ふふふ

 酔っ払った学生に、先日、こんなことを聞かれた。泥酔していたため、その学生は、そういう問いを僕に投げかけたことすら、全く覚えていないだろう。だけど、その言葉、あまりに直截すぎて、僕の心には深く刻まれた。

「中原さんは、なぜ研究したいんですか?なぜ大学にのこって研究者をやろうと思ったんですか?僕にはそれがわからない」

 これは簡単なようで、なかなか深い問いである。
 「わたしはなぜ研究するのか」・・・食うためだよ、好きだからだよ、なんとなくだよ・・・いろんな答えが思い浮かぶ。

 しかし、僕はこう答えた。

 「僕がやらなかったら、誰がやりますか? 僕は、教育の世界で、そういうことをやりたいのです」

 将来は、誰もやらないことがやりたい。
 かなわぬ願望、自分の能力をかいかぶった不遜な夢かも知れぬが、僕は学部生の頃から、いやいや、物心ついた頃から、そう思い続けてきた。ひとつ間違えば、完全なる社会不適応だったかもしれない。しかし、自分がもしかすると代替不可能な人になりうること、否、そう信じつつ生きることに、僕はかけてみたかった。

 酔っ払って意識が朦朧としている学生に、真面目に語ったつもりではある。
 ふふふ・・・学生は笑っていたけれども。
 「青いな、こいつは」と思われたかな。