「失敗する研修」の原因!?

「失敗する研修」、つまり、「業績に結びつかない研修」は、なぜ、生まれてしまうのか?

 一般に、このような「問い」を耳にすると、つい「教育畑」の人は、「それは研修の質でしょう」とか「インストラクターの教え方のうまさ」ではないですか?」と答えてしまいがちです。
 そして、「ちゃんと教授設計を行ったのですか?」とか、「学習目標は明示されていたのですか」という質問をしてしまいそうです。

 確かにそれはもっとも。全く間違っていません。

 しかし、研修の効果 - 研修が業績に結びつくかどうか - は、「研修やインストラクタークオリティ」そのもの「だけ」でなく、むしろ、「研修に来る前」と「研修が終わった後」で決まる部分が多い、という主張をなさっている人がいます。

研修に来る前   40%
研修       20%
研修が終わった後 40%

 ブリンガーホフさんの主張によれば、研修が失敗する原因がどこにあったかを分析すると、上記のように整理できるそうです。
 要するに、「研修に来る前」と「研修が終わったあと」もポイントである。つまり、KFS(Key factors of Sucess)は、「職場」にある、と。

 それでは、具体的に「研修に来る前」「研修が終わった後」に研修の成否を握る要因は何でしょうか。いろいろありますが、受講生の「マネジャー」がからむ要因が非常に大きいと言われています。

■研修に来る前
・知識や経験レベルが適切な人を受講生として送り込んだか?
・研修で何を学んでくることが期待されているか、明示したか?
 などなど

■研修が終わったあと
・研修で学んだことをリフレクションさせたか?
・研修で学んだことを試す場を与えたか?
 などなど

 要するに、マネジャーには「研修のレディネス確保」と「研修後の転移促進」を行って欲しい、ということでしょう。そして、それがうまくいかないとき、業績に結びつかない研修ができるということでしょうか。

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 しかし、実際はどうでしょうか。

 僕はなるべく多く人材育成の「現場」に赴くことにしていますが、そこから聞こえてくる声は、全く逆です。

 たとえば、研修の前には

「おー、よく仕事を頑張ったから、息抜きに研修でもいってこい」

 こういう台詞を、ついマネジャーは口にしてしまいがちdふぇはないでしょうか。かくして送り出された受講生の中で、肝のすわっているものは、インストラクターにこういう人もいるそうです。

「あのー、仕事が忙しいんで、研修は、来ていたことにしてくれませんか?」

 また、研修の後には上司から声をかけられます。

「ところで、田中君、先週一週間は、職場にいなかったけど、どこいってたの? えっ、研修、あっそうだったんだ、僕が行けといったんだよね、忘れてたよ。もういいよ、席に戻って、ごめんね」

 これで効果がでるのなら、誰も苦労しませんね。

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 研修をいかに効果的に実施するか、という問いは、単にインストラクションの設計にとどまりません。

 職場のマネジャーをいかに巻き込み、支援するか。あるいは、いかに巻き込む仕組み作りを行うか、ということを、実務的には、どうしても考えていかざるをえないのだと思います。

 そして、このことは理論に反省を迫ります。もし企業人材育成の理論を構築する場合には、このあたりも含めた理論体系を構築しなければなりません。つまりは教授の理論だけでは不足であると言うことではないかと思います。

 このあたりが問題です。