【御協力・RT・シェア拡散お願い】「現場マネジャーの抱えるディレンマ」を絶賛募集中!:えーい、どないせーちゅうねん系悶絶ディレンマ、あなたの周りにございませんか?

【悶絶系ディレンマ絶賛募集中!】
 皆さんの抱えているディレンマをぜひ教えていただけませんか?

 のっけからお願いで恐縮なのですが、今日は、少しだけ、皆様にお願いがございます。実は、僕とヤフー株式会社執行役員の本間浩輔さんの共著で、光文社さんから新書を出す計画をしています。

 何の本か、と申しますと、

 「現場マネジャーの抱える、ひとにまつわるディレンマ」

 の本なのです。

 ディレンマとは「どっちを選んでも、メリットもデメリットもあるような2つの選択肢を前にして、それでも、どちらかを決めなければならない状況」ですね。ワンワードで述べるならば、「あっちがたてば、こっちがたたない」てこと? 「にっちも、さっちも、どうにも、こうにも、ブルドック?」古い?(笑い)

 先に述べましたように、おおよそ、組織の中のことで、人にまつわることには、様々な「ディレンマ」がつきまといます。かつて、ある学者は、マネジメントの本質を「ディレンマのやりくり」とかきました。組織の中の現場のマネジャーは、人にまつわることで、様々なディレンマを抱えているはずです。

 たとえば部下育成に関しては、「コーチングとティーチングのディレンマ」というのがございますね。
 ものの本を読むと「コーチング」が重要だと聞くけれど、部下に試してみたら、「自分のやりたいことばかり話して、職場の方を向かない」。とはいえ、「ティーチング的」に指示をしてみたら、こんどは「やらされ感」に苛まれ、どうもしっくりこない。

 えーい、どないせっちゅうねん!
 こんな経験、皆さんにはおありですか?

 たとえば、マネジャー自身のキャリアにまつわるものとしては「実務担当者とマネジャーのディレンマ」というものもございます。
 30歳を過ぎて、ひとかどの仕事を、きちんとこなせるようになってきたけれど、このまま実務担当者で居続けるのがよいのか? 実務担当者でいてもいいんだけど、年を重ねて今のままの成果が出せるかは不安。それともマネジャーへの昇進へのキャリアをとるのがよいのか。マネジャーになったら、人を管理しなければならないけど、自分は仕事は好きだけど、人は嫌い。

 えーい、どないせっちゅうねん!
 こんなとき、皆さんならどうなさいますか?

 たとえば、人事という観点でいえば、採用にまつわるものとして「新卒採用と中途採用のディレンマ」というのもございます。
 新卒をとって白紙から育成してコミットメントを高めるのが人事戦略としてベターなのか。でも、新卒を育成するのは大量のコストがかかる。それとも即戦力を期待して中途採用者を求めるのがよいのか?でも、もうすでに色がついている中途は、思ったよりも成果がでないこともある。

 えーい、どないせっちゅうねん!
 こんなとき、皆さんならどうなさいますか?

   ▼

 私たちの本では、こうした「人にまつわるディレンマ」「現場のマネジャーの抱えるディレンマ」を数多く取り上げ、それぞれに対して実務家ならどのように捉えるのか。アカデミックには、どのように考えるのかを論じていきたいと思っています。
 本を読んだ方が、一回、ディレンマの背後にひそむ問題を把握したうえで、最終的には、読後に「どちらに決めること」を支援させていただく本になったとしたら、とても嬉しいことです。

 私たちは、ディレンマを前に、行き当たりばったりで、適当に、どちらかにコミットすることは許されていません。とはいえ、ディレンマを前に立ち尽くすことも許されていません。そう、ディレンマは、必ず、いつかは「どちらかを選ばなくてはならない」のです。

