マネージャの仕事
ちょっと先週から具合が悪かったので、シンナリとおうちで過ごす週末(きっと疲労だろう・・・ようやく落ち着いてきた・・・それにしても長引いたな・・・)。
28日に大学で開催しようと思っている研究会の課題図書、ヘンリー・ミンツバーグ「マネジャーの仕事」を読む。
ヘンリー・ミンツバーグ(1993) マネジャーの仕事. 白桃書房, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456124218X/nakaharalabne-22
この研究会は「組織エスノグラフィー」に関するもの。内外の組織を対象にしたエスノグラフィー、あるいは、その研究方法論に焦点をあて、参加者全員で勉強することが目的である。
ミンツバーグの「マネジャーの仕事」は、やはり組織論の基礎文献と言われているだけあって、素晴らしいものであった。研究方法論は素朴ながらも、彼は、それまでの研究者が見いだしていなかったものを見いだそうとした。
それは、
「マネジャーは、本当のところ、どのように仕事をしているか」
である。
「マネジャーなら○○すべきだ」「マネジャーはかくあるべきだ」といったマネジャーの仕事に関する規範的なアプローチの研究はたくさんあった。
はたまた、マネージャを功利的な意志決定者とおき、その目的を最大化するためには何が必要か、何を行わなければならぬのかを論じる研究はあった。
しかし、彼がたてた問いは、一見、それと似ているが、微妙に異なる。彼は「~べき」が知りたかったのではなく、「本当のところ、どのように働いているか」をリサーチクエスチョンにした。
「マネジャーのことを、我々はほとんど知らない」
彼はそのようにいう。そして、経営学者は、本当はマネジャーのことを知らないのにもかかわらず、彼らが「すべきこと」を論じるという奇妙な芸当をやってのけていることを指摘する。
彼は、マネジャーの選択は、制約条件の中で「できるところで満足する」ために行われるものだとし、その即時的活動の様子を明らかにしようとした。そのために、5人のマネジャーに「黒子」のように張り付いて、その動きを観察した。
すぐれた研究は、リサーチクエスチョンと方法論で決まる。本研究は、その好例である。
そして彼が見いだしたのは、
1) マネジャーの仕事は断片化、多様化していること
2) マネジャーの仕事は、下記の10に分かれること
【対人関係役割】
1. フィギュアヘッド(組織を代表する)
2. リエゾン(交流役)
3. リーダー(動機付けや人員配置)
【情報関係の役割】
4. モニター(情報を受信し、統制する)
5. ディセミネーター(情報を伝える)
6. スポークスマン(情報を外部環境に伝える)
【意志決定】
7. 企業家(職場に変革をおこす)
8. 障害処理者(リスクヘッジ)
9. 資源配分者(資源配分)
10. 交渉者(組織の利益を極大化する)
であった。
---
ミンツバーグの「マネジャーの仕事」は通常、経営学の範疇に入る。しかし、そのリサーチクエスチョンや方法論は、教育学の領域にも十分適応可能である。
たとえば、私たちは本当に知っているだろうか。
校長がどのようなことを行っているか?
教師が何を行っているか?
について、本当のところを、自信をもって、知っていると言える人はどのくらいいるだろうか?
たとえば後者の場合でいうならば、ランパートの著作における「ディレンマ=マネージング」の概念や、ピーターウッズの研究における「サバイバルストラテジー」の概念を思い出す。
しかし、それらは授業内における教師の動きの記述である。教師の「ある場面」について説明する研究ならある。だが、教師が過ごす「一日」「一週間」「一月」を、キチンとデータで説明した研究というのは、たとえあったととしても、それほど多くないと推測する。勉強不足きわまりない僕が言うことだから、なかなか、信用はならないけれど。
---
いずれにしても、関連する領域ですでに行われている研究が、ある領域では試みられていないことであったりする。そして、ハッとした新しい世界が生まれたりする。
僕のような凡庸な人間にとって、オリジナリティは、ある日突然生まれ、天から降ってくるものではない。僕にとって、研究会は、「ハッ」を生み出すよい機会である。
投稿者 jun : 2006年01月16日 11:19
コメント
マネジャーの仕事が「断片化、多様化していること」というのは実体験として頷けます。10の内容も細かく検討はしていませんが,おおむね肯定できそうです。そろそろ自分の仕事の振り返りをしないと。
校長等の仕事の実態について,エスノグラフィックな研究として世に問われているものはすぐに思いつきませんね。特に密着したものとなるとないのでは。「校長日記」のような自著形式ならありますけど,研究成果とはいえません。まだ未開拓かも。
投稿者 りん : 2006年01月17日 01:59
りんさん、メッセージをありがとうございます。
>マネジャーの仕事が「断片化、多様化して
>いること」というのは実体験として頷けます
この本の最後だったかな。
訳者が
「現代の経営学者の仕事も断片化・多様化しており、
まさにここで指摘された10の役割を担っている」
という指摘をしていたような気がします。
僕はマネージャではないですが、学者つながりということ
で考えれば、僕の仕事も断片化していますね、激しく(笑)。
もう少しゆっくりモノゴトに取り組めれば
いいのだけれども。
なかはらじゅん
投稿者 なかはらじゅん : 2006年01月17日 13:11
3年前にハーバードビジネスレビューでミンツバーグ知ってから彼の大ファンです。一昨年来日したときに、講演会をやろうという企画があったんですが実現に至らず残念でした。
http://www.dhbr.net/magazine/backnumber/200301.html
マネジメント教育を生業としている組織にいる私にとって、また、そうした団体で実際にマネジャーをしている私にとって、ミンツバーグの有名な言葉「教室ではリーダーシップは学べない」は座右の銘です。
そうそう校長先生といえば、うちで数年前から「学校マネジメント」というテーマで某県の校長先生のマネジメント研修というのを受託しています。
そのあたりの話は今度また
投稿者 こが@さんのう : 2006年01月19日 00:44
中原です。
古賀さん、コメントをありがとうございます。
ミンツバーグ、いいですねぇ。
「その根拠は何なの?」的海千山千トーク、「アンタの学問バックグランウンドは何なの?」的経営論が多い中で、とても安心して本を読み進めることができます。
「教室ではリーダーシップは学べない」とのことですが、1年前、アメリカで彼の講演会を聞いたとき、そのような話をしていました。マギル大学での新しいMBAコースの話をしていましたけど。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1576753514/qid=1137632121/sr=8-5/ref=sr_8_xs_ap_i5_xgl14/249-6858567-3177937
たぶん、上記の本、古賀さんはお好きだと思います。
なかはらじゅん
投稿者 なかはらじゅん : 2006年01月19日 09:56
中原さん
ミンツバーグの面白いところは、そこまでMBAを否定しつつ、MBAで教えている自己矛盾と闘っているところでしょうか?
推薦本までありがとうございました。非常に面白そうなのですが、英語苦手の私の次なる洋書挑戦は
「Rebel With a Cause(理由ある反抗)」という、フェニックス大学の創始者John G. Sperling氏の自伝という先約がありまして・・・
これを読破したら、次は日本の株式会社立大学を設立した人達および失敗した人達のインタビューをし、日本版の株式会社立大学の大学設置認可を題材に「仁義ある戦い」という本を出版したいなあという妄想を描いております。
ではでは
投稿者 こが@さんのう : 2006年01月20日 01:37
>仁義なき戦い
コガさん、それはオモシロイ本ですね。初等・中等でも、その動きがありますので、いろいろな場面で参考になるのではないでしょうか。楽しみにしています。
なかはらじゅん
投稿者 なかはらじゅん : 2006年01月20日 08:16


















