オンライン学習コミュニティをどのように活発にするか?

 オンラインの学習者コミュニティを、どのように活発にすればいいのか・・・

 仕事柄よく問われる質問である。

 具体的にいうと、遠隔地にいる匿名の人々が、いかに、同じテーマのもとで、話し合い、学習をするきっかけをつかむか・・・そういう場を、どのようにしてつくるか、ということである。

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 これにはいくつもの処方箋が思いつく。

 互酬性、信頼性、ネットワークの緊密性、相互貢献性、Driving question・・・パッと考えただけでも、セオリー的には、いくつか浮かぶ。また、これまでいくつものオンライン学習コミュニティを運営してきた僕の経験によるものも、いくつか脳裏をかすめる。

 しかし、ここでは、この詳細については、長くなるので触れない。以下、短く紹介できる、かつ、一番確かなことだけを紹介する。

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 思うに、オンラインコミュニティをつくりたい、と願う人は、下記の2つの神話に陥らないようにしたほうがいい。

1.「何でもいいから」神話
2.「不思議をもちよる」神話

 1の「何でもいいから神話」というのは、「何でもいいから話し合うことのできる電子掲示板をもうければ、ユーザーはおのずと話し合うに違いない」という神話である。

 僕の経験からいうとこれは「神話」だ。そんなことは、オンライン学習コミュニティの場合は、非常に難しい。

 人によっては、「自由な場だから話し合えるはずだ」と考える人もいるが、「自由な場」というのは本質的に不自由で苦しいものなのである(これを話すと哲学的話題になるので、ここでとめる)。

 話し合いが起こるためには、ある意味の不自由さが必要だ。話すべき内容がまずあり、話すべき必然性がある必要がある。

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 2の「不思議を持ち寄る神話」というのは、1からスピンアウトしたものである。

 要するに、「身近にある不思議なことを話し合う場がネットワーク上にあれば、ユーザーはおのずと話し合うに違いない」という神話である。一般に、オンライン学習コミュニティや交流学習の話は、理科、科学分野で実施されやすいがゆえに、この神話が生まれる。

 話題は「不思議なこと」である。「何でもいいから神話」よりは話題を限定している分、うまくいくような気がするが、どうして、なかなかうまくいかない。

「なんで太陽は黄色いの?」とか「空はなんで青いの?」といったような、ホントウに難問が持ち寄られ、誰も答えないか、あるいは、誰かが頑張って答えたとしても、生徒は「ふーん」で終わってしまう場合がほとんどだ。肩すかしをくらう。

「不思議なことを持ち寄れ」というけれど、なぜ、他人の不思議なことに赤の他人の自分が答えなければならないのか、そのあたりに、うまくいかない原因がある。顔がみえない不特定多数の集まるオンライン学習コミュニティの場合は、そのあたりが非常に難しい。

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 多くの人々が、この神話に陥っているがゆえに、オンラインコミュニティを立ち上げることが難しくなっているように感じる。

 この2つの神話を回避するだけで、ずいぶんと、楽になるはずなのだけれども。