グループワークの導入で派手ゴケしない!?ための3つのポイント

 最近は、研修やセミナーなどで、「導管型教育」を乗り越える工夫が、様々になされるようになりつつあります。ここでいう「導管型教育」とは、「知識のある側から、知識がない側への一方向的な知識伝達」とします。

 もちろん、人材育成が組織の中で行われている以上、組織が自己の戦略や目標を組織メンバーに「伝達」する局面は、ゼロにはなりません。また、ゼロにする必要もありません。

 しかし、提示した様々な情報が、各人において解釈され、行動につながるようなより深い理解を得るためには、学習者の側が、自分の考えや経験を「外化」して、知識を構築していくやり方 - いわゆる「協調学習的!?な学習機会」が求められるのだと思います。

 結局、人は「腹オチ」したことしか、行動しません。
 否、「腹オチ」しても、そのままでは、行動しないくらいです(泣)。
 それほどまでに、「他人を変化させる」ということは、難しいことなのです。
 そりゃ、そうだよね。

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 しかし、全くの経験がない一般の方を対象にした「協調学習的!?な学習手法」を、研修などで実践してみても、なかなか苦労があるようです。

 みんなで活動をする時間になっても、ぐつぐつして活動がすぐには、始まらなかったり、不平不満を述べる輩があらわれたり(泣)、議論があっちゃにいったり、こっちゃにいったりして、よじれて、ねじれて、蝶蝶結びになっていたり(泣)。

 「協調学習的!?な学習手法」は、いったんはじまると、同時多発的に進行していきますので、外部からの介入がなかなか難しくなります。

 で、結局どうなるかというと、島型の机配置で、研修をしている場合には、「沈没しかけている島」とか「ダークな香りをぷんぷんさせている島」とか「今にもキレかけの人と、ふんぞりかえった人が対面している島」が、ここあそこに、生まれることになります(泣)。

 おー、こわ。

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 こうしたことを最低限防止するために、協調学習を導入する「前」にできる、もっとも、ベーシックなやり方は、下記の3つを意識することです。

1.意義付け
 なぜグループで、複数の人々が話し合いながら、学ぶのか、その意義についてキチンと説明すること

2.ゴールイメージ
 話し合った先には、どのようなゴールを設定しているのかを、きちんと共有すること

3.ローンチセッション(Launch Session)
 本当の課題の前に、簡単な予備課題をやってみる。その課題をグループで解決することを通して、学習者個々人が、どのように振る舞ったらよいのかを体感させる。

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 1の「意義付け」は「協調して学ぶことの意味をきちんと学習者に理解させる」ということです。

 特に、グループでの話し合いが絡み合って、都合が悪くなりだすと、

「そもそも、なんで、みんなでやる必要があったんだ? オレは一人でやった方が早いので、今から一人でやらせてほしい」

 と吠えてくる、いわゆる「困ったちゃん」が生まれます。こうしたことを防止するためには、その「意義」や「意味」をきちんと理解していただく必要があります。
 「早さ」が大切なわけじゃないんだよ、と。

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 2の「ゴールイメージ」は、各人に「ゴール」を意識してもらうことです。これが曖昧だと紛糾することがままあります。
 協調して話し合った先に、何が求められているのか。
 たとえば、いろいろな人から意見をもらって、一人一人の理解を深化させることが目的なのか、それとも、みんなでひとつの解をつくるのが目的なのか。
 そこでたどりついた結論が、その後に、どのように活かされるのか。
 そういうゴールイメージを共有しておく必要があります。

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 3の「ローンチセッション」は、いわゆる予備課題の実践ですね。「ローンチ(Launch)」とは「発射」のことですが、「その前にやっておくべき課題」のことを「ローンチセッション」と呼ぶ場合があります。

 この予備課題をグループで解決して、各人に理解していただきたいことは、

(1)一人一人がアイデアを出し合うことが重要なこと

(2)他人のアイデアを発展的に借用したり、付け足しすることで、さらに付加価値の高いアイデアを生み出してもよいこと

(3)必要な場合には、話し合うときのルールや、役割を設定することについても、グループで検討してもよいこと

 です。

 特に、(1)と(2)は、個人の学習観や知識観と関係してくることです。あまりにも「個人主義バリバリな学習観や知能観をもっている個人」、あまりにも「学校化された学習観や知識観をもっている個人」は、(1)や(2)に関して「抵抗」があります。ですので、本当の課題に入る前に、「準備(Preparation)」をしてあげる必要があるのですね。少しほぐしてあげる必要がある。これらは、10年くらい前の、初期の協調学習研究でよく言われていたことです。

