their training begins in the classroom for 1 year, after that they transferred to various airports all over Japan. Although classroom training is important, the core element of human resource development of air traffic controllers is "life long OJT(On-The Job Training)" in the control tower. The term "life-long" may sound strange to you. Generally, OJT is done for short periods only when new comers enter the organization. So, when you hear the word of "life long OJT", it feels so strange.
 However, when an air traffic controller is transferred from one airport to another airport, he/she has to learn some specific knowledge of the area and its weather through OJT. Even if he/she is already a skillful and experienced air traffic controller, if he/she is transferred to another airport, he/she has to learn specific knowledge from other air traffic controllers who have worked for a long time in that area. OJT continues for one to two years.
 An air traffic controller who has been transferred from another area, and doesn't have specific knowledge of the new area, has to work with an experienced air traffic controller(Watcher) who stands beside the new comer for 1 year. The watcher has to monitor what the new air traffic controller does. If a risky situation occurs, which the new comer cannot deal with, The watcher has to break into the conversation between the newcomer and pilot and take control of the operation. The most impressive point for me is that an experienced air traffic controller has to relearn from scratch every time they are transferred to another area. His / her position is reversed. That is the reason why I use "life long OJT". If you work as a trainer in one airport and you are transferred to another airport, you will be a trainee. Sometimes the trainer - trainee age pattern is reversed. A younger experienced controller has to train an older controller who was transferred recently. I think this is the most impressive point. Generally, once a newcomer becomes a trainer, he/she does not return to a newcomer position again. However air traffic controllers need highly specific knowledge of the area and weather where they work. They have to relearn these things as a novice when they are transferred to another airport. Air traffic controllers switch roles of trainer and trainee during their whole career. That is called "life long OJT"
 Generally, when we get on an aircraft, we do not think what and how air traffic controllers work. However in order to organize and maintain the flow of aircraft, the "life long OJT" is in through, continuous use.

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追伸.
 拙著「研修開発入門」が、AMAZON「経営学・キャリア・MBA」「マネジメント・人材管理」「企業革新」の3つのカテゴリーで1位になりました!ご支援くだったみなさま、ありがとうございました。

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投稿者 jun : 2014年3月12日 06:20


「育成機会としての海外派遣」に潜むメリットとリスクとは何か!?

 若いうちに海外派遣でも経験して、「新たな視点」を身につけて帰ってこい!

  ▼

 このように実施される「育成機会としての海外派遣」には、メリットもある一方で、リスクも含まれています。

 おおよそ、人材に関係することで「メリットだけ」が存在することはあまりなく、概して「素晴らしい施策」であればあるほど「リスク」も含まれているものです。

 「育成機会としての海外派遣」の「リスク」のひとつとは、「メリット」であるはずの「新しい視点の獲得」、まさにこのことにあります。これが「行為の意図せざる結果」をもたらすといっても過言ではありません。

 端的に申し上げるであれば、確かに、海外派遣を経験した人は、たしかに「新しい視点を獲得できる」のかもしれない。
 しかし、「新しい視点」でものを見るようになった結果、「今まで自分が働いていた組織や仕事」が「全く違ったもの」に見え、「色褪せた日常」をそこに感じてしまう、可能性が高まる、ということです。
 その結果、モティベーションが一時的に下がったり、最悪の場合、辞めてしまう、ということです。そういうリスクが隣り合わせです。

 狙い通り、海外派遣は、個人に「新しい視点」をつくりだすのです。しかし、「新しい視点」とは、言うのは簡単ですが、「諸刃の剣」です。それは、知識が増えた減ったの、単純な話ではありません。
「新しい視点」は、個人の「これまで」と「慣れ親しんだ世界」を「全く違う光景」に変えてしまいます。そして、「全く違う光景」に一度見えてしまった対象は、二度と同じものに見えることはありません。「新しい視点」という、わずか5文字で語られるものは、かくのごとく、パワフルであり、リスキーです。