 敢えて循環論的に述べるのであれば、わたしたちは、日々、下記のようなディレンママネージングモデルをくるくると動かさなくてはなりません。

 1.ディレンマへの出会い
 2.ディレンマの理解
 3.意志決定
 4.リフレクション

 本書が、多くの人々の抱えるディレンマに、なんらかの前向きな答えをだすお手伝いができたとしたらうれしいことです。

  ▼

 そこで、皆様に、もし可能でしたら、お願いがございます。わたしたち自身も、最近、ディレンマ収集を行っているのですが、著者だけでは少し思考に偏りがあり、限界があるように思います。

 そこで、皆様には、みなさまの周りにある、また皆様が経験したことのあるディレンマを、わたしたちにお寄せ頂けないでしょうか?

 お寄せいただいたディレンマは、すべてを本に載せることはできませんが、収集分類したうえで、本書のテーマにあうもの+共通なテーマだと思われるものを、本書、ないしは、このブログなど著者に関連する講演等で取り上げさせていただきたいと思っています。
 またお寄せ頂いたディレンマは、匿名で表示させていただき、また、、またクレジット表示はいたしません。恐れ入りますが、著作権等も放棄をお願いいたします。著作人格権の主張もどうか、お控えください。

 上記をご理解いただいたうえで、ぜひ、御協力いただけるという方は、どうか、皆さんのお近くにある「現場マネジャーの抱えるディレンマ」「人にまつわるディレンマ」をお寄せいただけますれば幸いです。

 形式は下記のフォームの該当箇所を埋めて頂けますと幸いです。

1.「   A    」と「    B     」のディレンマ
2.どんな出来事があったのか? どのように対応なさったのか?
3.氏名(任意:匿名でも可能)
4.メアド(任意:匿名でも可能)

 の入力をお願いいたします。
 フォームは下記となります!

【悶絶ディレンマ絶賛募集中!:2月17日まで】
現場マネジャーの抱えるディレンマをお寄せ下さい!

https://docs.google.com/forms/d/1noCTFwdMa0o0P9YJK_8YIOBHXbMI-LUnlMynK0SAVhw/viewform

 皆様の御協力どうかお待ちしております。皆様の抱えるディレンマに根ざした本、地に足がついた本をつくりたいと願っています。
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2015年1月28日 12:40


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サーベイフィードバックと対話による「教員研修」!? : 地方に広がる「若手教員の大量採用」にどうそなえるか?

「経験10年未満のメンバーが56%を超える専門職組織」で、誰もが通ったことのある「身近な組織」といったらなんでしょう?

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 答えは「学校」です。それも一部の都市部の小中学校。

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 昨日は、いわゆる「Y校」で、年に一度恒例の風物誌的イベント?に登壇させていただきました。

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 「Y校」とは横浜商業高校のこと(先日、この高校をY校とよぶことを知りました!)。風物誌的イベントとは、横浜全市の10年次の先生方と、副校長先生ら、約1000人が一同に会して行われる「人材育成フォーラム」です。
 年に一度の「人材育成フォーラム」は、「調査と研修をつなげることをめざした我々の研究活動」の重要な機会です。

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 この経緯は少し長くなります。

 僕は「学校教育現場の研究」は、今は全く行っていないのですが、4年前ちょっとした縁がきっかけで、横浜市教育委員会さまの教員育成プロジェクトにかかわらせていただくことになりました。先ほど述べましたように、一部の都市部のしかも小中学校は、団塊世代の退職+中堅教員の少なさにより、経験の浅い教員が、学校全体の50%を上回るような状況がここ数年続いています。

 少ない中堅・ベテラン教員で、いかに経験の浅い教員を支えていくか。
 今から5年前ほど前、このことに関心をお持ちになり、拙著「職場学習論」をお読み頂いた横浜市教育委員会の前田崇司さん(横浜市教育委員会事務局・北部学校教育事務所 指導主事室)が、研究室を訪れ、プロジェクトがスタートすることになりました。