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 今日ご紹介したのは、かなりカッチリした目標がある中で、部分的に、協調学習的手法を取り入れるための、最低限の留意点です。グループワークによっては、こういう導入のやり方ではない場合もあるので、そこらあたりはご注意ください。もちろん、これ以外にも、やり方は「腐る」ほどあります。これらについては、また機会をみて、お話しします。

 上記のような条件下では、経験的には、この3つをしっかり留意して「仕切り」を事前に行っておけば、盛り上がるかどうかは保証できませんが(笑)、「かなりの確率でコケない」とは思います。

 それに対して、経験のないノービスの方がやってしまいがちな罠は、

「あのー、何でもいいから、グループで話し合ってください」

 という指示を行ってしまい、学習者を放り出してしまうことです。

「講師やファシリテータが介入したり強制したりしないのがグループ学習なのだから、指示は避けて、学習者に任せてしまおう」

 と考えてしまいがちなのですね。
 で、「何でもいいから」という発言がでてしまう(泣)。

 もちろん、そういう非構成の協調学習的手法も奏功しないわけではないですが、一般に、そういう場合は、学習者とファシリテータに高いリテラシーと経験と覚悟・・・それより何より「長い長い時間」が求められるように思います。

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■2012/04/23 Twitter

  • 16:23  対話型鑑賞法についてUSTがあります。@tomokihiranoさんのプレゼン>【報告】ミュージアム・トリップ vol.3 対話式鑑賞法って何!?(総合研究大学院大学・助教 奥本素子先生のブログ): http://t.co/VEOueL2Z
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■2012/04/20 Twitter

  • 23:34  ま、デジタル機器だらけ、ネット満載の小生の自宅環境が、TAKUZOの発言につながっているんですけど・・・悪いね。「アンプラグド(Unplugged)な時間」が必要なのは、我が家全員かもしれませんね。反省だね。
  • 23:29  愚息TAKUZOの発言には時々空恐ろしいものを感じます。リアル店舗で欲しいものがなければ「じゃあアマゾンで買おうよ」。わからないことがあると「iphoneで調べよう」。見たい映像があれば「youtubeに入力すりゃいいじゃん」。そう簡単にネットは使わせんぞ、手足を使え。
  • 22:37  RT @clione 完璧な事前研修を受けて行くことも、手厚く準備して迎えることも無理な時代なので、お互い臨機応変にアジャイルに。RT 職場配属をひかえた新入社員はどのような状態にあるか? http://t.co/8eGnzujo  [in reply to clione]
  • 20:00  バレた?(笑)@i_nosix いつにも増してノリノリな日記な気がしたのは説教臭さを消そうとしてるのかと勘ぐってみたり RT 職場配属をひかえた新入社員はどのような状態にあるか? http://t.co/iMWDTvCb  [in reply to i_nosix]
  • 19:48  全く新しいサイエンスカフェ?:サイエンス・ガールズ・トークだそうです!RT @tatthiy 5/12(土)に「女子のためのサイエンスイベント」 Science Girls' Talkを実施!詳細&申し込みはこちらから! http://t.co/1ITdeSFC  [in reply to tatthiy]
  • 13:02  至言。いつも我々は「過渡期」を生きている>こんにち我々は「過渡期」にいる...ところで、「過渡期」でない時って、これまで、あったかしら。(ブルーノ・ムナーリ)
  • 11:51  興味深いですねRT @m_t_t_b: これまでの体験と価値観の共有/を新人+先輩に実施して/うまくいったことがありますよ! RT 職場配属をひかえた新入社員はどのような状態にあるか?:不確実性の中でのアクション: http://t.co/8eGnzujo
  • 11:03  さっきから、うんうん唸っていてるのに、1行も書けない。最初の書き出しが、思い浮かばないなぁ。さよなら、旅にでます。
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  • 08:22  分布も気になってきますね。何歳台が多いのか>25歳以上の大学生比率:OECD平均22.0%、日本1.7%(日経)
  • 07:12  ブログの更新ができなくなった・・・。システムトラブルか。。。
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■2012/04/19 Twitter

  • 20:15  皆様、お疲れ様でした!RT @YukiAnzai: 山内研・中原研交流会 at UTcafe
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