コピーライティング入門

●「別に用はないけど」の「けど」がスキ。
(NTTドコモ九州)

●セブンイレブン いい気分
(セブンイレブン)

●話すケータイから、使うケータイへ。「iモード」
(NTTドコモ)

●うちの駅前はマックを中心に栄えている
(マクドナルド)

 昨日は論文を脱稿した。
「あー、疲れた、読みたいと思っていた本でも読むか」と思って、研究室の「積ん読」になっていた本を、数冊持ち帰った。が、その中の一冊が異様にオモシロク、結局、深夜遅くまで読み進めてしまった。「コピーライター入門」である。

 コピーライターとは、「言葉で人を動かす職業」なのだという。わずか10数文字の短い文章で、「売り手」と「買い手」のあいだにコミュニケーションをおこす。それが仕事だ。

 本書は、電通の社員たちが書いたコピーライティングの入門書。オシャレな装丁。さすがは「カタカナ職業」の本だけはある。
 1章は、松本さんというコピーライター志望の新入りが、はじめてのクライアントにぶつかり、コピーを考え出すまでをシナリオ風に書いている。その仕事の全体像がよくわかった。その後は、様々なコピーを解説し、どのようなコピーがよくて、何が悪いのかをかなり詳しく解説している。経験談も豊富に収録されている。

 いくつか激しく同意した文章があった。

 「だってこれが好きなんだもん」という戦法が許されるのは、7歳くらいまでの子どもか、すでに実績が認められている巨匠だけだ。もしあなたが、そのどちらでもないとすれば、なぜその「好き」が重要なのか、なぜ「私のやりたいこと」が結果的には「御社のためになるのかを説明できなければならない。

(同書 p157より引用)

 このあたりは、研究という営みにも、共通して言えることだと思う。研究にも社会的責任、説明責任というものが付随する。

 学部時代に学んだ社会学の先生には、「なぜ、その研究を、いま、実施する必要があるのか、その社会的意義は何か?」が言えないとダメです」と耳が痛くなるまで言われたことを思い出す。

 いやー、それにしても、コピーライティングとはパワフルだ。短いセンテンスながら、感情を揺さぶる。
 教育研究という営みは、アウトプットがこれほど短くない。だけれども、できれば「言葉とデータで人を動かしたいものだ」と思った。

 本書には、いろんな時代の、様々な商品のコピーが載っていた。ちなみに、僕は下記のコピーが一番のお気に入り。皆さんのお気に入りのコピーはありますか?

●その日、資本のない奴は勇気を出した
 (パルコ)

 うーん、「勇気」だけでいいんだったら、負けないけれどね。