食事、掃除、かんなくず

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 昨日の講演、無事、終了しました。実は、リコーヒューマンクリエイツさんから、秋葉原で開催されたRHCフォーラムの特別講演のご依頼を受けていたのです。おかげさまで無事、終了。

 今回の講演では、プロフェッショナルの育成にからむ諸課題、特に、1)概念的知識の構造化、2)メタ認知の育成、3)定型的熟達と適応的熟達、4)ワークプレイスラーニング、などについて、事例をまじえながら話をしました。

 昨日のブログで3分の1は、聴衆に喋っていただくと張り切っておりましたが、それに関しては、ちょっと失敗。

 最初のエクササイズ課題で張り切りすぎて、時間を食ってしまい、最後のディスカッション課題を飛ばさざるを得なくなってしまいました。

 嗚呼、1時間20分というのはあっという間ですね。反省至極です。修行します。

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 今回のRHCフォーラムでは、メインの講演として宮大工棟梁の小川三夫さんがいらっしゃいました。

 宮大工というのは、「完全無欠の徒弟制=十数年にわたる住み込みの修行」で、弟子育成をするのですが、その話がとても興味深かったですね。

 小川さんによると、宮大工の世界では、新弟子に入ると「一年かけて見極める」そうです。見極めるといっても、「大工仕事」をさせて、そのクオリティを見るわけじゃない。

 まだ入ったばかりの新参者ができることといえば、先輩や親方に「食事の用意」をすることと、「掃除をする」ことくらいです。来る日も来る日も、最初は「食事の用意」と「掃除」をさせる。

 でも、これは、シゴキとかでやっているわけではない。

 「食事の準備」には「思いやり」「段取り力」というのが、如実にでてしまう。「掃除」をさせれば、その人の「丁寧さ」がわかる。そうやって、一年かけて、弟子の性格を十分見極めた上で、少しずつ本格的な仕事に従事させるのだそうです。

 この話、聞いていて、とても「うらやましいなぁ」と思いました。だって、人を見極めるのに、それだけの時間がかけられるということです。

 今の時代は「即戦力」の時代ととかく言われますね。みんなスピード、スピードと言っている。なかなかそんな風に時間的余裕のある業界はないよなぁ、と。うらやましいなぁと思いました。

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 来る日も来る日も「食事の用意」と「掃除」。そればかりずーっとやっているのは、弟子にとっては精神的にツライですね。

 オレは、めしたき、掃除のために、修行してんじゃねー

 とちゃぶ台をひっくりかえしたくなる(のかどうかは知らないけど・・・)。

 半年くらいやっていると、弟子の方も、いてもたってもいられなくなるそうです。先輩のつくる綺麗な「かんなくず」をみて、自分でも、やりたくてやりたくてしかたがなくなる。

 でも、その一瞬なのだそうです。そこまで、「かんな」を与えない。はじめて、その一瞬が訪れたら、「かんな」を与える。
 そうすると、弟子は、「柱すべてを削ってしまうほど」、かんな削りに熱中するのだそうですね。

 これも「いじめ」でやっているのではなくて、ちゃんと意味があるそうです。

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 小川さんに、あとで楽屋ですこしだけ話をうかがったところによると、こんな厳しい修行をへても、「宮大工として一人前になるのは10年、棟梁になれるのは全体の1割」だそうです。

 前者は、熟達者研究のエリクソンのいう「10年ルール」を地でいくような回答にびっくりしました。

 後者は「そんなもんだよなぁ」と思った。
 プロフェッショナルは、全員が目指せるわけではない。そんな甘い世界ではないですね。

 厳しい下積み、基礎的知識や技能の習得、地味な雑用をこなすことをいやがるのは論外。そんなやつは最初から無理です。しかし、どんなに頑張っても、本人の向き不向きがある。最後には「結果」だけが問われる。厳しい世界なのですよね、プロフェッショナルの世界は。

 ・・・と、こんな感じで、非常に興味深い話題でした。

 最後になりますが、リコーヒューマンクリエイツ株式会社のMさん、Kさん、当日アテンドをしてくださったMさんには大変お世話になりました。この場を借りて御礼いたします。ありがとうございました。

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