「あの人、声がでかいので何とかしてください」を真に受けてOKか?:人材開発か、それとも、組織開発か?

 人材開発の世界でもっとも難しいことのひとつに、

 介入(はたらきかけ)の単位を何にするか?

 という問題があります。

 介入の単位とは「外的から働きかけようとする対象」が個人であるのか、組織であるのか、というものです。

 結論から申し上げますが、これを考えるためには、

 今、本当に起こっている「問題」は何なのか?

 をじっくり観察したうえで、その真因をさぐる必要があります。

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 たとえば、今、あなたが人材開発の専門家だとして、一緒に仕事をしているあるチームがクライアントだとします。
 たとえば、そのなかのひとりが、こんな風にうったえているとします。

 リーダーのAさんは、「声」が大きいので何とかしてください

 この問いに対して

 あー、そうだね、Aさんは、たしかに声が大きくて、自分の言いたいことばかりいっていて、傾聴できないね。何とかしなきゃね。。。

 として、Aさんに外的に働きかけたとすればーたとえばコーチングをするなどしてーこれは、「個人」を対象にした働きかけを行ったことになります。

 問題は個人が有していて、
 それに対処するには
 個人を対象にした開発手段(いわゆる人材開発手法)を
 選択する

 ということです。

 しかし、賢明な読者のみなさんは、ここで立ち止まらなくてはなりません。

 リーダーのAさんは、「声」が大きいので何とかしてください

 という訴えは、「本当に本当のこと」なのかを観察し、考察する必要があります。

 いや、待てよ。リーダーのAさんが、「声」を大きくしたいのではなく、やむをえず「声」を張り上げなければならないのかもしれない。このチームは、関係が悪くて、Aさん以外のメンバーが声を出せないのかもしれない

 こう考えてAさん以外の人、ないしは、Aさんを含めたチーム全体に働きかけたとすれば、それは「組織」を対象にした働きかけをしたことになります。

 問題は組織が有していて、
 それに対処するには
 組織を対象にした開発手段を
 選択する

 ということになります。
 こういう考え方をとる働きかけを、いわゆる「組織開発」と呼んだりします。

 だから、人材開発も、組織開発も、実は「別々のこと」では全くなく、つながっているというのが僕の考えです。
 それは「働きかけ」の対象を何とみなすかの差から生じるものである、という説明もできるのかな、と思います。

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 今日は「働きかけ」のお話をしました。やや「授業」のようになってしまいましたが、朝っぱらからすみません。

 あなたは何を問題だと「見なして」いますか?

 そして人生はつづく