「アクティブラーニングの教育論」から「アクティブラーニングの組織論」へ

 昨日、僕の所属する研究部門で行っている調査研究のひとつである「マナビラボプロジェクト」が、ひとつの調査報告書を公開させていただきました。

 マナビラボプロジェクトは、

 1.高校のアクティブ・ラーニングの実態を把握すること
 2.高校での学びがより、さらに生き生きしたものになること

 をお手伝いさせて頂くプロジェクトです。
 このプロジェクトは、日本教育研究イノベーションセンター様から多大なるご寄付をたまわり遂行させていただいているプロジェクトです。この場を借りて、心より感謝いたします。

 このプロジェクトに際しての、中原含め研究員たちの思いは、こちらにございますので、ぜひご覧下さい。

マナビラボとは
http://manabilab.jp/aboutus

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 ところで、研究員の木村充さんが中心になって執筆した昨日公開の報告書では(お疲れ様でした!)、ひとつ、僕たちらしい分析もありました。組織、社会関係といった観点から、学校というものを見つめる、ということです。

 よく、巷では、アクティブ・ラーニングといいますと、

 いかに授業をするか?
 どんな話しあいをさせるか?
 いかにファシリテーションをさせるか?

 ということが問題になりますが、今回の報告書では、僕たちは

 アクティブラーニングを実施できている「組織」とはどんな組織か?

 にスポットライトをあてています。

 ワンセンテンスでいえば、

 「アクティブラーニングの教育論」

 だけではなく

 「アクティブラーニングの組織論」

 を論じることを手がけようとしています。

 もちろん、分析は、まだはじまったばかりですので、それほど詳細を見られているわけではないのですが、下記のようなことがわかっています。
 全国の高等学校約3983校のうち、62%にあたる2414校を対象にした全国調査の結果、アクティブラーニングと学校の関係は下記のようなことがわかりました。

infographics_06.png

引用:木村充, 山辺恵理子, 中原淳 (2015). 東京大学−日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究 高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査: 第二次報告書.

 要約すれば、アクティブラーニング(参加型学習)を実施している学校は、実施していない学校と比べて、目標意識、教員間の仕組みなどに違いがあるということでしょうか。

「学校全体」で、教えるべき内容や方法について目標を決めたり、評価改善をしたり、そうしたものに一致団結したり、校長先生がそういう仕組みをつくるかどうかに、違いがあるということです。
面白くないですか? 僕は面白い。
これまで「教育方法は教科の専権事項!」と見なされてきたきらいがあります。高校のなかには、「教科の壁」というものが存在し、学校全体の議論がなかなか難しいところも少なくない、と聞きます。
アクティブラーニングは、それをこえ、学校のなかで、いかに教育内容について話しあい、合意をとるかどうかが問われるような気がいたします。

 詳細は下記のサイトでご覧下さい。

マナビラボ:全国調査分析結果 第二報
http://manabilab.jp/article/1158/6

 こちらでは無料で報告書がダウンロードできますし、ここで用いられている図版などは引用を行って下されば、ご自身のパワーポイントなどで用いることができます。

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 マナビラボプロジェクトは、今後、さらなる分析を行いつつ、2年目には追跡調査を企画しています。この研究の成果は、北大路書房さんから研究書として今年度中に出版させて頂く予定です(編集者は奥野さんです)。

 どうぞお楽しみに!
 そして人生はつづく