熟達者の「短所」?

 先日、大学院ゼミで、「熟達者の特徴」についての、ミッキー・チーさんの論文を読んだ。

 熟達者の特徴は下記のとおり(一部改)

■長所

 1.最良な解決方法を生み出せる
 2.初心者にはできない「特徴」や「構造」を検知できる
 3.問題を質的に分析できる
 4.自分自身をモニタリングする力をもつ
 5.問題解決のため適切な方略を使う
 6.柔軟に問題を解決できる
 7.最小限の努力で関連ある領域の知識や方略を取得できる

■短所

 1.知識が領域固有であること
 2.自信過剰に陥ってしまいやすい
 3.その場をうまく取り繕う(詳細を見落とす)
 4.柔軟性がないこと
 5.不正確な予測
 6.偏見や機能性固着

 通常、「熟達者の特徴」というと、「長所」だけしか述べられないが、この論文では「短所」にも言及されているところがオリジナルかな、と思う。

 畢竟、短所とは長所の裏返し。

 熟達者は、意識せずとも様々な事柄が自動化して処理できる。また、構造化された知識を駆使して、物事に対処できる一方で、つい自意識過剰や、偏見、機能性固着(とらわれ)に陥ってしまいがちである。

 人は熟達化にしたがい、「何か」を失う。何かを得ることは、何かを失うことである。
 犠牲にした「何か」が、それほど大きなものでなければよいのだけれど。