学習する組織」の成熟度評価法!?

 今月号のダイヤモンドハーバードビジネスレビューには、「学習する組織」の成熟度評価法と称して、ハーバードビジネススクールのディヴィッド・ガーヴィンらの論文が掲載されていた。

David Garvin, Amy C. Edmondson and Francesca Gino Is yours a learning organization?

 現在、僕があるところでやっている仕事にかなり近いので、興味深く読ませてもらった。下記に彼らの質問項目を引用する。

 ガーヴィンらは、学習する組織を支える環境として、1)精神的な安全、2)違いの尊重、3)新しいアイデアへの寛容度、4)内省にかける時間をあげている。また、学習プロセスと学習行動、学習を推進するリーダーシップの問題もあげている。

 もちろん、ガーヴィンらのあげる問題は、すべて組織学習の成否に関係すると思うけれど、個人的には、もう少し「個人 - 個人の社会的関係」や「個人 - 個人のつながり」に関する項目を入れた方が、より完成されたモデルになるのではないか、と思った。

 もちろん、ガーヴィンらの作成した評価指標が、主にマネジメント層がチェック&リフレクションするために開発されたものなので、ないものねだりではあるけれど。

 これに関しては、今後、共同研究者の方と一緒に取り組んでいきたい、と思っている。

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1. 組織学習を支える環境(7段階のリッカートにて回答)
1-1. 精神的な安全

・この組織では、思ったことを自由に発言しやすい
・この組織ではミスを犯したメンバーに非難の矛作が向けられることが多い
・この組織のメンバーは、問題点や意見の相違について気軽に話し合う
・この組織のメンバーは、成功事例や失敗事例を共有することに熱心である
・この組織で出世するには手の内を明かさないことが最善策である

1-2.違いの尊重
・この組織では意見の相違が歓迎される
・この組織では主流の考え方にそった意見でなければ尊重されない
・この組織には意見が食い違った場合、その相手と直接話し合うことなく、個人的にまたは裏で処理する傾向が見られる
・この組織のメンバーは、従来と異なるやり方で豪無を遂行することに寛容である

1-3.新しいアイデアへの寛容度
・この組織のメンバーは、新しいアイデアを尊重する
・この組織のメンバーは、長らく親しまれてきたアイデア以外には耳を貸さない
・この組織のメンバーは仕事のやり方を改善することに関心が高い
・この組織のメンバーは、未知の方法に抵抗することが多い

1-4.内省にかける時間
・この組織のメンバーは、過度のストレスを感じている
・この組織のメンバーは業務量が多くても、あえて時間を割いて仕事の進捗状況を見直す
・この組織では、スケジュールに追い立てられて、業務の遂行に支障をきたしている
・この組織のメンバーは、忙しすぎて改善に時間を割くことができない
・この組織では内省する時間が全くない

2.学習プロセスと学習行動(7段階のリッカートにて回答)
2-1.実験
・この組織は新しい業務方法を頻繁に実験する
・この組織は、新製品や新サービスを頻繁に実験する。
・この組織には、実験や新しいアイデアを実施し、それを評価する公式プロセスがある
・この組織は、新しいアイデアを試す際に、試作品やシミュレーションを多用する

2-2.情報収集
・この組織は、以下の項目について、体系的に情報を収集する
  競合他社
  顧客
  経済動向
  技術動向
・この組織は以下の相手と頻繁に能力を比較する
  競合他社
  同じクラス内で再考の組織

2-3.分析
・この組織はモノゴトを検討する際、建設的な対立と議論を行う
・この組織はモノゴトを検討する際、反対意見を広く求める
・この組織はモノゴトを検討する際、すでに確立した視点は決して検討しない
・この組織は重要決定に影響しかねない基本的前庭について、頻繁に洗い出して議論する
・この組織は、モノゴトを検討する際、いっさい異論には耳を傾けない

2-4.教育と訓練
・この組織の新入社員は、適切な研修を受けている
・この組織のベテラン社員は、次のような研修を受けている
  定期的なトレーニングと最新事項の補修
  異動時のトレーニング
  新しいイニシアチブがスタートする際のトレーニング
・この組織は研修を重視する
・この組織は、教育やトレーニングに時間を割く

2-5.情報の移転
・この組織には以下のような相手と出会い、そこから学ぶための場が用意されている
  社内の他部門や他のチームの専門家
  社外の専門家
  顧客やクライアント
  サプライヤー
・この組織は、社内の専門家ネットワークと、定期的に情報を共有している
・この組織は、社外の専門家ネットワークと、定期的に情報を共有している
・この組織は、重要な意志決定者に対して、新しい知識を迅速かつ正確に伝える
・この組織は、事後監査や事後検査を定期的に実施する

3.学習を推進するリーダーシップ(頻度による回答)
・上司は、物事を検討する際、他の人の意見を求める
・上司は、知識、情報、専門性に関して、自分の限界を認めている
・上司は、突っ込んだ質問をする
・上司は、注意深く話を聞く
・上司は、様々な視点をもつことを奨励する
・上司は、問題点や組織上の課題を見つけるために、時間や資源や場を提供する
・上司は、過去の業績を内省して改善を図るために、時間や資源や場を提供する
・上司は、自分と異なる見解を批判する

(Diamond Harvard Business Review 8月号 2008 p124-125)