医療の現場の「学び」と「成長」

 先日、獨協大学医学部の池上敬一先生が主宰なさっているカンファレンスで、パネルディスカッションをつとめた。

 医療の現場において医者・看護師・コメディカルなどの医療従事者の「学習」や「成長」というものが重要になってきている。そのことについて、様々なパネラーから研究報告がなされた。

 駿河大学心理学部の青山先生が「状況論」について、筑波大学心理学系の香川先生が「越境と学習」について、東京大学医学部の大西先生が「診断推論」について、日立の堤さんが「評価」について、そして、僕が「患者安全を重視する職場文化と学習」について話題提供を行った。

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 池上先生のご発表によると、米国医療の質向上委員会の発表では、米国では推定値44000人から98000人の人々が医療過誤で亡くなっている、という。医療における失敗は「患者の生命」につながるだけに、その技術力向上が非常に重要になる。

 しかし、重要なのは、いわゆる「医療技術」だけではない。
 日本では年間医療事故が946件起こっているそうだが、その原因のうち、実は4.4%が純粋に医療技術に起因する理由なのだそうだ。。
 57.6%は、「連携ができていなかった」「コミュニケーション不足だった」などの、いわゆる「ノンテクニカルスキルの不足」によるそうだ。
 医療従事者同士のコミュニケーション不足、連携不足などのヒトの問題が、医療の質に与える影響は非常に大きい。

 こうした事態をふまえ、2009年7月、英国議会は「患者安全報告書」をまとめ、ノンテクニカルスキルを医学教育のカリキュラムに導入することを提言したそうである。

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 いずれにしても、医療の現場においても、学習すること、成長すること、人々がコミュニケーションすることが重要だ、という認識は高まっているようである。
 僕は医療は全くの門外漢であるが、自分の研究が、もしかすると、そういう現場の改善に役立つのかもしれないな、と漠然と感じた。

追伸.
 下記は印象深かった話。

●医者にとって最大の学習の機会は、病棟(in situ)において、医者同士がディスカッションすることである

●シグニフィカントイベントアナリシス
 医療の現場においても「対話の場」が重視されているようである。ある診療所では、定期的に、医療スタッフが集まる機会がある。20分間「医療の現場で、自分が最も危険だと思っていることを語りあう」のだそうだ。
 ある産婦人科の女医さんが対話のテーマに選んだのは、「堕胎を行う自分は、それを否だ思っている。そういう自分の認識は、どうなのか?」というテーマだったそうだ。

●獨協大学では、病棟の近くに「シミュレーションのための部屋」を確保しているという。「病棟」から遠くなると、どうしても、シミュレーションからは遠ざかってしまうからである。

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働く大人の学び論・成長論
仕事の経験を積み重ね、内省する
リフレクションをアクションにつなげる
マネジャー研修で用いられているそうです

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