カール=ワイクとスガシカオ

 数多くの組織研究者の中で、イッちゃっている研究者にカール=ワイクという人がいる(良い意味でイっちゃっている)。

 彼は「組織」を静的なEntityとは見なさず、あくまで動的なプロセス=組織化(Organizing)と見た。

 組織化とは、意識的な相互連結行動によって、多義性を削減するのに妥当と皆が思う文法である
(p4)

 たとえば、バーナード、テイラー的な組織の定義というのは、「意識的で、計画的な、目的を共有する人びと相互間の協働」というのが常識的である。
 この定義を読んだだけで、彼の発想がどれだけイッちゃっているかがわかるだろう。

 このような認識のもと、彼は、組織を「普段に再構築を繰り返すこと」が宿命であると考えた。そして「再構築=変わること」が、「安定」をもたらし、「安定すること」が「変わりうること」であると考えた。この発想の転換には思わず舌をまく。

「いつも、オレのいるところはバタバタしてて安定しねーな」と思っている人。それは、「安定」してるってことなのですよ、禅問答みたいだけど。

 あと、彼の戦略に対する考え方も、僕は好きだ。

「組織が戦略を定式化するのは、それを実施した後であって、前ではない。人は何かをやってみてはじめて、それを振り返ることができ、自分がやったことを戦略と結論するのである」
(p243)

 まさに我が意を得たりである。この日記でも、「戦略」とか「ビジョン」が、Enactmentの前に見いだされる明確なplanではないことは、何度も書いてきた。それは、ふだんに解釈しなおされる物語なのです。

 ところで、話がとぶけど、この文章を読んで、思わずスガシカオを思い出した。スガシカオの「Progress」の歌詞にはこうある。

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ずっと探していた 理想の自分って
もうちょっとカッコよかったけれど
僕が歩いてきた 日々と道のりを
ほんとは「ジブン」っていうらしい

世界中にあふれているため息と
君とぼくの甘酸っぱい挫折にささぐ
あと一歩だけ 前に すすもう

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 カール=ワイクとスガシカオの指摘している問題は、僕には、同型に思える。

「あと一歩だけ前に進もう」・・・そのとき、今まで見えなかった「戦略」が見えるかもよ。