地方公共団体の人材育成

 先日、総務省の関連団体「全国市町村国際文化研修所(JIAM)」にて、「地方公共団体で人材育成を担当している方々」向けの研修を担当した。

 研修自体は、合計4日間にわたる研修。
 前半2日間は、京都大学大学院名誉教授で、現・愛知学院大学経営学部教授の田尾雅夫先生(組織心理学)がご担当し、後半2日間は僕と熊本大学の北村先生が担当し、「人材育成の理論と実践」についてお話をした。

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 一昔前までは、

「やっていることになっていればいいから」

 とまで、まことしやかに言われた、地方公共団体の人材育成。今、それが「見直されはじめて」いるのだという。

「地方分権」という大きな流れにおいて、自ら政策や事業を提案する職員が必要になってきている。
 財政の逼迫によって、給与・待遇を含めた様々な見直しがはじまり、人材育成体系自身も変わらざるをえなくなってきている。
「自らが成長できるか否か」を重視する近年の若者気質からか、はたまた民間企業の景気がよかったせいか、あいつぐ公務員バッシングのせいか、若年層の公務員離れが進んでおり、同時に「早期離職」が問題になってきている。

 これらの背景のもと、「やってることになってればいいから」と言われた公務員の人材育成体系の見直しが、「意欲ある自治体」において、はじまっている。

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 私見であるが、一般に、公務員の人材育成は、民間企業のそれと比べて下記のような特徴をもっている。

1.学習内容は業務に関連しているものというより、公務員としての倫理や姿勢を「伝達」するものが多い

2.「伝達」の手段としては、オムニバス型の一斉講義(講話)が多く、対話の機会やリフレクションの機会は相対的に少ない

3.「現場」との連携は極めて低く、また、OJTなども、各現場に任せられている

4.人材育成担当者も短期間でローテーションするため、ノウハウの継続も比較的難しい

 一目見てわかるように、地方公共団体の人材育成の「課題」は、非常に大きい。

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 今回の研修は、人材育成の理論と先行事例を通して、「課長・係長級の研修カリキュラムを見直す」という内容であった。
 僕の不手際や準備不足でうまくいかなかったところもあったけれど、受講者の皆さんのご協力で、何とか無事に終えることができた。

 研修中の受講者の反応、そして各種エクササイズのアウトプットからは、大きな「可能性」も感じることができた。

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 ちなみに、余談。

 近年、企業を対象にした組織人材育成研究、あるいは、組織学習研究は非常に増えているものの、「地方公共団体」を対象にしたそれは、まだ本腰を入れて研究している人は、ほとんどいない。

 もちろん経営学や政治学的観点から、それを論じる人はいないわけではない。が、教育学的観点からは、まだまだである。

 しかも、地方公共団体における「学習」の問題は、実は、地方公共団体に勤務している人だけでなく、それぞれの地域で、開発や町おこしに携わっている人々、NPOの方々、住民など、様々なステークホルダーに広がっている。

 ここにも、「大きな研究のタネ」が転がっている、と思った。

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 最後になりますが、今回の研修を支えてくれた、JIAMの今西佳子さん、久保佳代子さんには、大変お世話になりました。
 地方公共団体の人材育成カリキュラムに関する膨大な資料集めに奔走していただいたり、本をお送りいただいたり。当日は、様々なロジをご担当いただいたりしました。
 研修は講師だけでなく、事務局スタッフとのパートナーシップによって実現することを実感しました。

 また、参加してくださった地方公共団体職員の皆さんにも、たくさんの示唆をいただきました。

 この場を借りて感謝いたします。ありがとうございました。

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 そして人生は続く。
 来週は忙しさのピーク。