Learning bar「みんなでリーダーシップ開発を考える」が終わった!

 昨日は、Learning bar(ラーニングバー)でした。

 テーマは、

 リーダーシップ開発論の最前線:
 みんなで「リーダーシップ開発」を考える

 です。

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 マイクロソフト株式会社でリーダーシップ開発をご担当なさっている小林いづみさん、そして、アカデミアからは、神戸大学大学院 伊達洋駆さんを講師にお招きし、

「リーダーシップを開発するとは、いったい、何をすればいいのか?」

「リーダーシップ開発の最前線では、どのような取り組みがなされているのか・・・最新の研究知見はどこにあるのか?」

 について、皆さんでディスカッションを深めました。

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 おかげさまで、本日のLearning barも満員御礼!!
 なんと、、、460名の方々からご応募をいただきました。
 ありがとうございました。

 抽選の結果、企業人材育成担当者、官庁の方、大学研究者、大学院生などから約260名程度の方々の参加者を得ることができました。

 最近、Learning barは満員御礼が続いており、参加登録いただいても、すべての方々の御希望にはお応えできないケースも生じてきています。

 限られたスペースと人的リソースの中で運営し、かつ、参加者のバックグラウンドの多様性を確保する必要がある関係上、すべての方々のご要望にはお答えできない可能性があることを、なにとぞご理解下さい。

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 冒頭は、中原から趣旨説明です。

 Learning barは、

 1.聞く
 2.聞く
 3.聞く
 4.帰る

 という場ではなく、

 1.聞く
 2.考える
 3.対話する
 4.気づく

 ような場であるということをご説明いたしました。

 今回のテーマは「リーダーシップ開発」
 最近、企業でのヒアリングをしていると、下記のような言葉をよく耳にします(ここまで極端ではないですが・・・)。

だめだめ、うちの会社の「上」には、ビジョンなんかないんだから。数字をあげろー、だの、行けー突撃ーだの、言っているだけなんだから。やっぱり、ビジョンを描いてくれる次世代リーダーが必要ですね。で、今年からチャレンジしてるんです。

うちの会社は、強いリーダーがいなくてね。まとまるもんも、まとまりゃしねー。人が全然まとまらないんですよ、テンデバラバラ。で、去年あたりからリーダーシップの開発をはじめたんですけれどもね。

 しかし、非常に興味深いのはここからです。
 どのような施策によって、どのようなリーダーを育成しているのですか、と「問い」を具体的にすると、非常に千差万別なのです。こちらも、ややオモシロおかしくデフォルメしていいますと、

1)リーダーって言ったら、根性じゃないですか? ちょっとブートキャンプに派遣してまして

2)リーダーっていったら、コミュニケーションでしょう。コミュニケーションスキルの研修を半日で。

3)リーダーって言ったら、まずは知識ですよね。財務会計の知識を1日ほどで・・・

 という風になってくる場合もあります。

 つまり、そもそも
 何がリーダーで
 どういう状況がリーダーシップの発揮で
 そうした状態をどのように開発するのか

 に関する深い思索がないままに、「なぜか開発が進行する」という事態になる傾向があるのです。

 そこで、今回のLearning barでは、小林さん、伊達さんから、これを考えるための「良質の素材」と「良質の問いかけ」をいただくことにしました。

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 小林さんのご発表は、マイクロソフト社で実施しているリーダーシップ開発についてです。

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 マイクロソフト社は、いわずもがなのグローバル企業。しかし、2000年代初頭、同社のリーダーシップ開発は、それぞれローカルに任されていて、バラバラの状況でした。

 そのような状況に変革がもたらされるのが2005年。各国の人材開発担当者が本社に集められ、グローバルに統合したリーダーシップ開発のフレームワークをつくりはじめます。そこから、開発担当者たちの試行錯誤がはじまりました。

