30代、カラオケに行こう!

 先日、平均年齢30歳のメンバーと、本郷3丁目駅前のカラオケにいった。

 「もういいよ、カラオケなんて」
 「ていうか、またオマエらかよ!」
 「誰だよ、最初に行きてーって言ったの?」

 とか何とか、店に入るまでは、お互いに罵っていたが、部屋に入り、誰かが最初の歌をいれると、急に目がかわる。我先にリモコンを手にとって、曲をいれだす。

 一瞬にして、

 「実は、みんな行きたくて仕方がなかったんじゃねーか」

 と、お互いにわかった。

 そこからは、80年代、90年代ミュージックのオンパレードである。爆風スランプはでてくるわ、ウィンクはでてくるわ、もうワヤ。ワヤだ、もう。

 誰が聞いているか、誰が歌がなんて全く関係ない。ひたすら絶叫である。マラカスをふり、タンバリンをたたき、机をならす。あっと言う間の2時間だった。

 思うに、僕らの世代は、カラオケボックスが普及した最初の世代なのではないかと思う。中学校、高校、そして大学まで、僕らの成長とともに、カラオケは常に横にあった(僕の自宅には、マイカラオケセット+マイクがあった!!)。

 そういえば、歌謡曲というジャンルが一番隆盛を極めていたのも、僕らの時代である。テレビをつければ、「ザ・ベストテン」があり「歌のトップテン」があった。

 それが年をとるに従って、カラオケにはなかなか行かなくなった。また歌謡曲を聴くことも少なくなった。いつのまにか「ザ・ベストテン」がなくなり、「メロディのないラップ」という音楽が、ラジオから流れるようになった。
 そして、クラシックや、ジャズなんかを聞くこと、そういう音楽をたしなむことが、「大人としてコレクトな選択」であると錯覚するようになったのかもしれない。

 なんだか気恥ずかしくて、なんだか甘酸っぱくて。昔なら「カラオケでもいく?」とすぐに友達を誘えたのに、僕らは、そう言わなくなってしまった。「大きなたまねぎの下」の駅を仕事で訪れても、「あの日コンサートに来なかったペンフレンド」のことを口ずさむことはなくなってしまった。

 勇気をだしてカラオケに行こう、30代!
 かつて、「大人になるってどういうことだろう」とボンヤリと考えていた時代のことを、きっと、思い出せるから。

 素直に驚くと思うよ。
 あれだけ唱えた「解の公式」「応仁の乱の年号」が記憶のかなたに消えているのに、あのとき歌った歌謡曲の歌詞は、恐ろしいほど覚えているから。

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 思わず、調子にのって、CDを買ってしまったぞ・・・。