「新たな視点」を獲得した程度が高ければ高いほど、すなわちメリットが増せば増すほど、このリスクは高まります。獲得する新たな視点の程度が低くなればなるほど、リスクは低いですが、メリットも享受できません。すなわち、これらの諸課題はトレードオフです。

 ここで人材マネジメントの観点から、まずは勘案しなければならないことは、海外から帰ってきたあとに、どのようなキャリアを積ませることができるのかを考えることです。
 そして、帰任後には、丁寧なコミュニケーションをはかることではないかと思います。

 ▼

 今日は「育成機会としての海外派遣」の話をしました。今日の話は、だからといって「海外派遣は避けるべきだ!」と言いたいわけでは断じてありません。むしろ、その逆です。「見慣れた日常」を相対化する機会として、ぜひ、多くの若い人々には、海外に出て欲しいと僕は思います。また、僕も、その恩恵を授かった一人でした。
 しかし、その際大切なことは、もうひとつあるということです。海外派遣は「赴任」も大切ですが、「帰任後」も、また大切ですね。せっかく多額の費用をかけて海外赴任させるのですから、帰任後、その力を十全に活かすべく働きかけをなしたいものです。

 そして人生は続く


投稿者 jun : 2014年3月11日 06:54


「研修開発入門」、発売開始になりました!

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研修開発入門(AMAZON)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478027250/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4478027250&linkCode=as2&tag=nakaharalabne-22

 ついに、拙著「研修開発入門」が発売されました。6日から取次から搬送開始され、10日本日にはおそらく全国の書店に並んでいるものと思われます。研修開発入門は、「どのようにして研修を開発し、実践し、評価したらよいのか」という問いに対して徹底的に答えようとする一般書です。なるべく平易に、しかし、それでいて広がりが持てるように執筆しました。

 この本を書くにあたり「理論知」と「実践知」を徹底的に融合させることをめざします。「理論知」としては、いわゆる学習研究の知見のみならず、経営学における研修転移研究、研修評価研究の知見も融合しています。

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(こちらは研修転移研究の知見をまとめたところですね)

「実践知」としては、研修開発の実務にあたられている30名の実務家にヒアリングを実施し、ノウハウをあますところなく満載しました。これでもか、これでもか、とまことに細かいところまで実務のノウハウを満載したつもりです。ノウハウ万歳! 「たかがノウハウ」とおっしゃる方もいらっしゃるとは思いますが、徹底的に集め、整理し、コレクションにまで仕立て上げることをねらいました。取材に答えてくださった実務家のみなさま、心より感謝いたします。根堀り、葉堀り、申し訳御座いません。ありがとうございました。

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(こちらは発問−回答ークラス共有を行うときの講師の動きをまとめた部分ですね。ザ・教育技術!)

 そのまま参考に出来るワークシート、タイムスケジュール表、アンケート見本などもついていますので、どうかお役立てください。

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 ▼

 本書内にも書きましたが、本書は、ぜひお近くの方と、興味のあるところをお読みになって、対話して頂く素材にしていただければ幸いです。本書にしたためられたノウハウは、そうした対話の素材になることを願って収録されたものです。ぜひ本書には触れられていないノウハウや、自社においてはぜひ留意したいことを、多くの志あふれる方々で対話し、本書に加筆していっていただけたとしたら、うれしいことです。

 本書は「対話の素材」になることを願っています。
 そして「加筆されるため」に生まれてきました。

 そうしたプロセスを通して、何時の日か、さらに「よりよい学び」が日本全国の組織に広がっていくことを願っています。

 日本全国で、そのような対話が生まれることを心より願っております。
 そして人生は続く

(ちなみに3月10日7時現在、AMAZONでは在庫切れになっているようです(改善の御願いを出版社からしてもらっています)。リアル書店では、おそらく入荷しておりますので、どうぞよろしく御願いいたします)
 
 ーーー

追伸.
 おかげさまでAMAZON「マネジメント・人材管理」カテゴリのベストセラー1位、「企業革新」カテゴリーの1位(瞬間風速ですが、笑)を達成しました。ありがとうございます!

