教育工学会2日目

 教育工学会2日目。

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 ポスターセッションへ参加。今年から教育工学会は、大会参加者増に対応するため、ポスターセッションをはじめた。

 下記、印象深かった発表。

 ひとつめは、複雑ネットワーク理論を応用して電子掲示板のコミュニケーションを分析する、という大島先生(静岡大学)のご発表。複雑系に関しては、2005年のAERAでも特集セッションが組まれていたので、そろそろくるだろうな、と思ってたけれど。

 ふたつめ。木原先生(大阪教育大学)の「ミドル教師の活性化」に関するご発表。学校での「授業研究」を促進する役割として、10年目あたりのミドルを位置づけ、オンラインで育成する、というお話であった。

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 一般発表へ。

 山下さん(静岡大学)の発表。勉強になった。

 自己学習能力の向上のためには、学習観や主体性といったもの(=認識主体性:Epistemic Agency : Scardamaria 2002)を向上させることが重要。EAの発達を、協調学習の中から拾い出していこうということらしい。

 発表中にあった下記の要件は、今後、e-journal plusや舘野君プロジェクトの評価指標を決める際に参考になるな、と思った。

知識を進展させる議論の要件(Bereiter 1994)
 ・問題設定の変換 
 ・検証可能性の確保
 ・集団的妥当性の向上
 ・検証対象の拡張

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 大手広告代理店「博報堂」田村さんのご発表

 ブランドのヴィジョンを、ボトムアップのワークショップで構築する手法の提案。

 上からトップダウンでブランドを構築すると、1)なかなか話が進まない、2)予定調和的なアイデアしか出てこない、3)他人事になりがち、という問題がある。これを回避するために、ワークショップという手法に何ができるか、という話であった。

 博報堂How(HAKUHODO ORIGINAL WORKSHOP)のご紹介。組織開発の手法である、アプリシエイシブ・インクアイアリーに似ているな、とい印象。「利害関係者の全員参加によるコミットメントのひきだし」という共通点がある。

 ご発表の中で、「勇気をもっていったんはメンバーの話を拡散に導く」とおっしゃっていたのが印象的。

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 安武先生(広島大学)の複雑性ネットワークの発表へ。
 人々の結びつき=ネットワーク構造が協調学習に与える効果を複雑系ネットワーク理論によってモデリング。要するに、ミクロな学習者同士の相互作用が、学習環境(構造)に与える影響を考察したのだと思った。

 この分野は伸びるのではないか、と思った。

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 シンポジウムへ参加。

 熊本市立飽田東小学校の前田康裕先生の「ユニバーサルデザイン」の授業のプレゼンテーションが興味深かった。開発者、研究者、授業実践者、教育行政の4つのあいだに循環的なエコシステムが成立していないことを指摘していらっしゃった。

 特に、

 授業者が授業実践ニーズを教育行政につたえられないこと
 研究者が研究成果を授業実践者につたえられないこと

 は問題だと思った。

 堀田先生の話は、教育行政の話で、非常に生々しかった。「地方自治一括法」によってはじまった「地方の時代」がはじまった。「地方の教育委員会」「地方の首長」に対して、どのようにアカウンタビリティを果たしていくかが問題だろう。

 教育工学の定義
 ・教育における「現実の問題」を解決する学問
 ・ただし「いつ頃に解決するか」は様々

 というのは考えさせられた。

 佐伯胖先生の提起された問題は、「語るべきこと」が多すぎるので、また別の機会に。

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 明日はいよいよ最終日。
 はやく家に帰りたい。