大学と履修証明書

 本日付朝日新聞によると、昨年末改正された学校教育法により、大学が「履修証明書」を発行することができるようになった、という。

 米国の大学では、「社会人の能力開発手段」のひとつとして、多くの「履修証明書・教育プログラム(certificate program)」が提供されており、多くの収益をあげている大学もある。

 僕が留学していた頃、ボストン近郊のいくつかの大学の「履修証明書プログラム」の関係者に逢う機会があった。皆一様に、「certificate programは、非常に重要な大学収益の基盤である」と言っていたのが印象的だった。

 朝日新聞によると、今回の学校教育法改正は、阿倍内閣時代の「再チャレンジ政策」が後押ししたものだという。おそらくは米国大学の制度的枠組みを相当意識したのではないかと推察される。
 既にいくつかの国内大学が「履修証明書・教育プログラム」に興味を示しているという。今後、この流れは加速していきそうである。

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 東京大学に関して言えば、ここ最近、学部単位、あるいは学部横断型の「学士、修士、博士以外の教育プログラム」の提供がぞくぞくと増えている。
 しかし、管見に関する限り、これらのプログラムは、「東京大学総長名」ではなく、「学部長名」あるいは「教育プログラムの代表者名」でしか「修了証」を出していないはずである。
 
 今回の学校教育法改正により、履修証明書の制度が出来たところで、証明書の発行に乗り出す大学も増えてくるのではないかと推察される(東京大学の対応は未定)。

 しかし、ここでやはり問題になってくるのは、教育プログラムの質をいかに確保するかであろう。文部科学省は、履修証明書は「120時間以上の体系的なもの」に限っているという。

 しかし、「時間数」は最低限の「制約」でしかない。
今回、履修証明書の制度がオフィシャルに位置づけられ、「大学として証明書をだす」以上、その「教育プログラムのクオリティ」の担保は、「大学」として行わなければならないはずである。

 そのための審査の仕組みをいかに「大学」につくり、どのような基準と手続きをもって、各プログラムを評価していくか。

 課題は非常に大きい。