箱庭の住人

 他人の見た「夢」を聞かされることほど、つまらないものはない。しかし、今日は敢えて、僕が子ども時代から繰り返して見る「夢」について語る。他人の貴重な時間を、僕の「ヨタ話」で台無しにする気は毛頭ないので、下記は比較的時間のある人だけ読んでください。

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 僕が、子ども時代から繰り返してみる夢に、こんなものがある。

 一言でいうと、「この世の虚構」に関する夢。
 僕らは、実は、小さな「箱庭」のような世界に暮らしていて、誰かが上から、僕らの所業をのぞいているのではないか、という夢である。

 要するに、僕らは、「シムシティ」の中の住人であり、誰かが「コントローラー」を握って、じっと僕らを見つめている。

「人は自分の見るものだけを現実だと思うものさ」

「箱庭の外の住人たち」は、箱庭の中に広がる抗争、葛藤、悲しみ、喜びを見つめながら、互いにそんなことを語り合っている。

 ある日 - いつもはアタリマエに広がっている青い空に、奇妙な黒い影がうつる。世界が突然暗くなった。「箱庭の中の住人」がいっせいに顔をあげて見つめる。黒い影はどんどんと世界を覆う。しかし、それは、人間の「手」のようにも見える。

 まさか、「手」がなぜ、空に?

「このあたりで、ゲームをやめようか。そろそろ食事の時間だよ」

「箱庭の外の住人」の低い声が世界一面に響く。「箱庭の中の住人」はようやく気がつく。自分たちの見つめていた「手」こそが「現実」であったのだ、と。

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 その一瞬でいつも目が覚める。今日もこの夢を見た。これが何の暗喩なのか、僕は精神分析家ではないので知らない。でも、なんか意味があるようにも思う。

 誰にも、繰り返し見る夢があるのだろうか? こういうのは僕だけ? そんなことを考えながら、大学に向かう。