弁護士でも就職難?

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 朝日新聞によると、今年度の「司法修習生の一部が就職難に陥っている」らしい。

司法修習生、就職先未定が100人超す
http://www.asahi.com/national/update/0826/TKY200708260131.html

 新司法試験の影響で、これまで年間500名程度であった司法試験合格者が年々増加。昨年度は1500名が就職活動を行っている。悲劇的なのは、今年はさらに1000人増え、2010年には3000人になるらしい。就職難はさらに深刻になることが予想される。

 もちろん、こうした事態が起こることは、法曹界は最初から「わかっていた」。2007年問題として認識されていたそうだ。「一部の弁護士が路頭に迷うことをわかっていても、やった」のだから、当然、「それでも、変えたいsomething」があったのだろう。そのあたりは、専門ではないので、よくわからない。

 それにしても、興味深いのは、この後、どういう事態が起こるのだろうか?、ということである。これは「資格効用とその影響」という意味で、教育学的な「問い」でもある。

 僕は「占い師」でもないし、そのスジの「専門家」でもないので、無責任にシロウト考えを述べると、予想できるシナリオはいくつかある。

 1)資格を「もつこと」の価値が相対的に下がる
 2)一時的な就職難が発生する

 3)今まで弁護士が体験してこなかった雇用形態が出現する
 4)弁護士の職務が広げ、仕事をつくるようになる

 5)弁護士間での序列や待遇の格差が高まる
 6)大手ファームが形成される
 7)弁護士業界内部の競争が激化する

 8)過去にどの「事件」をあつかったのか、という
  「業績」が能力表示の指標として用いられるようになる

 まず、1)はそのままである。マーティン=トロウではないけれど、量的拡充は質的変化をもたらす。弁護士資格が「無意味化」することはありえない。が、その価値は相対的に下がるのではないだろうか。その結果、2)で指摘したように、一時的にではあるが、就職難が発生することもありうる。

 しかし、需給曲線ではないけれど、その資格の価値下落も「一定のポイント」でとまるのではないだろうか。どんなに価値が相対的に下落しようとも、広い世の中、「この値段なら、買う人」が、誰かはいるからである。弁護士資格の場合、「資格とかけて"足の裏のご飯粒"ととく・・・・その心は? 取らないと気になるが、取っても食えない」というような状況にはならないのではないかと思う。

 そうすると、3)今まで弁護士が弁護士が体験してこなかった雇用形態で働く弁護士というのがでてくるのではないか、と思う。さらには、4)「食う」ために、弁護士資格をフルに利用して、これまで弁護士がしてこなかった「仕事」にまで、手を伸ばす可能性が高いのではないだろうか。
 この状況は、就職氷河期の「大学生の就職」と似ている。それまでの大学生ならば就職しなかったような業種に、様々な雇用形態で、就職する学生が増えてくる。

 たとえば、司法書士、行政書士などの法律関連の職務は、すべて弁護士資格で業務が遂行できるらしい。弁護士の量的拡充は、「関連する職種」「関連する資格」のサバイバルに影響を与える可能性がきわめて高い。

 次に、容易に予想されるのは、5)弁護士間での序列や待遇の格差が高まることである。

 要するに「フェラーリをのりまわす弁護士」と「サラリーマン弁護士」という二つの弁護士がでてくるのではないだろうか。長期的には二極分化も進むような気がする。そのような中で、資本の集中もすすみ、6)大手ファームのような大資本が形成される。

 7)弁護士業界内部の競争は、どんどん激化していく。より「上のステータス」をめざして、弁護士が大競争を演じる場面というのがでてきそうである。弁護士の「競争」は、「過去にどういう案件をあつかったか」「どのような弁護士事務所にいたか」で決まるような気がする。

 もちろん、これらの大変革の主人公は、「新制度の弁護士」である。法曹界には、一時的に「旧制度の弁護士」「新制度の弁護士」という2つのラベルが流通し、前者は後者を「価値の低い資格」として差別化する傾向が強まるのではないだろうか。大競争時代にあって、みんな「食っていかなければならない」のだから、そのくらいはする。

 新制度の「移行」は、旧制度の弁護士がマジョリティではなくなり、新制度の弁護士が日弁連の要職につくまで完成しない。「変革」とは、そのくらい時間がかかるものではないか、と思う。

 以上、これからのシナリオを勝手に「大放談」した。どのようにそれが進展するかはわからない。

 しかし、ひとつだけ勘弁してほしいことは、どこぞの国のように、「食うために、無意味な訴訟を増やすこと」だけである。法曹界でもない、一市民の僕としては、それだけが気になる。

「オレが太ったのは、マクド●ルドのせいだ」とか、「夫のキスの味がマズイので、訴える」的なしょーもない訴訟は、勘弁してほしい。聞いてるだけで疲れる。

「お客さん、いい訴訟話があるんですよ、あの会社を訴えませんか?」

 と弁護士が「営業」して歩く国だけにはなって欲しくない。

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