ヒアリングで「リアルなストーリー」を得るために

 先日、ある企業の方々の協力を得て、ラインで奮闘するマネジャーの方々を訪問させていただき、それぞれ1時間程度、お話をうかがう機会を得ました。貴重な時間、および、アレンジメントをありがとうございました。心より感謝いたします。

 この日に伺った話は、非常に「具体的」かつ「生々しく」、かつ、示唆にとむもので、その結果は、この後、「この企業とのプロジェクト」に反映していきたいと思っているのですが、その最中、ひとつ気がついたことがありました。

 それは「ビジネスパーソンとのヒアリングの際、話を具体的にするコツ」です。

  ▼

 この日の話は、なぜ、「具体的」になったかを、あらためて考えますと、それは、この企業の方々が、機転をきかせて、ヒアリング対象者であるマネジャーの方々の職場の「組織図」をお持ち頂いたからなのです。組織図には、職場のメンバーのひとりひとりの氏名や年次等が記載されてありました。

 その結果、この日のヒアリングは、マネジャーの方々に対して、僕が、この「組織図」を指さして、お話しすることができました。

 そうしますと、あたりまえなのですが、話は、いっきに「一般論」ではなくなるわけです。

 たとえば、一般的なヒアリングでは

「部下の方々には、どのように仕事をふっていますか?」

 という問いが、あるとしますね。
 これが「組織図こみの会話」ということになりますと、

「(あなたの職場の)入社3年以内の従業員の方ということになりますと、Aさんがいますね。Aさんは、どういう方ですか? Aさんの育成で、気になるエピソードはありますか?」

 という風に、会話がいっきに「固有名詞による会話・ストーリー」になります。
 こうなれば、しめたもので、続く会話は

「いや、Aさんは・・・なところがあるので、この仕事は、まだ無理で。そういう意味では、Bさんにフォローしてもらって、それでも無理なら、僕が入ろうかな、と思っているんですよね。そういえば、こないだ・・・な出来事があったね・・・あのときは」

 という風に、具体的かつ社会的状況に根ざした情報やストーリーを伺うことができます。

「Aさんね、、、そうなんだよな。この子は・・・なところがあるから、リーダーにすえると、いいかなと思ってたんだよね・・・でも、ちょっと以前に失敗をしちゃってね・・・」

 こんな風に、その日は、マネジャーがいつも考えている思考、あるいは、実践知により近いようなお話、職場で起こった出来事のストーリーを伺うことができました。

 ▼

「組織図」をポインティングしながらのヒアリングで得た情報は、学術的にどのように位置づけられるのかは議論が分かれるところでしょうが、しばらく、このやり方を試行してみたいな、と感じています。

「現場で起こった固有名詞によるストーリー」を定性的にすくい、時に定量的な調査を行う。そうした2つの情報から、多角的かつ重層的に、経営学習論を描きたいと考えています。

 そして人生は続く