デパートの思い出

 先日、ちょっとした用事があって、家族で、久しぶりにデパートに出かけました。
 デパートの中には、週末だというのに、あまりお客さんがおらず、「この集客で、大丈夫かいな」と思いましたが、エスカレータにまばらに並んでいる人々を見ていると、なぜかは知りませんが、「昔んこと」を思い出してしまいました。

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 昔、今から30年前、僕が、子どもだったころ・・・あの頃のデパートには、たくさんの人がいたような気がします。
 エスカレーターには人があふれ、エレベータにも、やはり人があふれていました。人々の顔には、笑顔があり、フロアには、おめかしをした人々の群れがありました。デパートとは、家族にとって、テーマパークにいくような「行楽」のひとつであったのです。

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 僕がデパートに行くことができるのは月に1度。我が家が給料日の日でした。
 給料日の日には、その足で、デパートに家族で出かける。子ども達は、一冊好きな本を買ってもらい、そのあと、レストランにいって、みんなで外食をする。
 我が家は決して裕福な家庭ではなかったと思いますが、その日が、外食をする唯一の日であり、僕にとっては、一ヶ月で一番愉しみな日でありました。
 なにせ、一ヶ月悩みに悩んで、ようやく選んだ本を、ついに手にできるのですから! お魚とか、煮物とかじゃなく、好きなものが、自宅以外のお外で食べられるのですから。

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 僕の中のデパートのイメージは、かくして、「本」と「レストラン」と結びついています。あの頃から、30年が立ちました。僕は、「デパートに連れて行かれる存在」から、「連れて行く存在」になりました。そして、今、子どもの手を引いて、デパートのエスカレータにのっている。不思議なものですね。あっという間に、瞬きする間もなく、そのときがきました。
 
 皆さんには、子どもの頃、どんなデパートの思い出がありますか?
 そして人生は続く。