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研修開発入門(AMAZON)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478027250/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4478027250&linkCode=as2&tag=nakaharalabne-22

 ーーー

研修開発入門「目次」

はじめに

第1章 研修開発とは何か?

 1 はじめに
 2 人材育成とは何か
 3 人材育成・小史をたどる
 4 研修か? OJTか?
 column
 「研修で学んだことなんか、現場で役に立つか!」
 5 2000年代の研修開発──研修内製化
 6 研修内製化の副次的効果
 7 研修開発のプロセスとは何か?
 8 本書の構成
   第1章まとめ

第2章 研修企画:
ニーズを知る、学習者を分析する、同じ船に乗ってもらう

 1 はじめに
 2 ニーズの探索
 column
 「研修会社の営業マンのつぶやき」
 3 人材マネジメント施策の検討
 4 学習者の分析
 column「学習と移動」
 5 経営陣と現場トップのステークホルダー化
 column 研修の転移(Transfer)を考える
   第2章まとめ

第3章 研修のデザイン①:
課題を分割し、行動目標を立て、評価手法を考える

 1 はじめに
 2 研修の目的を決める
 3 評価の手法を考える
 column 新人研修の評価事例
 column 研修参加者向けアンケートの注意点
   第3章まとめ

第4章 研修のデザイン②:1日を組み立てる

 1 はじめに
 2 学びの原理・原則を知る(プリンシプル)
 column 研修デザインと生理的条件への配慮
 3 学習活動を組み立てる(モデリング)
 4 学習活動の流れを明示化する(タイムスケジューリング)
 column
 研修デザインに関する、よくある誤解① 「話し合いは簡単か?」
 column 研修デザインに関する、よくある誤解②
 「アクションプランを書いて終わればOK?」
  第4章まとめ

第5章 研修講師選定:教える人をいかに確保するか?

 1 はじめに
 2 社内から講師を探す
 column
 教える経験がない人が陥りがちな3つの罠
 3 社内講師育成の支援
 4 外部の研修講師に依頼する
 column
 研修会社からも見られている!?
   第5章まとめ

第6章 研修のPRと事前コミュニケーション戦略

 1 はじめに
 2 「企画段階」と「実施段階」をつなぐもの
 3 研修のPR
 4 受講者との事前コミュニケーション
 column 反転授業
 column 良い研修だけど、人が集まらない事態
   第6章まとめ

第7章 研修準備:研修直前のデザイン

 1 はじめに
 2 受付のロジスティクス
 3 学習空間のデザイン
 column 「共に食べ、共に飲む」のがコミュニティ!?
 4 研修ツールを準備する
 5 事務局の役割──「内職事務局」から「支援する事務局」へ
   第7章まとめ

第8章 研修実施:「教えること」の技法① オープニング編

 1 はじめに
 2 プロービング
 3 自己紹介
 4 モチベーションの管理
 5 学びの契約をする
 6 サプライズをつくる
   第8章まとめ

第9章 研修実施:「教えること」の技法② メインアクティビティ編

 1 はじめに
 2 教材(プレゼンテーション)づくりの技法
 column 研修満足度を高める配布資料
 column プレゼンテーションや配布資料における著作権
 3 教えることの身体技法
 column 人前で話すPublic Speakingの技術
 column 緊張しないようにするには
 4 板書のテクニック
 5 指名・質疑のテクニック
 6 話し合いのテクニック
 column マネジャーはグループディスカッションができない?
 column グループワークの効能
 column アクティブラーニング手法
 7 時間管理のテクニック
 8 アウトプットのテクニック
 column
 TKFモデル:創って(T)、語って(K)、振り返る(F)
 column
 リアルタイムで実施される遠隔研修
   第9章まとめ

