研究と実践のあいだで

 Human Resource Development Quaterly誌に掲載されていた論文「Closing the gap between research and practice in HRD」を、通勤電車の中で読んだ。

「実践と研究の溝 - デスバレーのような深淵 - をどのように埋めるか」という話は、初等・中等教育研究では、これまでにも、飽きるほど語られているテーマである。
 これに関しては、毎年、日本中どこかの学会で、シンポジウムが開催されているくらいだ(毎年語られているくらいだから、解決できていない)。

 この傾向は、企業研究でもやはり同じなんだなぁ、と思いつつ読んだ。

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 いつの時代でも、どの領域でも、研究者は「問題」の焦点をしぼった議論を行う。実践家が扱うような複雑な問題は分割される。彼らの扱う問題は、いつも限定的で、「キレイな問題」だ。

 それに対して実務家は、複雑で矛盾きわまる状況の中で、問題に格闘しなければならない。彼らがエビデンスにもとづいた実践をめざそうなんていう気はない。エビデンスを見つけるため文献を調べるよりは、自分の経験をもとに問題解決を行う。

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 一般にこうした問題に関しては、

「研究者と実践家がお互いのことをもっとよく知りあえば、わかりあえるはずだし、ずっと一緒にやっていけるはずだ」

 といったような、予定調和的な「べき論」「精神論」的回答が、誰かからすぐによせられる。
 あるいは、「やれ、研究者が悪い」「やれ、実践家の怠慢だ」といったような、「悪者探し論」が展開されやすい。

 しかし、僕はこうした議論には否定的だ。誤解を避けるために申し添えるが、僕は「研究に基づく実践や実践的なインサイトを含む研究が増えればよい」と心の底から願っている人間の一人である。

 しかし、そうした実践や研究が、研究者と実践家の努力や精神論だけで実現できるとは思わない方がいい、と言いたい。

 研究や実践は、それぞれ対処しなければならない問題の性質、目的、方法論が全く異なっている。それらを十把一絡げにして、「精神論ですべて解決!」にしてしまうのは、議論の緻密さに欠ける。それには、より「戦略的な対応策」を考えることが必要なのだ。

 それならば何が必要か?これには複数の回答がありうるので、それをすべてここであげることはできない。

 しかし、たとえばこんなこともありえるだろう。

 最新の研究知見や実践の最新事例を交換する場、研究者と実践家のネットワーキングが行われる場、そうした第三者的な「パブリックでプロフェッショナルな場」をつくりだすことが、先ほどの問題のひとつの解決になるかな、と思う。

 ただでさえ、複雑な問題に日中追われている実務家に、最新の文献を追え、努力せよといっても、それはどだい無理な話である。また、何をやるにしても「学術研究」としてクオリティを担保しなければならない研究者に、複雑な問題をひっかぶれ、と言われても、彼は面食らう。つまり、一人で二役こなせと言われてもなかなか難しいのが現状だ。

 やはり、相互の独立性を認めたうえで、Win-Winの関係を維持することが重要だろう。お互いに「かかわること」で、自分の研究や実践をブラッシュアップできるかたちがよい。そのような人を見つけることのできる「場」をつくることが、このアポリアのひとつの回答になるだろう、と思われる。

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 いずれにしても難しい話であることにはかわりはない。しかし、何らかのかたちで、僕は、この問題にそろそろ「第一の答え」を出すべき時にきているように最近思う。僕には何となく、そういう「場」の輪郭が最近見え始めてきている。

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追伸.
 先日、タク、カミサン、僕で河原を散歩した。

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 最近の東京の気温は20度後半。かといって暑すぎず、さわやかな風がふいている。視界の開ける河原は、清々しい。

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追伸2.
 GW前後のスケジュールの入り方がすごい。ここ数日、昼食すらまともにとれない状況である。結局、一週間休む分、スケジュールが「前後にしわ寄せしている」だけのような気もする。