あなたの組織の重さはどのくらい?:沼上幹他著「組織の〈重さ〉」を読んだ

 沼上幹他著「組織の〈重さ〉」を読んだ。

 戦略に関する情報は共有されない一方で、社内の合意形成(根回し・報告)に過剰な時間と労力を傾ける日本の「重い」組織。

 現代の組織が抱える機能不全の多くが、この「組織の重さ」にあった。このことを質問紙調査をもとに実証的に論じている。

 本書では、「組織の重さ」指標と各データの相関を調べ、パス解析でモデルをつくるという地道な作業が繰り返されている。このような大規模な組織構造調査は、ほぼ20年ぶりだという。

 去年の秋あたりから、僕、荒木さん、北村君、坂本君らで、日本の企業を対象にした「組織調査」を行っている。先日、データの打ち込みが終わり、いよいよこれから分析がはじまる。
 また、11月には某社との共同研究で「組織診断ツール」の開発がはじまる。こうした意味でも、本書は、大変参考になった。

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 それにしても、本書を読みながら、大学の「組織の重さ」ってどのくらいなんだろう、と考えていた。

 大学の場合は、教授会という形式的にフラットで、すべてのファカルティが等価な裁量をもつ意志決定機関がある。ゆえに、「組織としての意志決定」は遅く、あまり生産的であるとは言えない。反面、あくまで個人が個人の裁量で何かをやりたい場合には、誰からも制約を受けないから、意志決定は早い。

 大学は、今、ファカルティ個人の自由さを確保しつつ、組織としての意志決定を迅速かつ強固に進めなければならない時代にはいってきている。

 大学の「組織としての重さ」を解消するには、その組織構造にメスが入らない限り、いくら小手先で上っ面の民間の経営手法を真似ても、話にならない。

■目次
第1章 日本企業の組織問題
1.日本企業の強さの源泉とその劣化
2.組織構造研究の停滞
3.組織の〈重さ〉研究プロジェクトの概要
4.まとめと本書の展望
第2章 組織の〈重さ〉指標の作成
1.組織の〈重さ〉の操作化
2.因子分析
3.達成感・成長機会・利益率と〈重さ〉の相関
4.まとめ
第3章 調整比率と組織の〈重さ〉
1.各種活動の遂行に必要な日数と調整比率
2.調整比率と日数の相関
3.調整比率・経営成果と組織の〈重さ〉の相関
4.まとめ
第4章 計画・標準化・ルール
1.はじめに
2.計画と標準化
3.社会化・複雑怪奇化(難解性)と組織の〈重さ〉
4.まとめ
第5章 ヒエラルキーと組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長までの情報伝達経路の長さと命令の背後の理由説明
3.上下の情報流
4.ルート距離と上下の情報流と組織の〈重さ〉
5.まとめ
第6章 パワー分布と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.コントロール・グラフと組織の〈重さ〉
3.職能部門間の水平的パワー分布
4.職能部門間での水平パワー分布の変化
5.パワーと組織の〈重さ〉
6.まとめ
第7章 水平関係と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.フォーマルな水平関係
3.社内ネットワークの記述統計
4.社内ネットワークと組織の〈重さ〉
5.知人・説得対象者・支援者の相互関係
6.まとめ
第8章 組織プロセス変数と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長のリーダーシップとパワーベース
3.リーダーシップおよびパワーベースと組織の〈重さ〉
4.リーダーシップと対外影響力,パワーベース
5.コンフリクト解消法と組織の〈重さ〉
6.組織プロセス変数と組織の〈重さ〉の因果的連関
7.まとめ
第9章 組織の〈重さ〉の克服に向かって
1.全体の構造的理解
2.リーダーシップによる変革
3.リーダーシップに対する構造的な制約
4.BU長の認識
5.まとめと残された課題
終章 日本型組織の再活性化に向けて