第10章 研修実施:「教えること」の技法③ クロージング編

 1 はじめに
 2 クロージングのテクニック
 column
 逆戻り予防のワクチンを打っておく
 3 こんなときどうする?研修のトラブルシューティング
 column
 グループワークやディスカッションを破壊する9人の困った人々
 column
異業種交流研修の流行
   第10章まとめ

第11章 研修フォローとレポーティング

 1 はじめに
 2 研修後のアクションリスト
 3 経営陣や現場トップへのレポーティング
 4 研修開発のノウハウを継承する
 column 「刺激」「感銘」「メウロコ」「モヤモヤ」
   第11章まとめ

第12章 人材開発のプロとして、いかに学ぶか

 1 はじめに
 2 本を読む
 3 教育コースで学ぶ
 4 Webメディア・リアルイベントで学ぶ
 5 経営学習研究所のイベントに参加する


おわりに

索引

投稿者 jun : 2014年3月10日 07:12


大学3年生から社会人2年目までの変化を追う!?

 研究室の大学院生有志と今年から取り組んでいるプロジェクトの調査がはじまりました。2010年に大学3年生だった方に対する追跡調査(縦断調査)です。

 人生いろいろなので、一概にはいえませんが、これらの方々が無事に組織に就職・就業していれば、2014年には組織に入って2年目になります。今回の調査では、この2地点間に起こった出来事の諸関係を明らかにしていきたいと思っています。

 たとえば、どのような就職活動をしたのか。どのような採用施策に出会ったのか。内定後はどのような教育を受けたのか。そして、組織に参入したときには、どのような経験をしたのか。そして組織に入って2年目、今、どのような状態なのか。
 この3年間の移行プロセス(トランジション)に起こった様々な出来事の諸関係をさぐるのが、本調査の目的です。

 しかしながら、縦断調査というのは、本当に難しいです。
 わたしの研究領域のトップジャーナルで用いられているデータは(例えば、Academy of Managementでもいいですけれども)、最近、縦断データが多くなっているのですが、データを得るのも本当にコストがかかります。

 まず、質問紙は多様。人生いろいろなので、中原研の有志とつくった質問紙の種類は4種類です。これをつくるのが大変。その後は、データを得るのも大変。たとえば4年前に1300名のデータをとれていたとします。4年たつと、このうち400人くらいは連絡がとれません。さらに、ここから回答していただける方というと、7割くらいになります。ということは、多くて600名くらい方々のデータが入手可能となります。さらにデータをスクリーニングしていけば、さらにデータは減るでしょう。データセットをつくってからも分析は混迷を深めます・・・南無。

 しかし、貴重な時間をいただいてお答え頂いた方のためにも、しっかりと大学院生らとともに分析していきたいと思っています。これらの知見は、研究室の院生らと分析し、本にまとめる予定です。 今回は、電通育英会様、そして京都大学・溝上慎一先生の研究室とのコラボということで、こうした調査が実現しました。心より感謝しております。

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年3月 7日 08:04


「言挙げせぬ国」の「グローバル化対応」とは何か? : 「阿吽」「察し」「背中」を考える!?

「グローバリゼーションとか、グローバル化いかに対応するか」というトピックは、様々な識者が、それこそ口角泡とばして議論していることですので、専門が異なる僕としては、これ以上、あまり申し上げることはありません。

 そうした外部環境の変化に対して、我が国の組織や、組織のメンバーがどのように対応しうるのか。様々な答えがあるんだと思います。

 しかし、個人的には、グローバル化と拮抗するような、日本の文化(価値観)として、3つ考え直さなければならないものがあると思います。それは「阿吽」「察し」「背中」です。

「阿吽(あうん)」とは「阿吽の呼吸」。すなわち複数の人物が、全く「言葉で申し合わせていない」のに、自ずと、呼吸まで合わせるように同調していく様子ですね。

「察し」とは「言葉にしなくても」複数人の人が気遣える様子。そして、「背中」とは言うまでもなく「背中をみて学ぶ」です。それは「言葉を用いることなく、相手の様子を見て、学ぶ」ということでしょうか。

