食べていける人を増やす

 先日見た「ガイアの夜明け」は、Jリーグ・サッカー選手を支える「エージェント」たちの話だった(番組自体は、かなり前のものだと思う・・・僕はHDDレコーダで取りだめしているのを2倍速で一気に見るから)。

 ヨーロッパーのクラブでプレーしたいと望む、Jリーグのサッカー選手には、それぞれ腕利きのエージェントがいる。彼らが、選手のかわりにクラブとタフな報酬交渉を行い、選手たちをヨーロッパに送り込んでいる。

 マスコミに派手にとりあげられるヨーロッパ移籍のかげには、エージェントたちの地味な取り組みがある・・・この会の「ガイアの夜明け」はそういう話であった。

 その番組の中で、僕は、あるエージェントの一人が口にしたこんな言葉が、とっても印象に残っている。

 良い成績をあげる選手には、高いお金が払われていくんだってことが、日本のサッカーの経済環境を大きくする。それは、サッカーで食べていける人が増えるってことを意味する。それがないと、サッカーは強くならないよね。

 この言葉を聞いたとき、僕は、まっさきに「大学院生」の存在を思った。

 ここで、研究者のタマゴである「大学院生」と「サッカー選手」を、素朴に比較することは、非常に危険なことではある。

 しかし、そこでエージェントの一人が指摘している問題は、大学院生にとっても無縁ではないような気がする。少なくとも、NPO(Educe Technologies)を立ち上げようとしたときに、僕らが願っていたことの本質は、この言葉にあったのだと思う。

 高い専門性をもつ大学院生が、仕事をしながら研究をできる環境をつくる。専門性に応じて、報酬が支払われる。  海外の大学院ではフツウのことが、いつの日か、日本でもアタリマエになる。そのために、大学院生と社会をつなぐ仕組みとして、NPOが必要になる。  それが結果として、研究しても食べていける人を増やすことになる。それが研究に参与する人の数の増加にむすびつき、そこに競争が生まれ、研究自体が活性化する。

 上記は、素朴な信念ではあるけれど、確かに、NPOを立ち上げたときの僕たちの考えは、そんなところにあったと思う。そんなことを代表理事の山内さんとは、何度も話し合った。

 NPOの経営は、ようやく安定期にはいってきた。
 だけれども、まだ、めざすべき地平は遠い。