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 プロジェクトは2段構えです。
 まず第一に、横浜市教育委員会の先生方、そして研究室の脇本さん(元・東大・特任助教)、教育学研究科・勝野先生の研究室の町支さんらと一緒に、

1.1年次、2年次、3年次、5年次、10年次の横浜市の先生方に対する質問紙調査

2.人材育成に熱心ないくつかの学校への訪問調査

 をさせていただきました。

 そのうえで、ここで出てきた数々のデータ、知見、事例をすべてミックスして、研修に仕立て上げ、同市の研修内容の一部(主に10年次研修の一部3時間)を僕たちで担わせて頂くことになりました。

 研修内容は、

 ミドル教員として、経験のあさい教員を支える学校づくりに、どのような貢献をしていただけるか?

 を考えていただくことですね。

 研修は「講義式」「座学」を極力廃し、「対話型」にしました。数字やデータは「対話のきっかけ」となるように提供させて頂きました。
 勘の良い方ならおわかりですが、これは企業・組織開発でいわれるところの、いわゆる「サーベイフィードバック」の考え方の一部を、教員研修に導入させていただいたことになります。

 このブログでは、これまでにも何回か、同市の教員研修の話題を書かせて頂いたことがあります。

数字を「お返し」し、物語を「紡ぐ」10年経験者研修
http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/07/1011410_123510n500100010_10_10.html

「他人の育成」を手がけることで「自分の能力」を伸ばすこと
http://www.nakahara-lab.net/2014/01/post_2165.html

 メンバーの町支君もブログを書いているようなので、ここで紹介いたします。

教育委員会という「現場」:メンターチームプロジェクトから
http://ow.ly/I364h

 ここで最大のポイントは、ここでお返しする調査のデータが、他ならぬ、自分たちの学校の、自分たちの若手の先生方、ないしは、「自分たちのデータである」ということです。
 どこかの市に住む誰かが答えたものではない、まして、お役所が提供したデータではない。自分たちのデータだからこそ、当事者意識が生まれ、また自分の学校の様子を考えることができます。

 こうしたサーベイフィードバックは、これまでいくつかの企業研究で、僕は行ったことがありました。が、教員ではやったことがなかったので、試みてみることにしました。

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 夏の10年次研修では、サーベイをフィードバックしつつ、自分たちの学校の様子を振り返り、今後半年間に、ミドルリーダーとして学校づくりにどのような貢献をするかを決めます。
 先日、Y校で行われた「人材育成フォーラム」は、その発表の場であり、選抜された小学校・中学校・高校の先生が、それぞれの学校づくりの様子を1000人の方々に向けてお話しをしていただきました。
 ご発表いただく先生方には、プレゼンテーションをTED風にしていただくことをお願いしました(笑)。なぜTEDか?は、確たる理由も根拠もないのですが、何事も、遊び心です。やったことがないことにチャレンジしていただくのがよいでしょう?

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 ここに10年次の先生だけでなく、管理職の先生にもご参加頂いているのは、ミドルリーダーが動くための環境を、管理職の先生にも作って頂きたいと教委の方が考えているためだと思っています。

 人材育成フォーラムにかかわらせていただくのは、僕は、今年で4年目ですが、年々、先生方のご発表は、洗練されていっているように感じます。ご参加頂いた先生方、心より感謝いたします。

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 今日の話は、横浜市の話でしたが、

 若手教員の大量採用+支える中堅・ベテラン教員の減少

 は、これから地方中核都市にどんどんと「進行」することがわかっています。これまでは、大都市圏の限られた場所、「課題先進地」での問題であったものが、日本全国の問題になっていくのです。

 今後、僕自身は、教員研究を行っていくことはないですが、次世代の研究者である脇本さんや町支さんが、この問題を扱っていくそうです。春には、彼らが編著者(僕は監修のみ引き受けました)となった専門書も、北大路書房様から出版されます。編集者の奥野さんとのお仕事です。

 もちろん、企業と学校は「全く違う組織」であり、それを一緒くたにすると「暴挙」はできません。これは学校の内側も、外側の世界をも、垣間見たことのある自分だからこそ、絶対にそう思います。しかし、企業研究で培われた、「研究の方法論」は、時に学校研究にも役立てることができるのではないかと感じています。役立てる、と言えなくても、ヒントにすることはできるのではないでしょうか?

