「これからを構想」する時に、「決して裏切ってはいけないもの」

「みんなが欲しがってるものをつくってちゃ、ダメなんだ。自分が欲しがっていることに、みんなが気づいてさえいないものをつくらないと」
(カニエ・ウェスト)

「音楽は"曲を売る"という縛りから、解放されたということなんだと思う」
(ウィル・アイアム)

 発売中のWIRED最新刊「これからの音楽:21世紀をサヴァイブするコンテンツビジネス」を読みました。「音楽」に関しても、「コンテンツビジネス」に関しても、全くの素人なので、僕は、その業界内の常識を知りませんが、小生お得意の「妄想力」を爆発!?させながら読むと、音楽業界の未来のみならず、いろいろなことが浮かんできて、とても興味深い特集でした。

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 特集では、「素人目線」で恐縮ですが、なぜ、既存のレーベル、既存の音楽ビジネスが「崩壊」の一途をたどり、そのあとにいかなるものが立ち上がろうとしているのかは、おおよそ理解することができました。

 ひと言で述べるならば、既存の勢力にとって「押し寄せたデジタルの波」とは「権利」でした。誤解を恐れずにいうならば「これまでの権利を守ること」、そのことだけが、「既存の勢力の関心事」であった。
 より話を具体的にしますと、その関心事は「ネット時代に自らの権利を脅かすものに対して、いかに法律的に、それを守るか」であり、「自らの権利を脅かすものに対して、いかに技術的かつシステム的に、それを守るか」であったということです。まぁ、やむなきところも感じます。それで「ごはんを食べてきた」のですから。

 しかし、その際、もっとも「裏切ってはいけないもの」を裏切ってしまった。自己の権利を守るために生じる、あらゆる「不便さ」「不都合」を「音楽を愛する顧客」に押しつけてしまった。
 本来ならば、自らの「権利」を守るために裏切ってはいけないものは、「音楽を愛する顧客」であったのにもかかわらず、それを「裏切ってしまった」。これが「決定打」だったんだろうな、と僕は感じました。

 そして、妄想力を豊かにして考えると、こうした事例は、音楽業界のみならず、枚挙に暇がないな、とも思いました。
 音楽業界のみならず、「これからを構想する」ときに「裏切ってはいけないもの」を「裏切って」しまう事例は、「ここ、あそこ」に生じているだろうな。振り返ってみれば、そういう事例は、多いだろうな、と。僕が知っているだけでも、いくつかは、あるぞ、と。

 業界には業界の事情があり、そこに生きていた人には言い分もあるだろう。外的環境の変化によって「これまで」が理由もなく瓦解していくことには、文句のひとつ、恨み節のひとつも、言いたくなるだろう。
 しかし、「これからを構想する」ときに、「これまで自己を存立ならしめてきたもの」を「裏切れば」、逆説的ですが、そこには先に「これから」はない。自戒を込めてですが、本当にそう思います。

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 特集では、これから立ち上がってきている、様々なメディア、アーティストの試みを紹介しています。いくつかは知っていましたが、知らないサービスもあり、あとで試してみようと思っています。

 「もっとも時代の最先端をいく」と言われているのが、「音楽」の領域です。ここで起こっている出来事は、いつか、自分たちの「明日におこること」かもしれませんね。 

「便利なものが勝ち、思い上がりは負ける」
(イアン・ロジャース)

 そして人生は続く

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追伸1. 自己メモ

・VINE(ビデオ版:6秒のショートムービー作成サイト)
https://vine.co/

・SPOTIFY(音楽サービス)
https://www.spotify.com/int/

・PANDORA(音楽サービス:日本からでは利用できない)
http://www.pandora.com/restricted

・Music Unlimited(ソニーの音楽サービス:リコメンドエンジン)
http://www.sony.jp/music-unlimited/

・Yak Film(デジタル一眼+ダンスビデオ)
http://www.youtube.com/user/YAKfilms?feature=watch
この映像かっこいい

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追伸2.
 昨日、渋谷ふれあい植物センターでのホタル鑑賞会に家族で出かけていたら、たまたま帰り道、ZINEFESというのを、やっていました。
 ZINEとは、若手アーティスト(昨日は写真家)が自分でつくっている小冊子だそうです。ZINEFESは、そうした創作活動をなさっている人々が集まり、交流する会だそうです。

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ZINEFES
http://zinefes.com/

 ここ数日で僕に起こっている出来事は、おそらく、同じコトです。ZINEも、先日金曜日のUSTも、音楽の話も、ひそかに、ゆるく関連しているように僕には感じます。「表現者とその表現公開手段(普及チャネル)」について考えさせられた週末でした。経験上、こういうシンクロニシティが起こるときっていうのは、何かが動いているときです。何かを感じます。

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追伸.
 今週から3週連続にわたり、雑誌「日経ビジネス」で藤原和博さんと中原の対談が掲載されます。「これからのキャリア × 人材育成(学習)」みたいな内容です。もしよろしければ、どうぞご笑覧ください。
 編集の中野目さん、秋山さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

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