「二つの合理性」が衝突する「面談場面」の研究

 実現するかどうかは別にして、最近、やってみたいなと思っている研究に「面談研究」があります。取り組んでみたいのは、ワンセンテンスで申し上げますと、

「上司ー部下の面談に関する生々しい研究」

 です。

 上司ー部下が1対1で対面する「面談」というのは、一般には「ブラックボックス」ですね。ここをかなりを掘り下げていかないとな、という思いがあります。

 結局は、仕事を任せることに関しても、フィードバックをするに関しても、多くは、「ブラックボックス」の中で行われているからです。ここが解明されると、かなり面白いことになるのではないかと思っているのです。

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 これまでにも「面談」にかんしては、様々な研究がありました。もっとも多いのは、質問紙を使う研究で、面談場面にしている行動や発言を上司や部下に問います。

 要するに、

 あなたは面談では・・・・している?
 あなたの上司は面談中・・・している?

 と問う研究です。そうした研究でも、多くのことがわかっています。
 
 あるいは数は少ないものの、シミュレーション研究というものも存在します。仮想の面談場面を想定し、仮想の部下役に対して、上司役の人が面談を行います。そこでなされる発言や行動と、成果変数の関係をみます。この場合、仮想データではあるものの、客観的な面談場面を定性的に見ることができます。

 しかし、今現在で僕がやりたいのは、そのどちらでもありません。実際のリアルビジネスの面談場面のデータを用いて、「生々しい研究」がしたいのです。もちろん、これを実現するためには、ものすごくたくさんの困難があります。クリアしなければならない倫理的問題などがあるでしょう。課題は山積ですが、どこかで研究を試みたいものです。

(面談研究といえば、昔の研究でいえば、Cicourel & Kitsuseの研究を思い出してしまいますねぇ・・・僕の場合は、ちょっと毛色が違いますけれども・・・)

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 ここ最近、シミュレーション面談場面の見学をさせてもらったりする機会をいただいております(この場で社名をあげることはいたしませんが、心より感謝いたします!)。

 面談等を見学させて頂いてかえすがえすも思うのは、

 上司・部下の面談とは「2つの合理性の衝突」である

 ということです。

 特に、「期待値に達していなかったこと」を通告し、そこからの立て直しをはかる「スパイシーな面談」になれば、その「合理性のぶつかりあい」は激しいものです。

 映画「羅生門」ではありませんが、全く同じひとつの出来事でも、立場がかわれば、そこで何が起こっているかに関する描写は異なってくるものです。
(羅生門アプローチという言葉がございますね・・・)

 上司は「部下の出来事や成果に対する自分の見立て」を語ります。もちろん、それだけでは情報量や不足するので「チームリーダーの見立て」「顧客の見立て」も含みこみつつ、部下の理解を求めます。

 しかし、部下も「彼の合理性」を語ります。ある出来事や成果に対する「仕事の理由」はもちろん「健康の理由」「顧客の理由」「家族の理由」など、様々な「理由づけ」を語ります。

 複数の「見立て」に対して、複数の「理由づけ」。
 それぞれの立場が、それぞれの立場からすれば「合理的な物語」を為しています。さすれば、これをいかに解きほぐし、ひとつの「解釈」をつくりあげるか。

 「2つの合理性」の衝突をいかに「ひとつの解釈」に結びつけ得るかが、僕の知りたいことです。

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 今日は、朝っぱらから新たな研究のアイデアを語りました。

 今年は40になり、そろそろやりたいことが尽きてくるかな、と思っていたのですが、まったく逆です。やりたいことしかありません。

 どこかでこちらを実現したいものです。
 そして人生はつづく