上司の仕事は「30度」をつくること!? : 「組織の矢印」と「部下の矢印」をすり合わせる!?

「組織としてやらなければならないこと」と「部下本人がやりたいこと」ーこれが重なると本当によいのですが、実際、それがぴったり重なることは非常に「希」です。というよりも、それが「重なること」を思うのは「夢想」かもしれない、と思うほどです。

 ここで必要になってくるのが、上司の「目標咀嚼行動」です。
 目標咀嚼行動というのは、要するに、「組織としてやらなければならないこと」を部下本人につたえ、本人と話し合うことで「組織としてやらなければならないこと」というベクトルと「部下本人がやりたいこと」というベクトルーすなわち2つのベクトルの角度を、少しずつすこしずつ、小さくしていくことのように思います。
 仕事の方向性への「理解をうながす」「説得する」「腹におとす」といえば、そうもいえるのでしょう。専門用語風にいえば「センスメイキング(意味形成)」ということになるのではないかと思います。

 このことを、図示してみると下図のようになります。
 今、仮に「組織のベクトル」と「部下のベクトル」というものがあるのだとします。最初1では、2つのベクトルは120度くらいの角度で、開きがある。まぁ、要するに部下の方向性は「あさって方向」に向いている。

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 それを2では、上司の目標咀嚼行動によって、45度くらいにまで調整しています。ふぅ。
 そして、ここは何とかふんばって、膝詰めで話しあい、3では30度くらいにしている。ふぅ。

 そして、ここで問題になってくるのは、この2つの拮抗するベクトルの角度を何度くらいにするまで努力するべきか、ということでしょう。「目標咀嚼」や「センスメイキング」といえば、聞こえはよいのですが、要するに時間がかかる。 ぴったり重なることはないにせよ、何度くらいまで角度を小さくするまでコストをかければよいのかは、人によって、持論が違うんだろうな、と思うのです。

 これに関しては、先だって、トーマツイノベーションさんとの共同研究の打ち合わせで、その実験をしてみました。「思い切り仕事だけをぶんなげた場合」と「目標咀嚼をした場合」で、どのくらい時間がかわるのか。同社の渡辺健太さん、長谷川弘実さんが即興劇でつくったスクリプトを2条件間で比較してみると、だいたい目標咀嚼をした場合の方が、1.3倍くらいでした。この時間を長いとみるか、短いとみるか。
(このところよくお逢いしている、あれっ、そうだ、今日もお逢いするけど、同社の渡辺さんと長谷川さんの上司ー部下の即興劇コントは、ぜひ、多くの人々に見て頂きたいですね。あー、いるいる、という感じで、まことに見事です)

 さて、皆さんなら、何度くらいまでもっていきますか?

 ちなみに、現在、本間浩輔さんと書かせて頂いている本で(編集は樋口さん、構成は秋山さん、感謝です!)、これについても議論が進みました。その場の議論では、

 「上司の仕事は、30度をつくること」

 というのが大勢の意見でした。まぁ、そんなもんだよね、と僕も思います。
 個人がやりたい仕事と組織がめざす方向は、重なるわけはない。でも、45度じゃ広すぎる。10度ー20度まで角度を小さくするまでは時間がかけられない。30度くらいかなぁ。

 皆さんでしたら、この問題をどうとらえますか?
 何度にするまで部下への目標咀嚼をしますか?
 それには、どの程度、時間をかけますか?

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 今日は、角度・ベクトルというメタファを用いながら、上司の管理行動を考えてみました。まぁ、メタファはメタファであり、それ以上でも以下でもないのですが、こうして喩えてみると、一見とっつきにくい、上司の管理行動が見えてくるような気も致します。

 そして人生はつづく