樋口美雄(編)「転換期の雇用・能力開発支援の経済政策」を読んだ!

 お正月は、時間がありましたので、いろいろな本を読みました。その中で、もっとも印象的だったのは、樋口美雄(編)「転換期の雇用・能力開発支援の経済政策」(日本評論社)です。

 この本では、成人の人材育成、能力開発の問題を、よりマクロな視点から論じています。少子高齢化、産業構造化転換、グローバル化といったマクロな構造変化に対応して、いかに人材育成、能力開発はあるべきか。わが国が、効率的かつ公平な人的投資の仕組みをいかに社会の中にビルトインするべきなのかを論じておりました。

 僕の研究は「企業」さらには「職場」といったようなミクロな問題を扱っています。自分の研究を位置づけるためにも、こうしたマクロな研究にも目配りをしておかなければならないな、と思いました。本書は専門書ですので、記述は専門的です。わが国の雇用環境が今後いかに変動していくのかを考えてみたい方には、おすすめです。

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目次

序 章 能力開発のための新たな社会支援の必要性と政策評価

第1部 多様化する就業形態
第1章 人材ビジネスの社会的機能と課題
     ――雇用機会創出とキャリア形成支援
第2章 若年層の雇用の現状と課題
     ――「ダブル・トラック」化にどう取り組むか
第3章 ニート、フリーター、若年失業とマクロ的な経済環境
第4章 企業内人材育成における現状と課題
第5章 人事担当者から見た企業における若年層

第2部 諸外国の事例
第6章 EUにおける若年者雇用と若者政策
第7章 フランスの雇用政策・人材育成政策とその評価制度
第8章 イギリスの雇用政策・人材育成政策とその評価
第9章 デンマーク及びEUの雇用政策とその評価
第10章 欧米と日本の組織モデルの違い
     ――なぜ日本ではプロフェッショナルが育たないのか

第3部 多様な就業形態と経済・財政政策
第11章 若年を中心とした雇用形態の多様化が社会・経済に及ぼす影響について
第12章 税・社会保障制度と労働供給
第13章 人的資本蓄積と税制を考える
第14章 雇用を取り巻く環境の変化に対応した制度や政策のあり方
     ――「多元的雇用・勤労福祉型システム」の創出に向けて