公務員の人材開発:管理職のなり手が「枯渇」する!?

 先だって、東京23区の、ある区長さんと人事関係者の方が、研究室に来られました。ご縁があって、僕の著書をお読み頂いたようで、一度、某区における職員の人材育成のあり方、人材開発の問題点を相談させて欲しい、とのご要望でした。

 僕は、「公務員の人材育成」は研究したことはないのですが、いろいろなご縁からのご紹介でしたので、ご相談をお引き受けし、ディスカッションをさせていただきました。

 曰く、

【全般】
 ・住民のニーズが多様化し、高品質のサービスが求められている
 ・業務量が増えている

【中堅】
 ・シニア世代の大量退職が迫っている
 ・30代ー40代の中間管理職が不足している
 ・管理職にはなりたがらない
 ・中間管理職不足を埋めるために、民間企業の退職者を中途採用している
 ・中途採用した民間企業退職者のなかには定着に難がある方もいる

【若手】
 ・若手を大量採用している
 ・経験の浅い10年未満の職員が職員の約半数になっている

【人材開発】
 ・OJTと目標管理は形式的には存在しているもののWORKしているとは言いがたい
 ・多忙なため管理職が研修に極端なほど「後ろ向き」
 ・エース級を育てようにも管理職はエースを出さない

 だいたい伺った問題点はこんな感じでしょうか。

 この課題、どっかで聞いたような気もするし、デジャブ感がありませんか?
 ていうか、日本全体の組織に、以外と「共通」する話題じゃない?

 当日は、そんなに時間がなかったので、このような状況を、まず「放置」して5年たった場合のワーストシナリオは何かをだしあっていきました。まずは敢えて「暗い方」から(笑)

 お話を伺っていて、僕個人が、もっとも深刻だと感じたのは、5年間何もせず放置しておけば、

「管理職のなり手が枯渇し、本来管理職にしてはいけない人まで管理職にしなければならなくなること」

 だと僕は感じました。要するに「選抜が機能しない」ないしは「選抜が無効化する」ということです。

 これは僕の信念ですが、

「管理職にしてはいけない人」を管理職に登用した場合に現場にもたらされる悲劇と、その対処のために組織や個人が支払わなければならないコストの総計は、「管理職を育てるコスト」の100倍である

 と思います。

 その上で、十分な時間がとれたとは言えませんでしたが、どこがレバレッジポイント(最初にてこをいれる場所)になるかをディスカッションさせていただきました。

 今後は、まずはすべての人事データ、現場のデータを分析し、正確にどのような施策を打っていくかを考えて頂くことをおすすめいたしました。
 
 時間も限られていたので、十分ではなかったとは思いますが、区長さんたちは研究室をあとにされました。まことにお疲れ様でした。

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「会社組織の研究」だけで手一杯なので、僕が「公務員の研究」をすることはおそらくはありません。
 ですが、お話しを伺っていると、これも「日本の人材育成の社会課題のひとつ」なのかな、という思いがしてきます。きょうの話が、どの程度一般性のあることなのかは、僕にはわかりません。

 門外漢なので、様々な研究や実践がすでに存在しているのかどうかわかりませんが、この領域にも、さらに「現場にかえる調査研究」と、「ワクワクするような実践」が必要であると、思いました。

 そして人生はつづく

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