現代GPシンポ:ICTを活用したアクティブラーニング~未来の大学教室のデザイン

 東大・駒場キャンパスで開催された「現代GPシンポジウム:ICTを活用したアクティブラーニング~未来の大学教室のデザイン」に途中から参加した。所用があり駒場キャンパスの会場に入ったころには、会場は満員御礼。

東京大学現代GP:ICTを活用したアクティブラーニング
http://www.komed.c.u-tokyo.ac.jp/gendai/index.html

 シンポでは、「大学と教室空間のあり方」というテーマで、マサチューセッツ工科大学のピーターさん、スタンフォード大学のダンさん、はこだて未来大学の美馬さん、東京大学の同僚の山内さん、望月さん、ガリーさんらが、それぞれの大学での取り組みを紹介していた。
 どの事例も非常に興味深かったけれど、個人的には、美馬のゆりさんの話が印象深かった。

 美馬さんは、日本文化をさかのぼりながら、「お茶の間」が「マルチファンクショナルでコモンな空間」であることを指摘する。

 お茶の間は、「家族が食事をする場所」であり、「家族が眠る場所であり」、「家族がテレビを見ながら団らんする場所」である。そこは一人に占有されるわけではない。西欧人の目で見れば「ウサギ小屋」のような「狭い空間」でありながらも、たくさんの用途に利用する工夫があふれている多機能な、共有空間である。

 美馬さんの深みのある主張を、エイヤッと要約すれば、「大学にマルチファンクショナルで、コモンな場を増やすべきだ」ということになる。

 様々な社会的背景をもった人々が、それぞれのニーズに従って、集っては、アイデアを練り上げ、そしてそれを記録できるようなフレキシブルでいて、マルチファンクショナルな場。確かに、そうした場があれば、大学教育はよりよいものになると感じた。はこだて未来大学については、下記の本にも概要が述べられている。

 美馬さんは、大学の教室空間について一通り言及したあとで、はこだて未来大学のFD活動について話を進めた。

 はこだて未来大学では、FD活動を「教員個人としての資質の向上だけでなく」、「よりよくなろうとする学習共同体の構築とその維持にある」と定義しているそうだ。

 教員、職員、学生・・・大学に集う人々の学習者共同体を構築し、自分たちの学びの場を、自分たちで改善していくことこそが、FDの眼目であるという考え方である。

 美馬さんのこの指摘は、以前Learning barで講演していただいた、名城大学の神保さんの指摘に通じるものがあった。これに関しては、以前からずっと僕も問題意識をもっており、このブログで述べたことがある。

ファカルティディベロップメント2.0ワークショップ
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/08/20_1.html

 美馬さんによると、はこだて未来大学のFD活動の成否は、はこだて未来大学のユニークな学習空間にも強い影響を受けているという。

 未来大学では、これまでの取り組みをまとめ、「学び方を学ぶことに関して意識を高めるためのセンター=メタ学習センター」を学内につくるそうだ。今後、非常にユニークな取り組みがなされそうで、注目である。

 その後、シンポジウムはパネルディスカッションに入ったが、残念ながら、僕は私的都合で中座。
 ともかく、シンポジウムの準備を中心的にすすめた西森年寿先生望月俊男先生林一雅先生、お疲れ様でした。