Apple University : アップル社がコーポレートユニバーシティを設立!

 ipodやiphoneの成功で、もはや、コンピュータメーカとは呼べなくなりつつある米国Apple社。そのAppleが、「Apple University」を設立するそうである。

Apple University
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0810/23/news037.html

 コーポレートユニバーシティとは、「企業が社員教育のために企業内に設立する教育メカニズム」の「総称」のこと。もちろん「総称」と言うには理由がある。

 もともとは、「独立した教育専門部門において、全社の経営戦略に対して、全社的に教育カリキュラムを企画・開発し、全社の体制で教育を実施すること」をめざすのがコーポレートユニバーシティである。
「経営戦略との同期をめざすこと」「全社に対してサービスを提供すること」が、上記の定義の要諦であろうと思われる。

 が、しかし、その実態は、企業によって多種多様である。

 企業の中には、自社ブランドを向上させるため、コーポレートユニバーシティという名称を敢えて用い、「従来の研修の仕組みや教育提供のあり方と、変わらない体制と内容で教育を提供しているところ」も、ないわけではない。

 もちろん、多くの企業はそんなことはない。「ユニバーシティ」の名前に負けない - ユニバーシティよりもずっと高度で素晴らしいカリキュラムを提供しているところも多々ある。

 先ほどは「人生いろいろ、コーポレートユニバーシティいろいろ」なので、「総称」という言葉を敢えて使った。その定義と実態は、「揺れ」の中にある。「揺れ」の中にあるからこそ、その意味が問われている。

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 今日では、既に、全世界に約2000から5000もの、多種多様なコーポレートユニバーシティが存在するといわれている 。

 日本においても、富士通、ソニー、トヨタなどの名だたる企業が、2002年に企業内大学を設立し、話題となった。
 2002年はまさに、日本のコーポレートユニバーシティ元年であったといわれている。

 近年では、博報堂、資生堂などが、ぞくぞくとコーポレートユニバーシティを設立し、話題になっている。博報堂の「博報堂大学」の試みについては、2008年5月30日のLearning barでも、ご出講いただいたので、記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれない。博報堂は「構想力」というコンセプトをかかげ、クリエィティブな人材を組織的に育成する試みを行っている。

Learning bar 2008年5月30日「クリエイティブ人材を育成する!? - コーポレートユニバーシティ「博報堂大学」の挑戦」
http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/05/learning_bar_13.html

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 このたびのApple Universityの設立に鑑み、Appleは、Yale大学経営大学院のジョエル・ポドルニー氏を抜擢したという。Yaleとの結びつきを強めて、教育体系を構築しようとしているのもしれないが、詳細はまだわかっていない。

 個人的には、Apple Universityに、どの程度、スティーブン=ジョブズが関与し、後継者育成(サクセション・プランニング)を行うかが、非常に興味深いところである。

 よく知られているように、GEのジャック=ウェルチは、GEの企業内大学「クロトンビル」での後継者育成に、自分の時間の3分の1を使った、と言われている。

 ジョブズは、このところ「健康不安」が、時折ニュースになっている。その真偽について僕は詳しくない。
 しかし、確かなことは、Appleは、ジョブズという「一人のカリスマ」による経営を、これまで続けてきたことである。「彼個人の健康不安」は、Appleという「組織の株価」を左右するとも言われている。

 その中で、ジョブズが「後継者」を育てること、さらには後継者がリーダーシップを発揮できるよう組織開発を行うことが、求められているのではないか、と邪推する。

 もしこの邪推が正しいのだとすると、ジョブズに求められるのは「強力にコミットしつつも、フェイドアウトすること」であるようにも思われる。

 上記は、一見、矛盾のある表現に見えるかもしれない。
 しかし、世の中で最も重要なことは、そのようなものなのかもしれない。