 要するに、何が言いたいかというと、日本の文化(日本人が魅了される価値観)とは、「一つひとつ言挙げしないということ」のように思えるのです。

 協働するときでも「阿吽」。コミュニケーションは「察し」。そして教え、学ぶときには「察し」という具合に、高文脈文化を背景に、「言挙げすることを避ける」。こういうコミュニケーションパターンが、わたしたちのメンタリティに深く埋め込まれているように感じます。それがいいとか、悪いとかいいたいわけではありません。

 しかし、グローバル化に対応するというのは、僕個人の意見では、「一つひとつ言葉を尽くして説明して、納得解を得ること」に思えます。そうしたものにこれまで以上に時間的コスト、精神的コストをかけることのように思うのです。ひと言でいうなら、グローバル化に対応するとは「言葉を尽くすこと」のように思えます。

 だって、グローバル化すれば、異質なものとつきあい、それらが出入りすることとつきあわざるをえないのですから。そこにはお互いが寄って立つコンテキストはないですから。

 それは、はっきりいって「めんどくさい」し、なんだか「あっぱくさい」し、どこか「水くさい」。少なくとも、僕にはそんな風に感じます。

 でも、一方で、異質なものが入ってくる、そうしたものとつきあう、というのは、寄って立つコンテキストを、とりあえずは「シェア」できていない意味において、そういうことなんだろうな、と思います。

 ▼

 今日の話は、詳細はオープンにはできませんが、全く「人ごと」ではありません。大学も、急速な勢いで、この流れの中にあります。
 自分たちのメンタリティの中に深く埋め込まれたルーツを大切にしつつも、もはや、覚悟を決めるほかはありません。こういう問題は、四の五の議論していても仕方がありません。「腹をくくる」か、「逃げるか」、それとも「オルタナティブを提案する」か。選択肢は3つです。

 そして人生は続く。

投稿者 jun : 2014年3月 6日 07:27


研修で学んだことの「何パ−セント」が仕事の現場で活かされるのか!?、その促進要因とは何か?

 組織の中で実施される研修の転移(Transfer)に関する研究会に参加するため、早朝からレジュメをつくっていました。

 今回の研究会で、僕が担当するのは、「研修転移研究のオーバービュー」を研究会冒頭に行うことと(言い出しっぺなので・・・)、「研修評価は研修転移を促進するのか?」という英語論文の報告です。
今日になるまで放置していた僕が悪いのですが、レジュメ2本は、なかなかキツイものがあります。でも、何とか完成しましたので、今はホッとしています。今回研究会をサポートして下さっている中原研OBの関根さんに、これでようやく、どうどうと、お逢いすることができます(心より感謝!)。

  ▼

 僕が読んだ2本目の論文は、なかなか面白いものでした。
 この論文で言いたいことは、著者に便所スリッパで後頭部を殴られそうですが、1行で要約しちゃいますと(笑)

 「研修で学んだ内容」を仕事で役立ててもらうためには(研修転移を増す)、研修評価の頻度を増したり、評価のレベルを深くすりゃいいんだよ

 ということです。細かい分析をしていますが、要するにこういうこと(笑)。具体的には、「仕事の現場でどのように行動が変わりましたか?」みたいな行動レベルの評価やチェックを行っていかないと、研修で学んだ内容は仕事の現場で実践されませんよ、ということですね。

 ▼

 一般に「研修の評価」とは「研修プログラム」の質向上のために行われますが、それだけでは片手オチです。研修の評価とは、研修を受けた本人に、研修で学んだ内容をリマインド手段でもありますし、さらにはマネジャーなど、研修に関連するステークホルダーへの情報提供の機会にもなります。
 そうした「現場への情報提供機会」を上げていかなければ、「研修で学んだ内容は、仕事で役立ててもらえないよ」ということが、本論文の言いたいことです。ここまで要約していいのかどうか知りませんが。

