仕事の能力形成研究の5つのトレンド:職場を縦断する網の目で活躍する市民たちが一気通貫リーヅモドラドラする研究!?

 「仕事の能力形成」に関する最新の実証的研究トレンドを、もし5つあげてください、と言われたら、何をあげるでしょうか。

 僕のネクラな趣味として、よくひとりで、この手の「トレンド予想」をすることがあります(笑)昨日も、電車のなかで、ひとりで自問自答していたのですが(もともと、ひとり遊びが好きなんです)、結局、これかなと思いました。
 以下は、僕のあくまで「印象論」なので、まったく真に受けなくていいですが、下記のようなトレンドを、ひとり感じながら、悦にひたって、「研究とは全く関係のない雑務」を電車内で、ガシガシとこなしていました。

 1.職場やグループを分析単位とした研究
  (Workplace Research)

 2.実証的な大規模縦断研究
  (Large-scale and Longitudal research)

 3.組織市民行動のある集団の探究
  (Organizational Citizinship)

 4.社会関係資本論&ネットワーク論との融合
  (Social Capital Theory)

 5.隣接領域(採用ー社会化ーマネジャー発達論)の融合

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 1「職場やグループを分析単位とした研究」とは、ここ5年くらいの変化かもしれません。
 もともと組織の研究は、分析単位が「組織(会社全体)」になることが多いのですが(だから「組織」論なんです)、その分析単位がより「ミクロ化」しているということです。

 すなわち、組織を単位とするよりも、その組織を構成する集団(たとえば職場)を分析単位(Unit of Analysis)として、研究データを取得することが多くなってきた印象がありますね。

 さらにいうと、職場よりも、よりミクロなものを、「ちみちみ、ところで、もっとコンマイ単位はどうなっているのかな?」みようと思えば、最小単位は「個人ー個人」ということになりますね。すなわち「個人のペアデータ」です。ですので、最近は、取得するデータを「ペアデータ化」することも増えていることのひとつかもしれません。
 
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 2「大規模縦断研究」とは、組織論というよりも、人文社会科学全体のトレンドでしょうか。
 縦断研究とは、ざっくりいえば、「同一の人物」からから反復してデータを測定し、個体の変化を追う研究のことをいいますね。時間がかかりますし、手法的にも、まだまだ発展途上にある研究です。

 縦断研究では、反復して、何度もデータを取得しなければならないので、当然、繰り返していれば、データに欠損がでてきます(すなわち、答えてくれない人がでてくるということです)。

 ですので、一番最初は、うそーというくらいに大規模にデータをとらなくてはなりません。だから、大規模+縦断は、セットで語られることが多くなる傾向があるように思います。

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 3「組織市民行動のある集団の探究」とは、専門家に「後から便所スリッパでスコーンと殴られること」を覚悟して「ひと言」でいいますと、「思わず、うっかり、お見合いをしちゃうようなポテンゴロ的な仕事を、集団のメンバーが自発的に拾えるか、どうか」ということです、、、意味不明(笑)。
 もう少しだけ、ちゃんと、いいましょう。
 すなわち「誰の仕事とも規定されていない仕事を、いわば善良な市民として、いかに自発的に担って生きうるか」ということです。

 最近は、みんな「クソ忙しい」ですし、成果にやいのやいの追われていますので、そういう「自発性をフルに発揮するような集団」はしだいに失われています。
 でも、能力形成にとっても、集団の維持形成にとっても、そういう個人の自発的な動きやかかわりは、ものすごく大切なことです。そして、失われているからこそ、こういう集団の成り立ちに関する研究が求められることになります。

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 4「社会関係資本論&ネットワーク論との融合」も、組織論全体というより、人文社会科学のトレンドですね。要するに、ある個人の発達を、社会的ネットワークや、つながりの中から見ようとする研究です。
 能力形成研究に焦点をあわせていいますと、かつては、上司ー部下間の垂直的な発達に焦点があてられていました。しかし、最近は、同僚、先輩、さまざまな人々のかかわりや網の目の中で、人がいかに発達していくかをみる研究が多くなっている印象があります。

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 5.「隣接領域(採用ー社会化ーマネジャー発達論)の融合」とは、要するに、「組織のなかの個人の能力形成」とは「比較的近いんだけれども」、これまで「別々に研究されてきたもの」が融合し合い、まざりあい、香ばしい風味を醸し出しているということですね(笑)。ソムリエ風の表現でいえば、「子犬が雨に濡れた香りと、新緑の朝森を散歩していたときのさわやかな風が溶け合い、ハーモニーをかなでているような感じ」でしょうか。

 「組織のなかの能力形成」のうち、初期キャリア(1年目ー3年目くらいとしましょうか)を真ん中におきますと、それを「前だおせば」、「採用・選抜研究+新人育成の研究」との融合ということになります。一気通貫のイメージでしょうか、たとえは麻雀で恐縮ですけれども。
 たとえば「どういう人をどのように採用して、どのように育成すれば、効果的か」というリサーチクエスチョンですね。
 もし仮に「後だおせば」、「新人の成長+マネジャーとしての発達」ということになりますね。「新人をどのような体制で育成して、マネジャーに育んでいくか」ということになります。
 あるいは、中途採用の研究だとするならば、離職・退職研究というのがあります。これと中途採用者の組織適応研究がくっつけば、「どういう人が離職・退職して、どのように再就職するか?」ということになります。

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 今日は、最近の研究トレンドをざっくり語ってきました。断っておきますが、印象論ですので、客観性も、ミソも、クソもありません。
 僕としては、これらすべてを包含するひとつの研究を実践することは無理にせよ、部分的に自分の研究に取り入れながら、研究を進めているつもりです。できるなら、ワンショットでいきたいけどね、そんな「職場を縦断する網の目で活躍する市民たちが一気通貫リーヅモドラドラする研究」なんて、なかなか、ねぇ・・・。

 いずれにしても、ついていくのが大変です。ビジネスの世界の変化も早いですが、研究の世界の変化も早いので。

 でも、何とか頑張ります。
 今日から、大学院・中原ゼミの冬学期がスタートです。
 そして人生は続く。