八木絵香著「対話の場をデザインする」を読みました!

八木絵香著「対話の場をデザインする」(大阪大学出版会)を読みました。


 著者の八木さんは、青森県六ヶ所村、宮城県女川町などで、専門家と市民が原子力に関して話し合う「対話フォーラム」というものを開催してきた方です。本書は、そのプロセスや効果に関して、科学技術コミュニケーションの立場から論じています。

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「問題解決のためには、わかりやすい、丁寧な説明が必要である」

「適切な説明がなされ、正しい知識を取得すれば、素人は専門家の主張を受け入れる」

 著者によれば、原子力技術だけでなく、科学技術をめぐって社会の中で起こっている問題の多くは、専門家の側が、いわゆる「欠如モデル」 - つまりは市民の側にリテラシーや専門的知識が「欠如」している、という考え方から逃れられないことにあると、いいます。
 なるほど。これは、中原・長岡著「ダイアローグ 対話する組織」にひきつけて考えると、専門家の方が「導管モデル」に囚われている、ということになるでしょう。


 筆者が実施した対話フォーラムでは、繰り返し、繰り返し、落としどころのない対話に、専門家と市民が取り組みます。このプロセスを通じて、市民のみならず、専門家の側にも変化が生まれたそうです。
 著者は「共進化」という言葉を用いているが、僕の言葉でいえば、まぎれもなく、これは相互に「協調学習」が生まれたことになるのかな、と思いました。
 非常に興味深いですね。

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 最後になりますが、「僕自身の自分のあり方」をふりかえる意味でも、本書は面白いものでした。僕がビビビときたのは、下記の部分です。

「科学技術、特に、リスクに関するコミュニケーションは、情報を専門家が管理し、それを市民に提示するという枠組みから、リスクの評価や管理にかかわるすべてのプロセスに、市民を含むすべての利害関係者を関与させ、リスク管理に関するあらゆる場面において市民が参加する方向へ変化してきた。単なるコミュニケーションを超えて、専門家と市民が科学技術の問題の解決に協働で取り組む方向へ変容してきたのである」
(p19)

 この「科学技術」あるいは「リスク」の部分を、「教育」「人材育成」「成人学習」に読み替えてみてください。僕がやってきたこと、そして主張したいことの意味や本質が、朧気ながらわかってきた気がしました。

 そして人生は続く。

追伸.
 大阪大学出版会の装丁は、綺麗ですね。大学出版会らしくないデザインで、非常によいですね。

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