 このような研究が成立する背景には、いかに「研修で学んだことが、いかに仕事の現場で役立てられないか」ということに関する深い危惧があるからでしょう。ある研修転移研究では、

 研修で学んだことの60%から90%は仕事には応用されない(Phillips and Phillips 2002)
 
 といいます。90%は少し極端な知見かもしれません。
 このレイトは低いものから高いものまで、各種の研究がありますので、一概にはいえません。しかし、だいたい下記のようなレンジが、人材開発の研究者の一般的見解に近いのではないか、という感じがいたします。まぁ、半分くらい?

 研修直後には学んだことの62%が仕事に活かされる。しかし、6ヶ月たつと44%になり、一年経つと34%になる(Saks 2002)。

 どないなもんでしょうか。
 まぁ、直感的には半分いけばスゴイな、という印象ですが・・・。

  ▼

 貴重な時間と労力をかけて研修を実施するのなら、それが実践されることを望みたいものです。
 本研究会では、それに関する様々な研究知見を学んでいきたいと思います。この研究会には、東京のみならず、日本全国から人が集まります。また、研究者のみならず、各社で実務を担当なさっている方や、学生も(中には学部生も!)、多数参加してくださるそうです。
 銀行とか、メーカーとか、普通の会社におつとめの方が、英語文献購読を行う、こんな研究会に参加してくださるというのは、素晴らしいことだと思います。

 明日を楽しみにしています。
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2014年3月 5日 07:02


仕事をためてすみません

 今日のブログは「言い訳エントリー」です。のっけから謝っちゃいますが、誠に申し訳ございません。今、僕のところで、あらゆる仕事が「たまって」いますね(泣)。某編集者からは【も~やば~いで~です!!】というタイトルのメールがくる始末。まことにカタジケナイ。このままじゃ、原稿落ちますね。すみません。今日こそ絶対に、やりきりますので、どうかお許し下さい。

 ここまで追い込まれたのは久しぶりなのでございます。精一杯仕事はしているのですが、こなしては、あらたな仕事が舞い降り(泣)、やりおわれば、次の仕事が降臨するのでございます。

 今日は1日、ひたすら、溜まっているものを消化することだけに費やします。今日の僕は、自分が考えても、ちょっと怖い。きっと研究室で「てめー、今、声かけんじゃーねーオーラ」をだしているような気がします。

 というわけで、あんまり長いブログ記事を書いていると、「仕事をせい!」と言われそうなので、このくらいにしておきます。

 きっと明日はある

投稿者 jun : 2014年3月 4日 07:18


「研修開発入門:会社で教える、競争優位をつくる」が刊行されます!

 拙著「研修開発入門」が、3月6日、ダイヤモンド社より刊行されます。AMAZONや書店では、すでに予約がはじまっております。どうぞご興味がおありの方は、手にとっていただけますと幸いです。

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研修開発入門(AMAZON)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478027250/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4478027250&linkCode=as2&tag=nakaharalabne-22

 「研修開発入門」は、企業内部で研修を企画・立案し、自社に最もフィットした研修を実施・評価していく方のために執筆された入門書です。2006年に出版した「企業内人材育成入門」(ダイヤモンド社)の実践編として、これからはじめて研修企画・運営・実施・評価をなさるの方にお読み頂けるように執筆したつもりです。「企業内人材育成入門」が「理論編」であるなら、「研修開発入門」は「実践編」となります。

