「人が働き続けたくなる組織」と「ダメなら、新たにとってくりゃいいという組織」の違いとは何か?

 先だって、某プロジェクトのヒアリングにて、パート・アルバイト人材の「驚異的なリテンション率」を誇る組織のHRの方にお話を伺いました。
リテンション(retention)とは、ワンワードで申し上げますと、「採用した人材に、組織の中にいつづけてもらい、働いてもらうこと」です。
 採用や教育にはコストがかかりますので、一定期間の「リテンション率」をあげることは、組織のHR上のアウトカム(達成度)としては、重視されることが多いものです。

 ヒアリングでは、仕事継続(リテンション)に影響を与える様々な要因について、同社にてHRを率いるHさんから、圧倒的先行者の貴重なノウハウを聴かせて頂きました。ありがとうございます。心より感謝です。

 どのお話も非常に印象的でしたが、もっとも心に残ったのは、その「世界観」です。

「だめなら、新たに外から採用すりゃいいという組織」と、「ハイリテンション組織」が異なるのは、組織が暗に想定している「人間観」や「仕事観」かなと思いました。うーん、なんと申し上げてよいのかわからないのですが、「世界観」といいましょうか「HRの思想」といいましょうか、そういうものが決定的に異なるように感じるのです。

 確かに、そりゃー、比べてみれば、外見上の「制度」も「環境」も違うんでしょう。でも、そういうものは「形式的」にはすぐに真似して、似たようなものをつくることができるし、実際にそうなっている。

 だけれども、もっとも違うのは「人間とはどういう存在なのか?」そして「何があれば人は働きがいをもって仕事ができるのか?」ということに関する「組織の答え」なのかな、と思います。
 そうした一連の哲学的な問いに対して明確な解をもち、それにひもづくかたちの制度構築・環境構築をもっていらっしゃるように、僕には感じました。

 制度や環境だけ、形式的に真似したって、絶対に勝てない。

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 オリンピックイヤー2020年にむけて、大都市圏では「人手不足」が、さらにさらにさらに加速していく予感があります。

 社会予想はさまざまに発表されていますが、数千万人の世界中の人々が、日本にこられるという予想もあるようです。もう5年後のホテルすらとれないんだとか・・・。

 このような中、多くのサービス業では、一定の「人員=量」を確保しつつ、同時に「サービスの質」を確保しなければなりません。サービス業の中にはすでに動き出している組織もございます。

 このような環境下では、おそらく「ダメなら、新たにとればいい」は次第に通用しなくなるのではないかと思います。
「ダメなら、新たに外からとればいい」といいますけど、「外」に人は次第に少なくなるからです・・・人手不足で。また、長期的な視野にたてば、日本は、これから人がどんどん少なくなっていく。
 このような中、「だめなら、新たに外から採用すりゃいいという組織」は、圧倒的な苦難に直面するものと思います。そのような中で、長い時間はかかるとは思いますが、「人が働き続けたくなる組織」が増えていくことを願います。

 このような環境下では、適切な人を選び、できれば長くつとめてもらうことーオンボーディング(同じ船にのってもらうこと)施策が、決定的に重要になると思われます。

 プレスリリース前なので、あまり詳細なことは言えませんが、このプロジェクトにお声がけいただいたことに、プロジェクト代表者のSさん、Tくんはじめ、心より感謝いたします。このプロジェクトがその社会課題に対してなんらかの貢献ができることを願っています。

 また「驚異的なリテンションを誇る組織のHR長 Hさんにも、貴重な時間とインサイト溢れるお話を感謝です。自分のこれまでもとめてきた理論や主張と共鳴する部分が多く、自信が持てました。この領域にでも、自分が貢献しうるのではないかという自信を持てたことが、とても嬉しいことでした。もちろん、まだまだ学ぶべきところは多々ありますが。

 うん、学び多きヒアリングだった!
 そして人生は続く