 教員研究を行っていく若い世代が、ぜひ、多くのチャレンジをしてくれることを願っています。最後になりますが、このフォーラムでは、横浜市教育委員会の田中磨理子さん、安冨江理さんに大変お世話になりました。心より感謝いたします。ありがとうございました。

 そして人生は続く

投稿者 jun : 2015年1月28日 06:55


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「盛り上がったけど思考停止しているワークショップ」と「沈黙しているけどダバダーと深く学んでいるワークショップ」!?

 研修やワークショップなどを実施した際、その様子を「語りうる言葉」の問題について、ちょっと前になりますが、ある方と議論になりました。たしか、研修の効果測定での議論だったように記憶しています。こんなしょーもないことに対して、ぐだぐだと議論しているのは、僕のまわりくらいだけかもしれませんが(笑)、別に暇人なわけではありません。いたって真面目なのでございます(笑)。

  ▼

 研修やワークショップなどを実施したあとで、その様子を語りうる場合、もっともよく用いられる言葉というのは、

「めちゃめちゃ、盛り上がりましたよ」
「いまいち、盛り上がりにかけましたね」

 というものですね(笑)。いわゆる、ひとつの「盛り上がり度」です(笑)。

 人は何を見て、その研修やらワークショップやらを「盛り上がっている」と意味づけるのか、というRQ(リサーチクエスチョン)も、これまた味わい深いのですが、今は、それについては触れないようにしましょう。

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 もっとも興味深いのは、「盛り上がっている」という研修・ワークショップ状況の記述は、研修やワークショップの「プロセスを語る言葉」であって、「成果を保障していないという事実です。仮に、それらの成果を、受講生が「考えること」「行動を変えること」におくならば。

 たとえば、

「わーわーと盛り上がったけど、誰一人、問題については、まともに考えちゃいない」

 とか

「めちゃめちゃ盛り上がったけれど、ひとっこ一人、行動をかえていない場」

 というのは存在しうるということになります。

 反対に

「みな沈黙しているのに、しかしそれでいて個人の頭の中は、まったりとディープラーニングしている、ダバダーなワークショップ」

 とか(意味不明)

「盛り上がりは今ひとつかけるが、そこに参加している個人が、考え込み、行動を変えるきっかけになる場」

 いうのも存在するかもしれません。
 つまり、「ものを考える」「行動を変える」という軸は、「盛り上がる」という軸とは直交し、様々な可能性の象限をつくりうるということになります。
「盛り上がっているけど、成果はシオシオのパー」とか「盛り上がっていないけど、渋く成果を生み出している場」というのは存在し得ます。
 しかし、ややこしいのは、「盛り上がっている」というものが、もし学習者同士の相互作用の頻度であるならば、それは、第三者が外的に観察可能ですが、後者の「考えている」とか「行動を変える」というものは、その時点で外的に観察可能なことではありません。それは「個人の内部にある潜在的な要因」であるか、「未来にひらかれている要因」ですので、その時点での研修を語りうる言葉としては、やや不足があります。まぁ、帯に短し、たすきに流し、という状況なのかもしれませんね。

 ▼

 今日は「研修・ワークショップが盛り上がること」ついて書きました。もちろん「えぐるように盛り下がる」よりは「そこそこ盛り上がった」方がいいような気もしますけれども。

 そして人生は続く
 

投稿者 jun : 2015年1月27日 09:39


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若手・見習いの「下積み・下働き生活」とは本当に妥当なのか?:「最近の若手が育たない!」と口にする前に一瞬考えてみたいこと!?