  ▼

 本書は「研修」に関する「サイエンス」と「実践知」の混成体です。
 サイエンスとして参考にしたのは、組織論(人材開発研究)の中の諸研究(研修デザイン研究、研修評価研究、研修転移研究)等の知見、教授デザインに関する研究の知見です。それらをふんだんに集め、最新の知見を、なるべくわかりやすく反映することにつとめました。
 しかし、研修開発の実務は、サイエンスの知見だけで語りうるものではありません。むしろサイエンスで語り得ることは、それほど多くはありません。それらを語りうるには、現場で発揮される実践知がどうしても必要です。
 よって、「研修開発の実践知」を抽出するため、僕は「企業教育関係者の実践知」を集めることにしました。本書を執筆するにあたり、筆者は、研修実務を担当する実務家30名に定性的なヒアリングを行い、その実践知を収集することにつとめました。御協力いただきました企業の人材育成・人材開発関係者の皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
 本書は、これらをうまく編集・構成しなおし、テクストに編み直しています。全360ページのかなり長大な本になりました。

 ただ、一般向けの本なので、なるべく平易に書いたつもりです。
 イラストを多用したり・・・

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 そのままお使い頂けるアンケートの事例やワークシートらしきもの?もいれたりもしています。

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 もちろん、玄人さん向けに、脚注はかなり充実しています。専門書などの紹介は、すべて脚注に寄せています。

  ▼

 構想からはじまると3年にわたる旅が終わりました。編集で側方支援をいただいたダイヤモンド社の間杉さん、人材開発部のみなさま、そして、構成をご担当いただいた井上佐保子さんに、心より感謝いたします。ご興味のおありのみなさま、どうかご笑覧下さい。

 そして人生は続く
 下記が目次となります

 ーーー

はじめに

第1章 研修開発とは何か?

 1 はじめに
 2 人材育成とは何か
 3 人材育成・小史をたどる
 4 研修か? OJTか?
 column
 「研修で学んだことなんか、現場で役に立つか!」
 5 2000年代の研修開発──研修内製化
 6 研修内製化の副次的効果
 7 研修開発のプロセスとは何か?
 8 本書の構成
   第1章まとめ

第2章 研修企画:
ニーズを知る、学習者を分析する、同じ船に乗ってもらう

 1 はじめに
 2 ニーズの探索
 column
 「研修会社の営業マンのつぶやき」
 3 人材マネジメント施策の検討
 4 学習者の分析
 column「学習と移動」
 5 経営陣と現場トップのステークホルダー化
 column 研修の転移(Transfer)を考える
   第2章まとめ

第3章 研修のデザイン①:
課題を分割し、行動目標を立て、評価手法を考える

 1 はじめに
 2 研修の目的を決める
 3 評価の手法を考える
 column 新人研修の評価事例
 column 研修参加者向けアンケートの注意点
   第3章まとめ

第4章 研修のデザイン②:1日を組み立てる

 1 はじめに
 2 学びの原理・原則を知る(プリンシプル)
 column 研修デザインと生理的条件への配慮
 3 学習活動を組み立てる(モデリング)
 4 学習活動の流れを明示化する(タイムスケジューリング)
 column
 研修デザインに関する、よくある誤解① 「話し合いは簡単か?」
 column 研修デザインに関する、よくある誤解②
 「アクションプランを書いて終わればOK?」
  第4章まとめ

第5章 研修講師選定:教える人をいかに確保するか?

 1 はじめに
 2 社内から講師を探す
 column
 教える経験がない人が陥りがちな3つの罠
 3 社内講師育成の支援
 4 外部の研修講師に依頼する
 column
 研修会社からも見られている!?
   第5章まとめ

第6章 研修のPRと事前コミュニケーション戦略

 1 はじめに
 2 「企画段階」と「実施段階」をつなぐもの
 3 研修のPR
 4 受講者との事前コミュニケーション
 column 反転授業
 column 良い研修だけど、人が集まらない事態
   第6章まとめ

第7章 研修準備:研修直前のデザイン

 1 はじめに
 2 受付のロジスティクス
 3 学習空間のデザイン
 column 「共に食べ、共に飲む」のがコミュニティ!?
 4 研修ツールを準備する
 5 事務局の役割──「内職事務局」から「支援する事務局」へ
   第7章まとめ

