組織デザイン

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 「明日の企業教育」、どうなる? 
            きっと・・・こうなる!

 10月31日 東京大学・安田講堂 お申し込み受付中!
 1150名を突破!ありがとうございます。
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試論:教育工学は「何」を<デザイン>するべきなのか?
教育現場の持続可能な変革の支援をめざして

 のポスターセッションは、無事(!?)、終了した。

 同時刻に予定されていた自分の指導大学院生たちの発表があまりに気になって、高校時代以来の「中抜け」をしてしまい、各位にご迷惑をおかけした。

 この場を借りて「も」お詫びします。本当に申しわけございませんでした。

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 僕の発表の要旨は下記である。

▼教育工学研究は、その生まれ出自から、教育現場の変革(改善)に資することをめざす「実践志向」の学問であるとされてきた。

▼「実践的とは何か?」については、様々な答えが存在するが、そのひとつが「持続可能性」であり、「スケールアップ(普及)」の問題である。近年、これらに関する議論が、学習研究でははじまっている。今回はこのうち「持続可能性」を問題とする。

▼しかし、「実践的であるはずの教育工学研究」を通してつくられた教材・システムが、教育現場において利用され、「教育現場の持続可能な変革」を主導した事例は必ずしも多いわけではない。

▼教育工学がもし「実践的」であることをめざすのであれば、「持続可能性」の問題にチャレンジせざるをえない。もし、それを標榜しないのであれば、その限りではない。

▼持続可能性を向上させるためには、従来教育工学が注力してきた「教室内にいかにイノベーションを生み出すか」という命題に対する知的格闘だけでなく、「そのイノベーションに関連し、支える人々のあり方」=組織デザインに着手せざるを得ない。

▼教育工学は、従来の「教授デザイン」や「学習環境デザイン」に加えて、「組織デザイン=組織に対する介入や実態の把握」を研究の範疇にいれるべく、理論的な考察を行う必要がある。関連する領域には、組織学習・組織行動学などの研究領域があり、両者の連携は、今後密になることが期待される。

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 ポスターセッションでは、幸い多くの方々にお話を聞いていただく機会を得た。ポジティブな反応も、ネガティブな反応もあった。

 印象的には、小中学校の現場に対して、外部から介入を行いつつ研究を行っている先生方、大学の教育現場の改善に従事している先生方からは、比較的ポジティブな反応だった。

「自分たちがアタリマエのようにやってきていることなのに、それを研究の場で報告すると、"ノイズ"のように扱われてきた。

なぜ、現場にとって必要で、誰もがアタリマエにやっていることが、研究の現場で報告できないのか。あるいは、言説転換をせまられるのか?」

 現場の先生方とともに研究を進めてきたある方が、口にした「ノイズ」という言葉が、非常に印象的であった。

 反面、

「それは、教育工学がやるべきことではない」
「これまで教育工学がやってきたことだって、十分、実践的だった」

 とかいう、ご意見もいただいた。

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 こうした意見に対しては、おそらく、具体的に研究論文を引用しつつ、論争を繰り広げなければならないと思う。
 いつかその機会がくるとよいな、とは思うが、少なくともここでは下記を指摘しておく。

「教育工学が何をやるべきか」、あるいは「何が実践的か」ということについては、一概に定義できるものではない。

 そして、その問いに対する答えは、常に移ろいゆくものである。その意味は、研究者間、あるいは、研究者をとりまく人々 - 社会における「言語ゲーム」の中に埋め込まれている。

 ここで敢えて「研究者をとりまく人々」と敢えて書いたことに注意が必要である。研究者は、外の社会から無縁ではない。

 学問のあり方を考えるためには、

「自分たちが外から何者として見られているのか」
「自分たちが外から何をすることを期待されているのか」

 ということから、僕らは自由ではいられない。

 いずれにしても、必要なことは、こうしたアポリアに対して批判的に話し合い、考察する機会をもつべきである。それに関しては、及ばずながら、僕は努力を惜しまない。
(先日は、教育系の関連学会の若手研究者の会にご招待を受けてディスカッションをしてきた)

 今年の学会は、面白かった。
 来年は、東京大学本郷キャンパスが会場である。教育工学誕生から25年の記念すべき大会となる。

 そして人生は続く。

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追伸.
 サントリーの白州のウィスキー蒸留所に出かけたSさんから、おみやげをいただく。チェリー樽の樽出原酒12年もの。

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 濃厚。うまい。
 今日もほろ酔いである。