1年半のリフレクション・・・講師の育成について

 先日、某民間教育企業の方々が来研した。来週行う講演の打ち合わせのためである。

 打ち合わせでは、雑談ふくめいろんな話をしたけど、特に、下記のようなお話が、とても印象的だった。

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「最近の研修では、事後アンケート結果は、かなり厳しく採点されますね。手を抜くと、5段階で、1とか2とかを平気でつけられてしまいます。

この背景には、人事教育部が人事権を手放して、事業部に移管したことも大きいかもしれません。昔は、"人事のやることだから、波風たてず、まぁ4とか5をつけておこう"とみんな思っていた。でも、最近は、あまり人事は怖くないのですね。

あとは、その会社に一生居続けるみたいな意識が、前よりも薄れていることも大きいかもしれませんね。一生居続けないのなら、本音で言いたいことをいって行こう、といったような感じになる。

あとは純粋に、特に若い人には"教育を評価するシビアな目"ができているのかもしれませんね。特に、若手の人は、講師の善し悪しを厳しく見ていますよ"。

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 だからというわけでもないんだろうけど、その企業では、「講師の育成」に大変多くの時間と労力をかけている。

 講師はすべて「マネジャー経験者」を候補者として公募する。それまでに、「教壇にたった経験」などは敢えて問わない。

 そのかわり、講師候補者5名~8名をひとつのグループにして、そのひとつのグループに、「講師の講師」、すなわちトレーナーが6名と、アドミニストレーションスタッフ1名をたした計7名で、1年半かけて、じっくり講師を育成する。
 講師候補者5名から8名に対して、スタッフが7名つくだから、ほぼマンツーマンの濃さである。濃い、あまりに濃い。

 最初は、先輩講師の授業を観察するところからはじめる。次第にロールプレイをするようになり、最後には、自ら教壇にたつ。何をするにしても、「リフレクション」を厳しくもとめ、自分を見つめることを課すのだという。

 こんな話をお聞きしていると、大学や教職大学院でも、ここまでの執拗さ、時間、労力をかけて、インストラクターや教員を養成しているのかなぁ、と思った。

 講師候補者の中には、1年半にわたる厳しいリフレクションのプロセスの中で、疲れ果て、脱落していくものもいるという。

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「教え方のうまさ」「ファシリテーションのうまさ」なんていうものは、一朝一夕で身につくものではない。
 そこには、一定期間のまとまった時間、徹底的なフィードバック、厳しいリフレクションが必要であると思う。

 よい教育機会をつくるためには、こうした地道な努力しかない。

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追伸.
 今日は、修士大学院生の中間審査である。中原研究室からは、今年度、4名の修士学生がこれにチャレンジする。みんな、昨日はよく眠れただろうか。健闘を祈る。