制作者の苦労:デジタル教材設計論

 僕の大学院講義「デジタル教材設計論」も、はやいもので、もう「折り返し地点」まできましたか、うん?、まだ?。先日は「Jasper」についての発表でした。

 Jasperは、何らかのかたちで「教材に関係する人」ならば知らないでいることが許されない教材ですね。泣く子も黙る認知心理学者のジョン=ブランスフォードさんたちが、巨額の費用をかけて制作したビデオ映像教材です。

 ブランスフォードさんたちは、「知識」や「スキル」が発揮されるための条件として「文脈」を考え、当該知識やスキルを教授する際に、文脈に「錨づけて(Anchored)」教授することを考えました。

 リアルな文脈を再現するのが、ビデオ映像というわけです。これを数学とか、科学教育の文脈で実現したのが、Jasperプロジェクトという映像教材になりますね。

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 それにしても、大学院生さんがやってくれる「教材の紹介プレゼンテーション」を、教室の後ろで聞いていて、いつも思うことがあります。つい、「制作者の立場にたって、あー、これは創るの大変だったろうな・・・」と考えてしまうのです。

 嗚呼、Jasperも相当大変だったでしょうね。
 なにせ、「Anchored Instruction」というコアコンセプトを「ひねりだす」のも一苦労なのに、それを実現する「カリキュラム」を構築し、台本書いて、役者を雇って、ロケをして、さらには応用問題のドリルをつくり、ティーチャーズマニュアルをつくって・・・これだけやって、ようやく「パッケージ」にしたはずです。

 何度となく評価も繰り返したでしょう。きっと、つくっては壊し、壊しはつくってじゃないのかなぁ・・・。おそらく、そのあとには、様々な先生方に使ってもらうためのプロモーション活動だってあったはずです。また論文、書籍もたくさんでていますからね・・・。

 今回、講義で扱っている教材は、どれも、その背後には、制作者、あるいは研究者の苦労があります。授業にもう少し時間の余裕があったら、そういうのも話せるといいんだけどね。そこまでは1時間半の授業では、なかなか難しいですね。

 これから、さらに段々と複雑な原理に基づく教材がでてきます。あと「半分」、まだ?、まぁ、いいや、僕自身が一番楽しみにしているかもしれません。