「昔は、"コテをもたせないという教育方法"だったんですね。とにかく、若い子には、"コテを持たせない"で、長いあいだ下働きをさせた。それが"教育"だったんです」

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 先だって、人事専門誌「人材教育」さんの取材で、文京区にある原田左官工業所さんを訪問させていただきました。「中原淳の学びは現場にあり!」という取材でのご訪問です。

原田左官工業所
http://www.haradasakan.co.jp/

 原田左官さんは、独自の職人教育で注目されている企業です。同社では、原田宗亮社長から、同社の人材育成について、貴重な話を伺い、また、同社の2名の職人さんたちに壁塗りトレーニングの実演とお話を伺うことができました。

kotewo_motaseru.png

 お忙しいところ貴重な時間をくださったみなさまに、この場を借りて御礼申し上げます。また、今回の仕事は、例のごとく、井上佐保子(学び続けるライターさん)と編集者の西川敦子さんとのお仕事です。お二人ともお疲れさまでした。

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「コテをもたせないという教育方法」の脱却。
 同社の人材開発の方針は、原田社長のお言葉を借りてワンワードで申し上げますと「コテを持たせない教育方法」から「コテを持たせる教育方法」に「変えた」ということです。

 かつて、左官職人さんたちの人材開発とは、他の職人の育成同様、職場に入った見習い職人が、実際に"コテをもって壁を塗らせる"というところに至るまで数年の時間をかけるものでした。

 左官の仕事をワンワードで述べますと、「コテを使って壁を塗ること」です。であるのに、「コテを持たせない教育方法」というのは、非常に奇妙に一瞬きこえるのですが、そうしたものが実際に一般的であったということです。
 若い見習い職人には、コテを持ち壁を塗らせる練習をするまえに「壁に塗る材料」を混ぜさせたり、道具の準備をさせたり、とにかく「コテをもたせず」数年過ごさせ、それでも、ついてくるなら、

「じゃあ、そろそろ、おまえ塗ってみるか?」

 ということになった。
 もちろん、それは全く不条理であったわけではなく、昔は「材料」があまり安定的で良質ではなかったため、左官の作業に占める「材料作り」の役割は、今よりも大切であった。だから、若手にそれを任せるのは、それなりの意味があったかもしれない。しかし、今は材料も安定し、以前よりも少ない苦労で材料はつくることができる。若手育成をめぐる状況は大きく変わってしまった。それなのに、見習いの育成システムとはあまり変化がないのだとしたら、そのあたりは問題かもしれない。
 このあたりは、別に職人教育だけでなくても、様々な仕事の現場において、今も存在していそうですね。

 ともかく、左官の業界では、そうした徒弟制を眼目とした職人教育が、従来一般的であったといいます。
 これに対して、原田左官さんでは、ビデオによるモデリング(模倣)を積極的に職人教育に取り入れます。
 まず、日本でもっとも尊敬されるといわれる左官職人の塗り壁の様子を、徹底的にビデオで学び、「模倣」させます。その上で、社屋の一部に設置されたトレーニングスペースで、若い職人にすぐにコテをもたせて、べニア1枚分の壁に土を塗る作業を繰り返しやらせます。1時間で20回安定して、壁を塗ることができるようになった頃に、このトレーニングは終了です。あとは、「現場での教育」に接続させます。

 もっとも興味深いのは、こうしたモデリングのプロセスで、若い見習い職人さんたちが、身につけているものが「壁を塗るスキル」ではない、ということです。正しくは「壁を塗るスキル」ももちろん身につけるんだろうけど、それが大切なのではない。

