「意味づけ」が未来を左右する!?

 最近の若者は、就職しても3年間で36%が辞める。このところ、リテンションの問題は非常に注目されている。

 ちょっと前のことになるけれど、雑誌AERA(2007年6月4日 p75)に、「新人が最初の1年で遭遇する共通場面」の記事がのっていた。その共通場面に対して「プラスの意味づけ」「マイナスの意味づけ」をするかで、その後のリテンションが変わるのだという。

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●配属が思い通りにならない

 ■プラスの意味づけ
 ・学べることはたくさんある
 ・ここでできることをやって力をつけよう

 ■マイナスの意味づけ
 ・こんなことをやりたいわけじゃなかった
 ・つまらない仕事だ

●基本的な小さな仕事、ルーティン

 ■プラスの意味づけ
 ・これは大切な仕事なんだ
 ・これからの仕事の土台がここにある

 ■マイナスの意味づけ
 ・何のためにやっているのかわからない
 ・つまらない仕事だ、いつまで続くんだ

●小さな向上、小さな成果
 ■プラスの意味づけ
 ・少しは進んでいる
 ・このようにやっていけばなんとかなる

 ■マイナスの意味づけ
 ・これくらいじゃだめだ
 ・次のことが気になる

●ほうれん草
 ■プラスの意味づけ
 ・疑問や違和感を率直にいっていいんだ
 ・上司は報告・連絡・相談を待っている

 ■マイナスの意味づけ
 ・どうせ聞いてくれない
 ・こんなことを報告しても意味がない

●山積みの仕事
 ■プラスの意味づけ
 ・ひとつひとつできることからやっていこう
 ・どこまで進んでいるかをきちんと報告しておこう

 ■マイナスの意味づけ
 ・やってもやっても終わらない、ずっとこうなのか?
 ・こういう仕事の配分はおかしい

●ミス
 ■プラスの意味づけ
 ・二度と同じことを繰り返さないようにしよう
 ・仲間はありがたい

 ■マイナスの意味づけ
 ・自分はダメだ
 ・自分だけの責任じゃない

●なかなか成果があがらない
 ■プラスの意味づけ
 ・少しでも前に進んでいると感じる
 ・ここまではできた、あとは先輩に相談しよう

 ■マイナスの意味づけ
 ・このままではダメだ、結果をださねば
 ・自分には能力がないのでは

●結果
 ■プラスの意味づけ
 ・成果をこころから喜ぶ
 ・結果を真っ正面から見る
 ・次にいかす

 ■マイナスの意味づけ
 ・終わってほっとする
 ・落胆する、仕方ないと思う
 ・評価を怖がり、真っ正面から見ようとしない

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 印象的だったのは、プラスの意味づけに「学べることはたくさんある」とか「少しでも前に進んでいると感じる」や「このようにやっていけばなんとかなる」なんかが入っていたことである。

 要するに「先が見える」とよい、ということだろうか。正統的周辺参加論的に考えると、「周辺的位置にいる人間が、中心的活動へ移行する際に、そのプロセスが見通しよく見えること」ということになるかもしれない。

 この「見通しの良さ」がポジティブに認識されればOK,ネガティブなら逃避を考えてしまう。「見通しの悪いトラジェクトリー」につきあうほど、「夢見る若者」じゃいられない。
 つくづく、若者の行動を左右しているのは「今やっていることの意味づけ」である、と思う。

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 それにしても、「上司」のところは大変だなぁ、と思う。

「部下が疑問や違和感を率直にぶつけてくることをよしとする上司」「報告・連絡・相談を待つ上司」

 という「役割演技」は骨が折れるな、と思う。

 若者は「上司とつきあうことはストレスである」と感じるかもしれないが、想像するに「上司であることも、ストレスである」と想像する。大学は「シャバ」の世界とは違うので、ちょっとこのあたりは想像でしかないのだろうけれど。