あなたの支援は「Helpful help」ですか、それとも「Unhelpful help」ですか?

 この世は、Unhelpful help(他人を助けようと思ってなされているものの、全く助けになっていない支援)に満ちあふれている!

 こう喝破したのは、「Helping」を上梓した組織行動論の泰斗「エドガー・シャイン」です。昨日の授業では、金井壽宏先生から「支援」という概念について、サーバントリーダーシップとからめて、ご講義をいただきました。「支援」は、僕自身の研究に、最も関連が深い概念のひとつであったので、非常に興味深く聴かせて頂きました。ありがとうございました。

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 私たちは、支援という言葉を安易に使います。
 しかし、言うまでもなく「支援」というものは本当に難しいものです。

 小橋(2000)によれば

「支援とは、何らかの意図をもった他者の行為に対する働きかけであり、その意図を理解しつつ、行為の質を維持・改善する一連のアクションのことをいい、最終的な他者のエンパワーメントをはかること」

 であるとされています。

 このセンテンスを下位分解していくと、支援の難しさがおわかりいただけると思います。

1.「何らかの意図をもった他者」というくだりから読みとける支援の難しさ

1−1.意図を持たぬ他者は支援できない。ゆえに、そういう他者をまずは探さなくてはならない
1−2.相手の意図を聴かなくてはならない。しかし、多くの場合、相手は意図を意識していないので、それを対話の果てに見いださなくてはならない
1−3.相手の意図を理解しなくてはならない
 
 
2.「行為の質を維持・改善する一連のアクション」というくだりから読みとける支援の難しさ
2−1.動くのは「支援される側」であり、支援する側が動いてはいけない。支援される側が動き出すのを待たなければならない。あるいは動き出すことを自ずと促さなくてはならない。
2−2.どのような支援をすれば行為の質が改善するかを理解していなければならない。
2−3.行為の質を改善する、支援のレパートリー(アクションや介入の種類)を、たくさんもっていなくてはならない。自分の引き出しをたくさんもっていなければならない。


3.「最終的な他者のエンパワーメントをはかること」というくだりから読み解ける支援の難しさ
3−1.他者をエンパワーする、モティヴェーターでなければならない
3−2.最終的には支援は解除され、独り立ちさせなければならない
3−3.「ショートケーキのイチゴ」を食べてはいけない。最終的な便益の享受は、支援される側になくてはならない。

 うーん、難しいよね。
 つーか、難しい。

 どれもこれも難しいんだけど、特に、僕なんかは1−2が難しい。つまり、「聴く」ということです。

「聴くこと」には、時間も必要だし、精神的余裕も必要だと思うんです。でも、ついつい、支援の根本原理である「What can I do for you?」という発想を忘れてしまい、しゃべくり倒してしまうか、「要するに、一言でいうと、何なの?」「ワンワードで言うと、何なの?」と言ってしまいます。困ったなぁ、、、、自分の提供している支援が、Unhelpful helpになっているんじゃないかなぁ、と思いました。

 あなたの提供しているHelpは、Helpful helpですか?
 それとも
 Unhelpful helpですか?

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■2010年8月3日 中原のTwitterタイムライン

  • 22:04  RT @akikomura: @nakaharajun 今日は頑張って事前に課題を読んだお陰で、文字で整理されたプロセスコンサルテーションの知識に加えて、ライブならではの金井先生のパワーを感じることが出来、非常に印象に残るセッションでした。
  • 22:02  RT @torunrun_summer: 訂正。7章でしたnrun_summer: この本の4章では、「私の履歴書」をテキストマイニングで分析されてます。http://amzn.to/ddZNHx RT 日本経済新聞「わたしの履歴書」には、「関係性」に関する記述が多いらしい。
  • 22:00  RT @turuge: 一見関係なさそうな言葉をくっつけて物語をつくる「面ジャン」という遊びを松本人志さんが以前やってましたね RT @YukiAnzai 一見矛盾した言葉を組み合わせた言葉をオキシモロン(矛盾語法)。「創造のヒント」がある #creativity
  • 22:00  やべぇーー。猛ダッシュ。
  • 15:02  日本経済新聞「わたしの履歴書」には、「関係性」に関する記述が多いらしい。個人のキャリア発達は、社会的脈絡(Social nexus)の中に位置付いている。
  • 14:37  GEジャックウェルチのリーダーシップ持論。1.Energy(自分が元気)2.Energize(周りを元気にする)、3.Edge (これ以上待てないところで適切な意志決定ができる)、4.Execute(やり抜く)。「自分が元気でも、周りの元気を奪っちゃう人、いそうですね」。
  • 14:30  金井先生によると、一見矛盾した言葉を組み合わせた言葉のことをオキシモロン(矛盾語法)というそうだ。一見相反したものを組み合わせるところに「創造のヒント」があるように感じた。考えてみれば「ラーニングイノベーション」は、一般通念上はオキシモロンなのかもしれない。
  • 14:15  慶應MCC「ラーニングイノベーション論」。金井壽宏先生(@tkanai1954)の授業「プロセスコンサルテーションとしての人材開発部門のあり方」。「ヘルピング」「サーバントリーダーシップ」など。
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■2010年8月2日 中原のTwitterタイムライン

  • 13:38  京都大学にて講演終了。久しぶりに高橋俊介先生にお会いし、お話した。ランチにて、京都大学楠見先生、参加者の先生方と小談。すぐに東京に戻らなくてはならないので、溝上先生にお詫びし中座。ダッシュで新幹線に飛び乗る。今日は一日が長い。
  • 06:45  大和ハウス工業、チーム制のOJT導入。入社7年から9年目の社員と新入社員のペアが、三組計6名で、1チーム。チーム制で、互いの不安や悩みを共有しつつ、ペア間の競争を促す。日経新聞
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■2010年8月1日 中原のTwitterタイムライン

  • 21:57  「組織文化を理解したいのなら、会議にでるにかぎる」(エドガー・シャイン)。誰がどのような発言権をもち、誰の発言が圧殺されるのか。どの話題が取り上げられ、どの話題が無視されるのか・・・会議は組織文化を知る有力な手がかりである。
  • 18:19  幼稚園の先生とクラスメートは、残りの人生にどのような影響をもたらすか?:The Case for $320,000 Kindergarten Teachers (NY Times) http://ow.ly/2jnxO
  • 18:13  一週間ぶりにジムへ。一時間のランニング、30分プール、30分ストレッチ。67キロ、体脂肪率15。もう少し通えると、体調がよくなるんだけどなぁ。
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