合コンで名刺をだしたときの一言

「うちの会社には2種類の人種がいると思っています。"合コンで名刺をだしたときに女の子からいわれる一言"で、その2種類の人種を区別できますよ・・・」

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 ある研究のインタビュー調査で、先日、耳にした若手の言葉です。
 若手のビジネスパーソンを対象にしたインタビュー調査は、ずいぶん前にもやったことがあります。35歳くらいまでの若手の方々に「自分の職場」、あるいは自分の「仕事を通じての成長」についてインタビューをさせていただいているのです。僕の腹づもりでは、3月までに、30名ほどの方にインタビューをさせていただきたいと考えています。

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 インタビューをしていると、思わず「若手のリアルな本音」が漏れてくることがあります。その中でも、何人かの方から、「会社の中には、成功経験を共有できている世代とそうでない世代がいる」という話がでてくることがあります。

 典型的には下記のようなストーリーです。

「うちの会社には2種類の人種がいると思っています。成功世代と失われた世代です。つまり、バブル期に強烈な成功体験を経験した世代と、バブル後の何もかも灰色にしか見えない若い世代です。

成功世代は、合コンにいってうちの会社の名刺を出せば、女の子から、"キャー、○○さんの業界、すごいんでしょ」と言われた世代です。自分の会社や事業に絶大な自信をもっているし、それが揺るぎないものだと思っている。

でも、今、自分のような灰色世代が、合コンで、うちの会社の名刺をだしても、"最近、○○くんの業界って危ないんでしょ?、大丈夫?"としか言われません(笑)。こんな状況だと、若い世代は危機感をもたざるをえないんです。

でも、上の人には、そういうものがない。あと20年もあるハズのに、"自分だけはまだ逃げ切れる"と思っている。もっと上の世代はいいんです、、、逃げ切れますから。でも、自分とちょっと上の世代は、この時代の変化を逃げ切ることはできないんです。だって、冷静に考えても、20~30年もあるんですよ(笑)。

同じ会社でも、それだけ違うんです。でも、会社は一致団結して物事に取り組めという。でも、どうやって、みんなで、同じ未来を見据えろ、というのでしょうか」

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 思わず言葉を失います。

 もちろん、こうした若手の意見に100%与するわけではないですし、それが事実かどうかはわかりません。当然、上の世代も言い分はあるでしょう。世代間ギャップはいつの時代に存在しており、それをことさらにあおることは、僕の本意ではありません。

 しかし、それが複数の若手ビジネスパーソンから語られる、典型的なモティーフであることは「事実」です。

 ここで重要なことは、おそらく「合コン」ではありません(笑)。まして、誰かだけが「悪く」て、誰かだけが「よい」ということではないように思います。

 そうではなく、

「ある時期に会社や業界が上り調子だったときの成功体験をもっている世代と、成功体験をもっていない世代のあいだのギャップをいかにするか」

 ということです。その違いが、職場で起こっているさまざまな事柄、たとえば、チームワークが保てない、めざすゴールを共有できない、といったような問題に影響を与えているのかもしれません。
 
 ここで、両者の違いは、Epistemology(認識)の違いです。そして、この認識は、若い頃の経験に深くねざし、そこから「学習」されたものです。それを学習棄却(Unlearn)することは、当然、容易なことではありません。
 両者の認識の違いも「経験」にねざしているだけに(合コンで、もてた、もてなかった、という経験だとしたら、さらにやっかいかも・・・笑)、やっかいなのかもしれません
 。なぜなら、「ある人の経験」は、なかなか否定できないものだからであり、反証されるべき類のものではないからです。経験は常に絶対化しやすく、あなたの視野を、あなたに気づかれるまもなく、縛ってしまいます。

 同じ会社につとめながら、「キャー」と言われつづけてきた世代、「あんたの会社、大丈夫?」と言われている世代・・・。

「僕は、自分とは"違う人種"だと思っていますから」