 原田さんの言葉を借りれば、モデリングで身につけるのは、

 「現場に入ったときに、職人から学び、模倣する目を身につける」

 だといいます。
 いくらコテを持たせて、トレーニングスペースで修行をさせても、やはり、壁塗りのもっとも大切なところは、「現場」にいかなければ学べない。
 しかし、従来のやり方で、いきなり現場に放り込んでも、若手は、様々にいる現場の職人の仕事のやり方に翻弄されてしまう。
 また「見て、学べ」とか「模倣して、学べ」といっても、「学ぶべき視点」や「模倣する視点」を若手はもっていない。だから、まず「学ぶための目」「模倣するための目」をトレーニングで養う、というのです。

 かくして、このようにして現場にいった若者にはどのように変化が生まれるか。原田さんによりますと、「粒が揃うようになる」そして「スピードが増す」のだといいます。
 従来は、勘のいい子は現場にいって、すぐに技を憶えられるが、そうじゃない子は10年たっても、あまり上達しなかった。それが、この方法を取り入れてからは、多くの見習い職人さんたちが、一定のクオリティで、安定的に仕事を覚えられるようになった。また、そこに至るまでのスピードも、非常に速くなったといいます。経営に与える影響は非常に大きいそうです。
 もちろんこの方法も万能ではありません。たとえば、早期にコテを持たせることによって、「一人前になった」かのような錯覚をもってしまい、それ以上、研鑽をつまない若手が生まれる可能性はゼロではない。しかし、メリットとデメリットを天秤にのせて合理的に考えた場合、メリットの方が大きいと思われます。

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 ふりかえって考えてみると、面白いことが2つあります。
 
 ひとつは、従来の徒弟制、職人教育で、たとえば、最近の若い者が育たないという場合、その教育方法は妥当なものでったのか、ということです。
「最近の若手が育たない」と述べるまえに、「育てるやり方」が妥当なものであったのか、ということを振り返る視点がぜひ必要です。特に「下積み生活での不条理な待遇」「下働き生活での破天荒な扱い」は、ともすれば、それを経て一人前になった人にとって、ロマンを感じやすく、自ら、それを無反省に再生産しやすい。
 要するに、

 「オレも、これで一人前になったんだから、オマエもこのやり方でOKだろ」
 
 となりやすいですし、

 最悪の場合には、
 
 「オレも、若い頃はヒドイ目にあわされたんだから、今度は、オマエも味わえ」

 となりやすいということです。
 このことは、先だって、僕のブログ記事でも問題にしました。

「背中」と「現場」と「ガンバリズム」に甘える国ニッポン!?:人材開発の未来を考える
http://www.nakahara-lab.net/blog/2015/01/post_2340.html

 もうひとつは、この原田さんの視点は、他の業界でも指摘されているということです。
 実は、このやり方は、まったく業種業界は違いますけれども、TBSさんにお邪魔したときに、アナウンサーの教育担当者の清水大輔アナウンサーがおっしゃっていたことに、非常に似ています。

 TBSのアナウンス教育でまず重視されていたのは、「目を養うこと」ではなく、「耳を養うこと」。左官さんの場合は「目」ということになるのでしょうけれど、アナウンサーの場合は、大切なのは「耳」ということになります。「耳を養うこと」ができなければ、自分の発声を、自らチェックしながら、さらに先に学ぶことができないからです。

自分の「耳」を養うのです!? : アナウンサーの「学びの現場」を取材させていただきました!
http://www.nakahara-lab.net/2014/05/post_2229.html

 左官とアナウンサー教育!全く業種、業界が違いながら、育成の考え方が非常に似ているのは、なかなか面白いですよね。

 以前に申し上げましたが、この連載「学びは現場にあり」は、ダイヤモンドさん×人材教育さんのコラボで「ダイヤモンドオンライン」で、近いうちに、その記事が無料公開されるそうです。どうぞお楽しみに。
 また、これらの過去の取材記事は、来年には、ダイヤモンドさんにて書籍化も予定されています。こちらは間杉俊彦さん、井上佐保子さんとのお仕事になりそうです。

 重ねて、どうぞお楽しみに!
 そして人生は続く

投稿者 jun : 2015年1月26日 08:51


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