 各国から人材開発担当者があつまり、「ヒッピーチーム」というグローバルチームが組織されます。マイクロソフト社におけるリーダーシップ開発のプロセスは、この「ヒッピーチーム」の学習のプロセスそのものでした。

 現在、同社では「経験」に基づくリーダーシップ開発を進めています。「メンタリング」や「ラーニングサークル」という施策を組み合わせながら、リーダーシップ開発を「長期的な投資」ととらえて行っているそうです。ちなみに同社における「メンタリング」とは、「少し有能な他者とのキャリア発達関係」、「ラーニングサークル」とは、リーダー候補生によるインフォーマルなグループコーチングとアクションプランニングのことをさしています。

 小林さんの話で非常に印象的だったのは、

「リーダーシップ開発とは、プログラムではない、プロセスである」

 という言葉です。

 ここでいう「プロセス」とは「職場の仕事経験」をさしています。同社のリーダーシップ開発は、職場における挑戦→経験→内省→学習→行動変容といったかたちで、リーダーシップが開発されることを基礎的なコンセプトとしています。

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 神戸大学大学院の伊達洋駆さんには、

1)リーダーシップ開発をめぐる先行研究の概観
2)リーダーシップ開発の最先端の理論的・実践的動向
 
 をお話しいただきました。

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 周知のとおり、リーダー研究、リーダーシップ研究の潮流は、1)特性論、2)行動論、3)コンティンジェンシー論、4)変革論というかたちで進行し、現在は百家争鳴の状況にあります。まず、伊達さんにはこちらの解説をいただきました。

 その上で、伊達さんはマインドルやフィドラーの研究を引用しながら、「リーダーシップがもたらす罠」についてお話しいただきました。

 このことを僕の言葉で表現するならば、

「わたしたちは、ピンチやチャンスになれば、強いリーダー(リーダーシップ)≒ヒーローに頼ってしまう」

 傾向があり(リーダーシップロマンス)、また、

「説明がつかないことを、リーダーシップという言葉で誤魔化してしまう傾向」があるということです。このことは、結局、「本当は解決しなければならない組織の問題、職場の問題を、リーダー不在という問題に置き換えてしまうこと」につながります。

 非常に面白い視点ですし、実務家の方々には刺激的な問いかけだと思いました。

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 その後は、Learning bar恒例のディスカッションタイムです。

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 今日も、非常に熱いディスカッションがかわされていました。例の如く、福武ホールの温度は急上昇です。

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 質疑応答は、付箋紙をだしてもらいました。大学院生たちがそれを集めます。僕は必死に分類します。
 最後は、中原によるラップアップで終わりました。講師の方へのわれんばかりの拍手の中、無事終了です。

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 最後になりますが、小林さん、伊達さん、本当にありがとうございました。とてもよい場になりました。この場を借りて感謝いたします。

 また、Learning barの開催をいつも支援してくださっている大学院生諸氏に心より感謝いたします。事務局の坂本君もありがとう。

 そして、議論にご参加いただいたすべての方へ。
 感謝を込めて。

 本当にありがとうございました。

 次回のLearning barは、7月31日。
 テーマは、まだ仮称ですが、

 脱「研修屋」宣言!?:人材開発部門の新たな役割
 企画立案から教育評価まで

 というかたちでお送りしたいと思います。

 経営と現場を奔走する2人の実務家として、

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
 早川勝夫さん
 
 横浜ゴム株式会社 人事部人材開発グループ
 若林真知江さん

 をお招きします。
 
 教育評価の専門家として、

 日立総合経営研修所
 堤宇一さん

 にご登壇いただきます。

 ぜひ、お楽しみに。

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追伸.
 これから本郷。日本教育工学会の理事会、評議会に参加。永野和男会長のもと、新たな体制がはじまる。
 美馬のゆり先生と席が隣になった。美馬さんの研究関心と、僕が去年以来思っていることが、かなり似ていて、びっくりしたし、勇気づけられた。
 世界はそちらに進むか?