壊れたテープレコーダ : プロフェッショナル 北山安夫氏

 昨日のNHK番組「プロフェッショナル」は、庭師の北山安夫氏だった。

 北山氏は、高台寺など京都の名だたる名園をつくってきた。無駄をそぎ落とした簡素な中に、ありのままの自然の石を組み合わせる。その手法が、拝観者を魅了する、という。

 僕は庭のことは「激シロウト」なので全くわからないけれど、彼が番組前半で漏らしたいくつかの言葉が、心に響いた。弟子12名を厳しく指導する場面で、彼がふと漏らした言葉。

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 自分は壊れたテープレコーダ
 10回で分からない子には11回、
 11回で分からない子には12回言わなければならない

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 昨日のビデオから判断するに、おそらく庭師のワザの習得は、徒弟制を背景にした「非段階的学習」であると思われる。

 一般に、非段階的学習というと、師匠のワザを見て模倣し、型を習得することからはじまると言われている。いつか自分の型を生み出すためには、まず「見て、マネる」ことが必要だ。

 しかし、そのあいだ、師匠も指を加えて見ていていいわけではない。

 やはり言わなければならないことは、言わなければならない。何度であっても、厳しく言わなければならない。たとえ、「壊れたテープレコーダ」のように振る舞わざるをえないとしても、である。

 しかし、徒弟制を背景にした学習は、「声なき学習」であってよい、と思われているのではないだろうか。

 人は言わなければわからない。
 言ってもわかるとは限らない。

 学習は、教えるものにとっても、かくも厳しいものである。