「はじまりのデザイン」・・・人に学んでもらうときに、僕が、心がけていること:「この場はもう死んでいる」状態にならないための工夫!?

 教材設計理論の中に「ARCS」というアクロナムがあります。フロリダ州立大学のKeller, J. が提唱したと言われているもので、それぞれ、下記を示しています。

 A - Attention(おっこれなんだ?)
 R - Relevance(オレに関連あるかもな)
 C - Confidence(やればできるかもな)
 S - Satisfaction(やってよかったな)

 要するに、人が何かを教える際、学んでもらう際には、この順番に配慮して、教えたり、学んでもらうといいよね、という話ですね。
 「ARCS」、古くから言われていることなので、どこかでお聞きになった方もいるでしょう。

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 ARCSは、「非常に単純なヒューリスティクスです」けれども、僕自身は、経験上、特に「A」と「R」の重要性は、痛いほど痛感します。要するに「はじまりのデザイン」です。ここが、もっとも緊張するし、胃が痛い瞬間です。
 ですので、多くの人々に向けて、何らかの学びの機会を提供するとき、「A」と「R」はしっかりと設計します。

「A:Attention」においては、「プチ・サプライズ:PT」を必ず提供します。いい意味で、期待を「裏切る」。「思っている風」にはやらない。

「この場は、当然、こういう風に進んでいくんだろう」
「どうせ、この人は、こんなことを話すんだろう」

 面白いもので、参加者は、みな、こういう「思い込み」や「期待」や「予期」をあらかじめもっているものです。なので、この期待を「いい意味」で裏切り、「ワクワク感」をつくりだすことを考えます。

 具体的に何をやるかは、その場がどんな機会で、どんな人が集っているかにもよるので、一概には言えません。
 突然ゲームをやってみたり、突然、インプロをやってみたり、、、いろいろです。ポイントは、それらのアクティビティは、「今日、学ぶ内容に後々関連してしまうようなアクティビティ」です。ここをはずすと、単なる「ゲーム」、単なる「インプロ」になってしまいます。

「今日は、いつもと違うかもしれない」
「今日は、何かが起こるかもしれない」

 という思いを、アクティビティをとおして、まずはもってもらうことが必要です。

 個人的なことでまことに恐縮ですが、僕は、「アイスブレーク」というのが、あまり好きではありません。僕個人がどうも好きでない、という意味で、他の方に、僕の好みを強制するつもりはありませんので、あしからず。
 なぜ、ちょっとだけ違和感があるというと、自分が「学び手」だったときに、自分や参加者のあいだにあるものを、「アイス」って言われるのもなぁ、と思ってしまいます。
 さらには、アイスブレークは、「学ぶべき内容と、通常、関連を持たないコミュニケーションゲーム」として行われることが多いと思うのですが、どうせなら、それらが関連づけられると、「一粒で2度おいしいね」と思ってしまいます。どうせ時間がかかるのなら、何とかひとつになるといいんだけどね、と思います。

 次にやるべきことは「R : Relevance」の設定です。
 いくら「今日は、いつもと違うことが起こるかもしれない」と思っていても、それが「自分の仕事や関心のあることと、何の関連も感じられない」と、なかなか辛いものです。いや、僕自身は、別に「関連しなくても」いいのですが、「関連しないこと」に耐えられない人は、少なくないということです。

 ですので、教えるべき内容や話すべき内容と「参加者との関連」を暗示する。これが「R : Relevance」で行うことです。学習内容との関連性を示しつつ、その日の「目的」を提示することも大切なことかもしれません。

 次に、これは「ARCS」にはないのですが、もうひとつの「R」があります。それは「R : Rule」です。
 この場を愉しく、快適に過ごすための、「ゆるやかな決まり」を提示し、その趣旨をご理解いただく必要があります。

 たとえば、

「この場の会話では、善し悪しを決めないでほしい」
「ここでは、相手の発言をさえぎらないでほしい」

 このようなルールをしっかりと設定します。

 多くの場合、ここまでを行ったところで、

「何か質問はありませんか? 今日は、こういう風に進んでいきますけれども、皆さん、よろしいですか? よろしいですね。じゃあ、やってみましょう! やってみて、また考えましょう」

 と述べます。
 ここまで提示した内容についての「コミットメント」をお願いするのです。

 ここまで来てしまえば、僕の「緊張度」や「胃が痛い度」は、最初の3割程度に下がります。逆にいうと、自分の集中力の7割は、「最初の数分間」にあてられている、ということです。

 僕は、「はじまりのデザイン」が肝心だと思います。このことは学級経営、職場運営でも言われますよね。
 はじめて学級をもったら、最初の1週間が勝負だ。そこで教師と生徒の関係が決まる。職場を運営していくときには、最初の1週間が大切である。そんなことは、いろいろな場で言われます。
 コンサートとかでも、ライブでも、「はじまりのデザイン」が大切なのではないでしょうか。そこでコケると、みな、コケル?

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 さて、以上、つらつら書いてきました。
 上記は、「非常にトラディショナルなやり方」で、「このやり方で面白い場になるかどうか」はわかりません。むしろ、「あんまり面白くない」方になるかもしれませんね。セオリーどおりだからね(笑)。

 また上記は、自由意志で集まってきた人々を対象にした「はじまりのデザイン」ではありません。その場合は、他にやり方がいろいろとあると思います。もっと学習者に任せることができるでしょう。
 今日書いたものは、むしろ「自由意志ではなく、今、ここに参加してきた人」を対象にする場合の、「はじまりのデザイン」ですね。

 ただ、面白いかどうかは別として、経験上、「派手ゴケ」しないやり方だとは思います。参加者がブチ切れて、それをみていた人がドンビキして、「あべし・・・ひでぶ・・・この場はもう死んでいる」状態になることは、僕の経験上はありません(笑)。

 逆に、「はじまりのデザイン」がうまくできず、「あべし・・・ひでぶ・・・この場はもう死んでいる」状態になっている場は、これまで、何度も見てきました。こうなると、助けてあげたいのだけれども、なかなか、横からは助けられない(泣)。もう「祈る」しかないのです(可哀想に)。

 先日、ある場所で、「はじまりのデザイン」に関する様々な質問を受けましたので、今日は、上記のようなことを、ツラツラと、少しだけ考えてみました。

 皆さんは、
 人に何かを教える際
 人に何かを学んでもらう際
 どんな風に「はじまり」をデザインしていますか?

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■2012/05/27 Twitter

  • 17:41  昔、中原研があった場所>東大に将軍歓待の御殿跡? 26日午前も遺跡公開(asahi) : http://t.co/We766m19
  • 17:12  今日はありがとうございました。近いうちにぜひ RT @takaotakashi: 即興実験学校阿佐ヶ谷公演。多くのお客さんが来てくださいました。アフタートークは東京大学中原淳さん。最後に、近い将来の「即興実験学校の放課後」への出演をお願いしました~
  • 10:34  ブログ更新「組織開発ジャングルをかきわけて」 http://t.co/6PBDYaG4
  • 09:48  午後は高尾隆君(@takaotakashi)のインプロ公演を観劇。公演終了後、少しだけポストトークをする予定。5/27 ザムザ阿佐ヶ谷 開場13:30 開始14:00 - 終了16:00 http://t.co/dnFH1kMr
  • 09:46  午前中、TAKUZOプール教室。今日はテストですな。朝からクロールのイメージトレーニング。結果は、神のみぞ知る。小生は近所のカフェで仕事。
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