保育園のこと

 昨夜、自宅に帰ったら、カミサンが「動揺」している。どうしたのか、と聞いたら、急に、市役所から連絡があったのだという。

「入園を希望されていた認可保育園に空きがでましたので、明日の午前中までに入園するかどうかを決めてください」

 今通っている保育園は無認可保育園。非常に小さく、アットホームな保育園である。
 物理的スペース自体が狭いので、部屋のどこにいても目が届く。どちらかというと、先生と子どもの関係も、家族みたいな関係に近い。

 対して、認可保育園は「大規模」である。1クラスの人数が40名以上もいる。それはどちらかというと、「学校」に近い。制服もある。

 さてどうしたものか。
 意志決定の期限は明日までである。

 結局、どうするかを決めるために、「無認可 / 認可」「メリット / デメリット」の2軸で、2×2のクロス表をつくってみた。それぞれの枠に、メリットとデメリットを箇条書きする。我が家の意志決定は、すべてこれである。クロス表、最強。

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 えっ、無認可と認可でしょ?、なんで悩む必要があるの?

 人はきっとそういうかもしれない。
 そうなんだ、そもそも、本来、悩む必要なんてないのかもしれない。これまでずっと望んできたことであり、喜ばしいことだ。心からそう思う。
 認可には園庭もあるし、先生の数も多い。僕は専門家ではないのでよくわからないけれど、保育環境という観点から言えば、認可を選択するのが妥当なのかな、とも思う。

 でも、たぶん、どこかで踏ん切りがつかず、クロス表までつくることになったのは、

「そんな大規模な保育園で、うちのTAKUZOがやっていけるのか」

 と、どこかで心配しているからだと思う。頭ではロジカルな判断をくだしていても、感情がそれにおいついていない、というのが正確なのかもしれない。

 TAKUZOは、おっとりとした子である。ケンカも好まない。どちらかというと、女の子に近い。物静かで、控えめで、甘えんぼうである。病弱なことも、その背景にあるかもしれない。少なくとも親の目にはそう見えてしまう。

 今まで通っていた無認可の保育園は、どちらかというと、そういう事情を知った上で、TAKUZOを受け入れてくれた。
 今度の大きな保育園でTAKUZOはサバイブできるのだろうか。たぶん、取り越し苦労になるんだろうけど、それが親としては心配なのかもしれない。

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 結局、あーだこーだ話し合った結果、認可保育園を選択することにした。
 いつかはTAKUZOも、様々な人にもまれながら、生きていく必要がある。そうであるならば、最初はいろいろあるかもしれないけど、より「大きな社会」に参加していくことが重要なのではないだろうか。
 TAKUZOは、親が思っているより、いろいろなことにチャレンジできるはずである。新しい環境でも、きっと適応できるだろう。もし万が一適応できなくても、そのときは、今までの保育園に帰ればいいではないか。

 結局、こういうことになった。

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「たかが保育園をかわるくらいで大げさな」と人は思うかもしれない。もし、かつての僕が、他人のこういう話を聞いたら、そう思っただろうから、容易に想像がつく。「そう、大げさ」なのである。でも、自分の子どもを前にして、意志決定をする段になったとき、様々な思いが去来する。

 たかが保育園
 しかし、されど、保育園なのである。
 
 新しい場所でも、TAKUZOが明るく楽しく生活できれば、それ以上に、僕にもカミサンにも、望むものはない。
 ほんと、それだけなんだよな。