社内改革は可能? 結婚した方がいいの?

 若さとは自分が「何一つ知らないこと」を知らないでいられる期間である。

 そんな若者に、「歩く全身豆知識」と異名をとっている!?内田樹氏が「大人の理屈」「大人のものの考え方」を惜しげもなく披露するのが、本書であろうか。

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 社内改革って可能でしょうか?
 フリーターの一体どこが問題でしょうか?
 結婚ってした方がいいのでしょうか?
 バレンタインのチョコがもらえないのですが、この後もずっとでしょうか?

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 こんな若者の問いに対して、あなたならどう答える?

 「一笑に付すこと」「感情的な断定を行うこと」は誰にでもできる。問いが単純なだけに、そこに理屈を見いだし、説得することは、とても難しい。内田氏の回答には、ほほーと考えさせられるものが大変多く、勉強になった。あまりある現代思想の知識をもつ筆者の言うことは、さすが、違う。

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 次に質問。

 構造主義って何ですか?

 と聞かれたら、あなたならどう答えるだろうか。
 多くの人は、

「構造主義・・・ていうからには、構造が重要なんだよなぁ・・・そうだよ、そうに決まってるよね」

 とモゴモゴしてしまうのではないだろうか。

 これに明快に答えるのが、同じく内田樹氏の「寝ながらわかる構造主義」である。本書では、ミシェル・フーコー、フロイト、バルト、レヴィストロース、ラカンについて、「寝ててもわかるよう」に、彼らの一番言いたかったことを解説している。

  

 構造主義の思想は、現代を生きる私たちの言説空間、日々の語り口を、今もなお強く支配している。たとえば私たちは日々の会話の中でよく

 「物事の真偽は、人の見方や状況に応じて変わる」

 に類することを述べたりするが、この紋切り型のセンテンスも、また構造主義の知的潮流に属するものである。

 僕個人の感想で言えば、ヴィゴツキーやピアジェといった教育・学習に強い影響を与えた心理学者たちの「発想」と、ミシェル・フーコー、バルトの思潮とのあいだに関連性を感じたりしながら、本書を読んだ。知的にエキサイティングな時間だった。

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 この2週間ほど、自宅のベットの周囲は、内田樹氏の著作で埋め尽くされている。残り数冊で、その旅ももう終わろうとしている。結構、悲しい。