大学のゼミの密かな愉しみ方「アカデミックイタコゲーム」 : 先生にのりうつって、コメントを予想する

 研究会やゼミにおけるアカデミックな研究報告や議論には、議論内容以外に、密かな愉しみ方があるように感じます。

 「てめー、議論に集中しろよ!」

 とおっしゃる御仁もいらっしゃるかもしれませんが、集中してんのよ、集中はしてんの。でも、それ以外の「プチ工夫」もあるよ、と言いたいわけです。
 この方法、何ら「一般的な愉しみ方」ではないし、万人受けしないやり方なので、「よい子はマネしない方がよい」とは思います。
 ただ、敢えて、知りたいという方のために、ここでお話しますと、なんと、簡単。

 ある研究発表に対して、先生や他の研究者が、どんなコメントをするのかを、ひとりで予想する

 という「一人あてっこゲーム」を愉しむというものです。ま、いうたら、アカデミックイタコを愉しむということです(笑)。アカデミックイタコゲーム?

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「けっ、そんなことかよ」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、「アカデミックイタコゲーム」は、これでも、なかなか奥が深く、面白いものです。
 僕は、大学院時代、研究会やゼミなどで、このゲームをひとり愉しんでいました。今でも、学生の発表を、複数の研究者と伺うときには、たまーに、このゲームをしているときもあります。

 で、あたったときには、

「あの研究者は、きっと、そういうと思ったよ。いやー予想通り、10ポイントゲット!」
「絶対にこう言うぞ、言うぞ、あっ、やっぱり言った、オレすげー。今までの得点が、さらに倍!」

 なんて、脳裏でつぶやいています(暗い?)。

 でも、このやり方は、自分でいうのも何ですが、あながち無意味なものとも思えません。

「先生や他の研究者のコメントを予想する」ためには、まず、研究報告の趣旨や構造を、確実に、読み解かなくてはなりません。つまり、じっくり聞かなければならない。
 その上で、その研究者が、どんな主張や思想的背景をもっているかを考え、どのような思考回路で、この話を聴き、何を弱み・強みと認識するかを考えなくてはなりません。
 そして、こういうことをしていると、次第に、その学問分野や研究方法論に独自の思考法を身につけていくことができるようにも感じます。もちろん、学問分野によるので、この方法が、どれだけ異なる分野に奏功するかはわかりません。
 しかし、一時的であっても、先生に「憑依(ひょうい):のりうつり」し、その思考回路をトレースするわけですから、そういうものがいずれ内化する可能性は、ゼロではないでしょう。アカデミックイタコ、こう聞くと、無意味じゃなく思えてきませんか?(真に受けないでね)

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 数年前でしたか、僕の指導学生の(OBですね、もう)舘野さんも、この方法をゼミ中にやっているそうで、

「僕は、ゼミで先生のコメントを予想しています」

 とおっしゃっていたのを聞いたときは、ひそかに、衝撃的でした。まことに血?じゃないけど、それらしきもの?は、争えないですね。
 それにしても、いつのまにか「憑依していた」はずなのに、「憑依される方」になってしまったとは! 

 まぁ、「憑依される方」としては、「ちみが、そう予想するなら、おれはこういうけどね、フフフ」と、予想をくつがえしたくなるところもありますね。でも、たぶん、いつもあてられてるんだろうな。といいますのは、舘野さんのコメントを聞いていると、僕の思考に、かなりそっくりなので。

 ともかく!
 ゼミや研究会を漫然と聞いていても、あまりよろしくないですね。もし、少しプチ・スリリングさを味わいたくなったら、ぜひ、あなたも、アカデミックイタコになって、先生に「のりうつって」みてください。

 そして人生は続く

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追伸.
ちなみに僕が学生時代(修業時代?)やっていたことのひとつに、「先生の文体を真似するゲーム」というのがあります。レポートをださなきゃならないとき、先生だったら、こんな文体で書くだろうな、ということで、先生にのりうつって、レポートなどを書いてみる(もちろんマネするのは文体ですよ)。そんなゲームをひとりで遊んでいました(クラい?)。(規範崩壊している、今となっては、あまり言われませんけれど、昔はよく、中原さんの文章は、ちょめちょめ先生にそっくりですね、と言われたことがあります。のりうつられた方の先生としては、不名誉ですね、すみません。)

ひたすら、最初は「ただ、やみくもに、のりうつる」。今、気づいたことですが(!)、僕は、そういうことを、かなり意識的にやる傾向があるようです。

実は、自分は、文章が本当に苦手で、本当に書けなかったのですが、大学に入った頃に、ひそかに下宿でヒッキーになりつつ遊んでいたのは「作家のりうつりゲーム」でした。

たとえば、中島敦さんとか、森鴎外さんとか、村上春樹さんとか、自分の好きな作家がもし短文を書いたとしたら、どんな風に書くかを予想して、短い文章を書いてみる、みたいな遊びを、当時、買ってもらったばかりのコンピュータでやっていたことを思い出しました。もちろん書いたものは、とても人に見せられるものではありませんけれど。

 意外に「憑依」「のりうつり」「アカデミックイタコ」というのは、イケる?
 ま、真に受けないで下さいね。