第8章 研修実施:「教えること」の技法① オープニング編

 1 はじめに
 2 プロービング
 3 自己紹介
 4 モチベーションの管理
 5 学びの契約をする
 6 サプライズをつくる
   第8章まとめ

第9章 研修実施:「教えること」の技法② メインアクティビティ編

 1 はじめに
 2 教材(プレゼンテーション)づくりの技法
 column 研修満足度を高める配布資料
 column プレゼンテーションや配布資料における著作権
 3 教えることの身体技法
 column 人前で話すPublic Speakingの技術
 column 緊張しないようにするには
 4 板書のテクニック
 5 指名・質疑のテクニック
 6 話し合いのテクニック
 column マネジャーはグループディスカッションができない?
 column グループワークの効能
 column アクティブラーニング手法
 7 時間管理のテクニック
 8 アウトプットのテクニック
 column
 TKFモデル:創って(T)、語って(K)、振り返る(F)
 column
 リアルタイムで実施される遠隔研修
   第9章まとめ

第10章 研修実施:「教えること」の技法③ クロージング編

 1 はじめに
 2 クロージングのテクニック
 column
 逆戻り予防のワクチンを打っておく
 3 こんなときどうする?研修のトラブルシューティング
 column
 グループワークやディスカッションを破壊する9人の困った人々
 column
異業種交流研修の流行
   第10章まとめ

第11章 研修フォローとレポーティング

 1 はじめに
 2 研修後のアクションリスト
 3 経営陣や現場トップへのレポーティング
 4 研修開発のノウハウを継承する
 column 「刺激」「感銘」「メウロコ」「モヤモヤ」
   第11章まとめ

第12章 人材開発のプロとして、いかに学ぶか

 1 はじめに
 2 本を読む
 3 教育コースで学ぶ
 4 Webメディア・リアルイベントで学ぶ
 5 経営学習研究所のイベントに参加する


おわりに

索引

 ーーー

 ーーー

おまけ:英語版(笑)

My latest book "How to Develop Training Programs" will be released from Diamond Publishing Inc on 6th March. You can pre-order it on Amazon and at bookstores. If you are interested in developing training, please take one and read it!

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研修開発入門(AMAZON)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478027250/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4478027250&linkCode=as2&tag=nakaharalabne-22

"How to Develop Training Programs" is written for beginners and people who want to attain a wider understanding of planning, designing, delivering and evaluating training. Also this book covers how to train the trainers. "How to Develop Training Programs" is a sequel to "The introduction of human resource development" that was published in 2006. "The introduction of human resource development" covered all kinds of theory related to this area. The new book is more practical. Readers can attain practical know-how of how to develop programs.

  ▼
This book is a mixture of science and practice. In order to write this book, I have quoted many research findings and also many interviews with experts. From the scientific viewpoint, many prior research of training designing, evaluation, transfer are discussed in this book. I've made effort to pick up as many as possible, introduce them and what they imply in simple language.
However, planning, designing and delivering training is practice. Generally, there are huge gaps between theory and practice. Science is very valuable and but fundamental. it cannot cope with all areas of practice. In order to discuss the practice, we must have practical experience. In order to collect practical experience related to developing training, I have interviewed 30 people who work in human resource development divisions and freelance instructors. I really appreciate all the people who have given their valuable time to me. In such a way, I have combined science and practice and tailored one text.
 This is an introductory book. I have used as many illustrations and figures as possible as follows:

kenshu_1.jpg

 I have used many samples of worksheets and evaluation forms that readers can use.

kenshu_2.jpg

 Of course, I have provided many citations and data in footnotes for professionals who want to know more.
Three years have passed since I began to write this book. I really appreciate editors Toshihiko Masugi and Sawako Inoue. If you have interest in human resource development, please read it and make some comment for me. My life goes on...

投稿者 jun : 2014年3月 2日 17:36